↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/21

第15話

 いきなりこの家から好きな物を一つ選べ、と言われても流石にすぐには選べない。そもそも何があるのかもよく分かっていないし、ざっと見たところ、雑多に置かれた研究道具のようなものは見ただけでは使い方がわからないし、有用なものかどうかの判別をすることは難しい。


 彼女はこれを課題だと言った。恐らく正解を用意しているはずだろう。と考えたとき、昨日見た宝石箱を思い出した。あれならどうだろうか?中身の金貨は別の物としてカウントするから本体だけだ、と言われたとしても、あれは明らかに魔道具の類。俺が知っていて価値のありそうなものなんてあれくらいしかない気が・・・。


 黙って部屋の中を観察しながら考えていると、気になるものが目に入ってきた。

 この簡素な家の中には少し似合わないと思われる、結構豪華な作りをした額縁のようなものが壁にかけられていて、その中央には10㎝ほどの鋭そうな牙が飾られている。何かの魔物の牙だろうか?

 俺が興味深そうにそれを見ていることに気が付いたセレナ教授はこちらに、しまった!と書かれた顔を向けて額に汗を滲ませている。

 普段は尊大な態度をしていて、何か失敗したところで、大抵のことはまあいいやと済ませそうなセレナ教授だ。それがこうして動揺している様を見るのは少し面白くて、意地悪をしてみたくなってしまった。


「セレナ教授、あそこにかかっている牙のようなものはなんですか?」


 ビクッとしてこっちを見てから、明後日の方向に顔を背けたセレナ教授は、俺の質問に対して全く関心がなさそうな雰囲気を作りながら答えてくれた。


「あー、えーっと、あ、あれ?いやよく分らんな。なんだっけアレ?私が覚えてないということは恐らく大したものではない。そうだ、クローゼットの中に色々と魔道具があったな。何があるのか分からないまま選べと言われても困るだろうから今すぐいくつか出して紹介してやろう。いや、あれだ、ああそうだ。ちょっと大きめの物もあるから一緒に取り出すのを手伝ってくれないか。腐りやすい物もあった気がするな。急いでこっちに来てくれ」


 セレナ教授はかなり早口でそう言いながら、これもまたかなり早足で昨日の例の宝石箱が入っていたクローゼットの前へ行ってしまった。ていうか腐りやすい物ってなんだよ。クローゼットの中にそんなの入れてるわけないだろ。


 たぶん、あの牙はとんでもなく貴重な物だろう。そしてセレナ教授は絶対にあれを手放したくないと見える。別にこの中から好きな物を選べと言われただけで、譲るとは一言も言ってなかったはずだが、たぶん選んだものを譲るつもりでいたんだろう。余程の事がない限り動揺しなさそうなセレナ教授がここまで狼狽している姿を目にすると、俄然あれが欲しくなってきた。


「よし、決めました」


「い、いやいや、まだ何も紹介していないぞ。早くこっちに来い。そうだ!あの宝石箱をやろう。今なら中身の金貨も半分つけてやってもいい。今だけだ、あの宝石箱を手に入れるなら今しかないぞ」


 本当にあれを手放したくないらしい。他の物で俺の気を惹こうと必死になっている姿が可愛くて、もう少しこの様子を見たい気持ちは大いにあるが、あれの正体を知りたい気持ちもだんだんと大きくなってきてセレナ教授に課題の答えを伝えた。


「あの壁にかけられている牙をがいいです。宝石箱もちょっと気になりましたけどね」


 俺の言葉を聞いたセレナ教授は世界の絶望を集約させたような顔をしていて、言ってしまってから可哀想なことをしたかな、とちょっと反省したが、気になるものは仕方ない。


「それで、あれは何なんです?何の牙なんですか?」


 絶望の淵から少し帰ってきたセレナ教授が、少し言いよどんでいて、言うか言うまいか悩んでいるらしい。そんなにとてつもない物なのだろうか。確かに集中して見てみると少し魔力の気配がしないこともない。


「あれは・・・。ちょっとこっちに来て耳を貸せ・・・!」


 そう言うセレナ教授の元に近づき、身長差があるため横で屈んでから耳を教授の顔に寄せる。




「あれは、エンシェントドラゴンの牙だ・・・」




 えええええ!!!?


 とはならない。そもそもエンシェントドラゴンってなんだ。名前からして強そうではあるが、貴重な魔物なのか。全くよくわからん。アルート王国にはドラゴンを崇める宗教があると聞いているが、そのお守りの類だろうか?


「凄いんですか?」


「馬鹿者!君はアルート王国民のくせにエンシェントドラゴンを知らんのか!・・・そういえばバンデイム家は昔から無神論を唱えていたな。そのせいで知らんのか・・・」


 その通りである。うちの家は特に何の神を信じるわけでもなく、自分の道は自分の力で道を切り拓くべし、という教えを家訓にしている。初代様からの家訓らしい。


「よし、簡単に説明してやろう。このアルート王国では8割ほどの国民が龍神教を崇めている。そしてその龍神教の最も崇め奉っている存在がエンシェントドラゴンなのだ。つまりあの牙は、私が信じている神様の体の一部ということになる」


 なるほどなるほど。


「それでその神様の体の一部がなぜここに?」


「ひと昔前に世界に破滅をもたらそうとした異世界人の話はしただろう?その異世界人の所業を止めたのもまた別の異世界人でな。その世界の破滅を阻止した異世界人とその仲間にそれぞれエンシェントドラゴンは自らの牙をお守りとして与えた。という逸話が残っている。そしてそれは事実だ」


 ってことはセレナ教授って


「察しの通り、私は以前異世界人と旅をして、世界の破滅を阻止した仲間の一人だったのだ」


 思っていた以上に凄い人だなこの人!だから結局何歳なんだよ・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。