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左近の桜、右近の橘。  作者: みんくん
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第19話

電車に乗って先輩の家の最寄りで降りて少し歩く。

先輩の雰囲気はいつもと違ってどこか暗く、元気がないように思えた。


会話らしい会話もなく、先輩の家に着く。


それは見上げるのには首が痛くなるような高層マンションであり、ひと部屋相当な値段がしそうだ。


「左枝、こっち」


最上階に近いレベルの上層へと高級感のあるエレベーターで上がって行き、先輩の部屋へとつく。

鍵を開けて電気をつけるととても高そうな広い部屋が広がっていた。


部屋に入りきらなくなったのか廊下にもダンボールが積まれている。

「先輩、これって…?」

「あぁ、見本誌とかだよ、散らかっててごめんよ」


廊下の奥にある部屋へと案内された。

掃除の行き届いた綺麗な部屋で意外にも女の子っぽい家具や小物が多い。


「適当に座っておくれ、今お茶を出すよ」

「あ、ありがとうございます」


柔らかそうなソファーに座り、部屋中を見回す。

「あ、あまりジロジロと見ないでくれ…恥ずかしいじゃないか」

「あ、ごめんなさい!、私ったら…」


ハハハと笑う先輩、でもいつもよりも元気はないようだった。


「えっと…溜めても仕方ないし言うけど僕が女の子を好きになったのは中学校の一年生の時だったよ」

「中一…」


【右葉先輩視点】


そう、僕が女の子を好きになったのは中学一年生の頃だった。

その頃は色恋何て全く興味がなく、ただただ本を読むのが大好きな子供だった。

毎日本を読んで書いて、それでもってまた読む。その繰り返しだったよ…


今にして思えば変わった子供だったね…先生もさぞ困ったことだと思うよ…。


毎日の様に通っていた図書室は本をあまり読まない生徒からしたらつまらなかったのだろう。ほとんど私しか利用していなかった。


いつも一人で暗い図書室でペンを走らせていたのを今でもよく覚えている。

当時は人の少ない、声の聞こえない図書室こそが私の天国だった。


毎日通い、本を読んで小説を書いて…こんな日がずっと続くんだと思っていた。


でもそんな日が終わるのはその数日後のことだったよ。


僕が図書室に入るといつもと違って人の気配がした。

歩いて行くと本棚に寄りかかり、本を読んでる人がいた。


「あの…」


か細い声で呼びかけると彼女はビクッと肩を跳ね上げる。


「びっくりした…えっと…えっと…」

「私は立花右葉…あなたは?」

「私は本荘楓…立花さんも本、好きなの?」

「…」コクリ


こくりと頷く私を見て彼女は目を輝かせていた。

これが私と彼女のでありであり、私の人生の歯車が狂った瞬間でもあった。


それからというもの、お互いに色々な事を話した。

好きな本の話、嫌いな本の話、それから私の出版が決まっている話。

彼女は喜んでくれた。それこそ自分のことのように。


それが嬉しくて嬉しくて仕方が無かった。


多分この時からなのだろう、彼女のことが気になりだしたのは。

だがまだ好きだという感情を気づくことはない


それはもっともっと…後なのだから。

読んでくださりありがとうございました。

次話もどうぞ、よろしくお願い致します。

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