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裏世界はゲームで出来ていた  作者: 神山 リョウイ
6/12

ゲーム開始

時計に入ると大きな広場みたいな所に出てきた。そこには武器と赤い笛。そして三人の泥人間がいた。

「まさか……」

広樹は仲間が泥人間だなんて思いもしなかった。


「私たち泥人間はこの世界を救おうとするあなた方勇者のために働きます。命に代えてもあなたを守ります」

三人は声を揃えてそう言うと、広樹の後ろへ付いた。青い剣と盾を持ち赤い笛を首からぶら下げて、大きな扉を開けようとする。

固く重く一人じゃ全く開かない。


仲間と四人で力を合わせやっとのことで扉を開くことができた。

先は暗く、明かりは横にある炎だけだった。その横に木の枝が何本か落ちている。広樹はそれを三本拾い、一人の泥人間に一つの炎の灯りを持たせ前を歩かせる。


四人の足音がする。


その廊下は長くまっすぐ続いている。

歩いても歩いても次への扉がない。

広樹は休憩を取ることにした。頭を抱えて考える。


少しして案が思いついたのか広樹は立ち上がり仲間に声をかけた。

「全員手をつないで横に並ぼう」

ここの廊下は四人並ぶとちょうど道が塞がるくらいの幅だった。みんなは手をつなぎ端にいる泥人間は壁を触りながら歩く。



しばらく歩いていると右にいた泥人間が何かスイッチのようなものを見つけた。しかし、左にいた泥人間は一つのドアを見つけたらしい。スイッチを押すかドアを開けるか、広樹は迷ったが、二つ同時にすることにした。

三人がかりでドアを開け、一人がスイッチを押す。広樹の掛け声で一斉にみんなが動く。



スイッチが押される。

と、同時に扉が開く。



上から何やら大きな塊が落ちてくる。



たくさんの人間の生首だった。

その顔はニュースで見た事のある行方不明者がほとんどだった。


広樹は驚き急いで扉の中へ入る。それに続いて泥人間も扉へ入る。部屋は真っ暗で何も見えやしない。

電気を探し、電気のスイッチであろうものを押すと灯りがつきみんなの顔が見える。狭い狭い部屋だった。



三人の泥人間がちゃんと居るか確認するために、広樹は後ろを振り返った。


一人の泥人間の頭にはさっきの生首が乗っていた。

泥人間が溶けかかり、人の首が頭にくっついているのだ。顔の上に顔がある。これこそが本当の怪物のようだった。


恐る恐る広樹は泥人間の上に乗った顔を剣で落とし、部屋の中を見回した。



「……したな。お……したな」



何やら声がする。急いできょろきょろと周りを見て耳をすませる。



「落としたな」



はっきりそう聞こえた。落としたといえばさっきの生首しかない。


白目を向いた顔が口だけを動かしそう言っていた。早く抜け出さないと、ここは少しばかり危険な香りがする。



「先を急ごう」

広樹はそれだけをいい部屋の出口を探した。だが、見つからない。さっきの入ってきた扉しか無い。


「落としたな……。落としたな……」

この狭い部屋にその声だけが響く。広樹はこの部屋にあるタンスや引き出し、全てを開けたが、何も出てこない。

ただ一つ鍵のかかった机の引き出しがある。鍵を探すため再び部屋の中を調べる。調べている時も泥人間に指示を出してる時も生首の口は止まらない。



広樹は生首の口元を見ると、その中には一つの鍵が入っていた。

ゆっくりとその顔に近づき、鍵を取ろうとする。


指を入れた瞬間。生首は広樹の指を強く噛んだ。離さないようにと力を加えている。


広樹の指には鍵が引っかかり、あとは口から手を抜くだけなのに抜くと指がちぎれそうなのだ。

痛いなんてものではない。

広樹の指からは血が溢れる。

歯は歯切れの悪い包丁の様だった。力を強められる分だけ深い切り傷のように歯が広樹の指へ入っていく。


もう限界だとそう感じて指をなくす覚悟をし目を閉じた時。

噛まれる力は弱まっていった。泥人間が生首の目を持っていた木の棒で突き刺したのだ。

目から木が出ている。なんとも気持ち悪い。


彼は口から指を抜くと鍵を持ち直し、机の引き出しを開けた。



下を覗くと、そこは少しばかり明るく、何もいない。

広樹は二人組で行こうと提案し、まずは泥人間を二人引き出しの中へ入れた。その後に広樹ともう一人が引き出しの中へ入る。



四人はこの時自分たちの身に何が起こっていたのか気づかなかった。


どんどんと前に進むと次に見たのは巨大な雲のようなものだった。泥人間がそれを触ってみると、それは埃だという事がわかった。

そして埃の中にはハエのような虫がいた。それは広樹たちとなんら変わらないくらい大きいハエだった。

ハエが広樹たちに気づくと徐々に距離を縮めてくる。



四人はゆっくりゆっくり下がっていく。

しかし、次第に怖くなり一斉に背を向けて走り出した。

ハエはもちろん追いかけてくる。


全力で走っていると広樹は何かに足を引っ掛け、転んでしまった。ふと顔を上げるとハエが広樹を襲おうとする。

その間にすぐさま泥人間が入り、ハエをやっつけると共に姿を消した。仲間が一人減ったのだ。



広樹は立ち上がり、姿を消した泥人間にお礼を言うとさっき転んだところをよく見た。


そこには大きな広樹よりも背が高い鉛筆が落ちてある。そして、その横には広樹くらいの消しゴムが置いてある。



ここで広樹はあることに気がつく。

周りがデカくなったんじゃなく自分たちが縮んだということ。そして、ここはただの机の引き出しだということ。


「とりあえず前へ進もう」

広樹が一つため息をつき二人の泥人間と一緒に前へと進んでいった。


奥へと入るにつれ視界は暗くなって行く。


広樹たちは端に縦一列に並び横の壁らしきものを頼りに奥へと進んだ。広樹は泥人間たちの間に入っている。

数分歩き続けるともう辺りは真っ暗で何も見えやしない。見えないことに構ってられず、どんどんと進んで行く。



真っ暗になってから数分。


なにやら音がする。と思えば視界が歪み、崖から落ちるように下に落ちて行った。


下には滝のように溢れ出る水があり、三人は水の中に入っていった。もちろん二人の泥人間は溶けて消えた。


広樹は水に流されるままになっていた。少しすると流れが優しいところに着いた。

そこで小さなボートを見つけた。


広樹はすかさずそれに乗り、どの方向へ進んでいいのかもわからず、適当に漕ぎ始めた。

一人で漕いでいるのも少し寂しく、一人の仲間を呼ぶことにした。



笛を吹くと広樹の後ろにすっと現れる。

その時、何か包帯のようなものを持っていた。広樹の血だらけの指に包帯を巻いたのだ。



交互にボートを漕ぎ、小さな森を見つけた。建物の中のはずなのに水があり、森がある。


ボートを止め森へと足を入れる。

蝉の声がする。蜂が飛び回る音がする。


そして何より森に入ろうとする入り口を塞ぐ蛇の顔に人間の身体をした。



蛇人間がいる。






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