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呪いの人形(ドール)りんねちゃん 呪いの人形(ドール)をおもちか・・・・・・お出迎えしたらラブコメが始まった!?  作者: 涼風悠


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りんねちゃんとファミレス3

 歩は謎に真っ黒なオリジナルドリンクを両手で持って、ニッコニコの笑顔で自分の席へと戻ってきたのだが、すぐに立ったままスンとした表情を浮かべた。


「あゆ……遅かったな」


 なぜか歩が座っていた席に腰を下ろし、頬杖をつきながらドヤ顔で声をかけてきた陽子に、歩はムッとなる。


 そう、陽子は歩がオリジナルドリンクの配合に夢中になっている間に、さっさと自分のドリンクを注いで席へと戻っていたのである。


「ようちゃ…ん…そこ…わた…しの…席…だ…よ」


 その歩の恨めしそうな一言に、無表情でコーラを飲んでいた緋影は、(オレの隣の席……空いてるんだけどな)と心のなかで思うものの、口には出さない。


 もしも、幼馴染の歩から隣に座りたくないなどと言われてしまったら、流石の緋影もメンタルがブレイクしてしまう恐れがあったからだ。


「ほら、席なら空いてるだろ……早く座ったらどうだ? あゆ?」


 ニヤリと意味深な笑みを浮かべた陽子にそう言われて、歩は緋影の隣の空席をチラリと見ると、一瞬で顔が真っ赤になり俯いた。


 この幼馴染の歩の行動は、単純に気恥ずかしさからくる可愛らしい仕草なのだが、緋影はやっぱり自分の隣は嫌なのだろうかと思いショックを受けていた。


「ううッ……ううぅッ…ううぅぅッッ~」


 俯いてモジモジと唸る歩の様子を見ていた天子は、さすがに気の毒だと思い、勇気を振り絞ることにした。


「……し、仕方ありません……仲の良いお二人を引き離すわけにはいきませんもの……わたくしが……席を移動しますね」


 この天子の鶴の一声に――またしても見事に自分の評価を上げつつ、緋影の真横の席を華麗に確保するという彼女の悪魔的手腕に、りんねちゃんは驚愕の無表情を浮かべていた。


 りんねちゃんの脳内イメージでは、天子があくどい笑みを浮かべ、「計画通り」と言っていた。


 案の定、歩と陽子は「さすが聖女様!」と感心しており、相も変わらず無表情な緋影も、心の中では安堵していた。


(ひひひ、緋影様の隣に座るなど……おおおお、お、恐れ多いですが……こ、これは仕方なく……そう、仕方なく……仕方ないことなのです!)


 清楚な天使の笑みを浮かべ余裕そうな表情を浮かべていた天子だが、心のなかでは絶叫していた。


 天子は、推しである緋影の方をチラリと見て、心臓バクバク、頬を赤く染めながらも勇気を出して立ち上がると席を移動し始めた。


 こっちに来る天子に対して、りんねちゃんはお前の席ねぇーからと言わんばかりにヤンデレ人形ドールよろしくといつの間にか緋影の隣の席のど真ん中に鎮座していた。


 天子は、そんなりんねちゃんに気がつき席の前で立ち止まるとお互いの視線がバッチリと合う。


 威嚇しているりんねちゃんに対して、恐れることなく天子は微笑んで見せた。


 そして、呪いのオーラを放って威圧してくる呪いの人形ドールを、ヒョイッと両手で掴み持ち上げ抱っこする天子に、『なん……だと!?』となるりんねちゃんなのである。


 『放せ』とジタバタと気持ちでは暴れるりんねちゃんなのだが、彼女は人形ドールなので、もちろん身体は微動だにしていない。


「で、では、お隣……し、失礼しますね」


 怒り狂う呪いの人形ドールに気がつくこともなく、天子は初々しくそう言って、清楚よろしくと恥じらいながら緋影の隣の席に腰を下ろした。


 そして、気持ちでは必死にジタバタと抵抗を試みている呪いの人形ドールを、なんと自分のお膝の上にちょこんと座らせた天子は、気恥ずかしさから縮こまっていた。


 そんな乙女な仕草を見せる天子と、愛らしく(緋影から見て)彼女のお膝の上に鎮座する自分のドールに、無表情ながらも見惚れてしまう緋影なのであった。


 無理やり天子のお膝に座らされたりんねちゃんは、勿論、絶叫していた。(無音)


 怒り狂った無表情を浮かべ、なんでお前の膝の上に座らないといけないんだと全身で怒りを示していた。


 天子に両手でホールドされて動けないりんねちゃんは、『許さない』『早く解放しろ』とばかりに禍々しい呪いのオーラを放って暴れる。


 しかし、同じように天子から放たれる神々しい聖女様オーラによって見る見るとりんねちゃんの呪いのオーラが中和されていく。


 その様子を、いつの間にか席に座っていた歩と、そんな彼女に奥の席へと追いやられた陽子が感心した瞳で見つめていた。


「やっぱ……お前って聖女様なんだな」

「そう…だ…ね……さす…が…天ノ川さ…ん…だ…ね」


 感嘆の声を上げている二人に、きょとんと首を傾げる天子と、コーラを一口飲んで『何が?』と同じく首を傾げる緋影なのであった。


 必死の抵抗も虚しく今だに憎き天ノアマノガワ 天子テンコのお膝の上のりんねちゃん。


 これは、自分ではどうすることもできないと悟り、いつの間にか旦那である(旦那ではない)緋影の方を見てSOSを発信する。


 そんな、りんねちゃんの救援要請が届いたのか届いていないのか緋影がりんねちゃんの方を見た。


 バッチリと緋影と視線が合ったりんねちゃんは、必死に助けてと無表情で訴える。


 そんなりんねちゃんを見て、何かを察したのか優しい無表情を浮かべた緋影に対して、ぱぁーっと心が通じたとばかりに明るく嬉しそうな無表情を浮かべるりんねちゃん。

 

「よかったな……りんねちゃん、天ノ川さんに可愛がってもらえて」


 しかし、やはり普段通りの超絶鈍感で何も通じていない緋影に対して、すぐに、『よくない!!!』と心のなかでツッコムりんねちゃんは衝撃の無表情を浮かべていた。


 対して、天子はというと推しの緋影の、この言葉にテンションバク上がりなのであった。


(りんねちゃんさんは緋影様の娘……つまり、緋影様の今のお言葉はわたくしを信頼してくれたということでは!? こ、こんなに嬉しいことはありません!!)


 これは更に可愛がってあげねばとなった天子は、膝の上のりんねちゃんの頭を優しく撫で始める。


 人形ドールであるはずなのにりんねちゃんは、天子に頭を撫でられた瞬間、鳥肌が立つほどの悪寒が全身に走った。(勿論、鳥肌など立つはずもない)


 『触るな』『撫でるな』と怒り狂う呪いの人形ドールだが、天然で鈍感な聖女様にその怒りが通じるはずもなかった。


 もちろん、旦那である(旦那ではない)緋影も微笑ましく見守っており、止める気配は一切なく頼りにならない。


 必死で抵抗を試みるりんねちゃんだが、天子には全く通じず、頭を撫で続けられる。


 その様子をじーっと眺めていた歩が、「天ノ川さ…ん…ほん…と…凄…い…ね」と言いながら自分で調合した謎のオリジナルドリンクを一口飲むとすぐにブハッと吹き出した。


 どうやらかなり不味かったようで、咳き込む歩に対して、陽子はポケットティッシュを取り出すと、やれやれと優しく彼女に差し出すのであった。






 呪いの人形ドールは、数分間は必死で抵抗していたが、もはや抵抗は無意味と悟ったのか、虚無顔の無表情を浮かべて天子のお膝の上でおとなしくしていた。


 テンションはダダ下がりであり、もう帰りたいとなっていたりんねちゃんだった。


 しかし、変な配膳ロボットがこちらに向かって料理を運んできたことを気配で察知し、りんねちゃんのテンションがバク上がる。


 どうやら配膳ロボットは呪いの人形ドールに対して恐怖心を感じることはないようで、バグも起こさず普通に自分たちの席の前まで来て止まった。


 『ロボットだ!!』と実物の配膳ロボを見て心踊るりんねちゃんは、配膳ロボットの、『お料理取ってほしいワン』という機械音な一言に更に大興奮。


 人形ドールであるはずのりんねちゃんの無表情がどこかキラキラと嬉しそうに――見えなくもないのである。


 もっと間近で見たいと天子のお膝の上から、いつの間にか配膳ロボットを凝視していたりんねちゃんなのだが、ヒョイッと天子からお預けとばかりに抱き上げられた。


 何をする!?と怒るりんねちゃんだが、視線は配膳ロボットに向けられていた。


「ひか…かたさん……りんねちゃんさんを汚れないように奥の隅に置いたほうがよろしいですよね?」


 その天子の言葉に恨めしそうな無表情を浮かべるりんねちゃんは、『放せ』『降ろせ』と暴れる。(静止)


「あ……あぁ、そうだな……じゃあ、りんねちゃんはこっちでおとなしくしていような」


 配膳ロボットを『もっと間近で見たい』と暴れる(静止)りんねちゃんなのだが、抵抗も虚しく天子から緋影の手に渡り一番奥の席へと移動させられた。


 その時の天子の微笑みを見て、りんねちゃんは確信した。


 これは意地悪されているのだと――りんねちゃんのなかの脳内天子が、「残念……呪いの人形ドールが配膳ロボを見るなんて百年早いわ」と悪役令嬢の如くそう言っていた。


 天ノアマノガワ 天子テンコ――なんて意地悪なヤツなんだと思うりんねちゃん、ちょこんと一番奥の席へと鎮座させられ、怒りと不満を示す無表情を浮かべていた。


 更には、りんねちゃんが一番奥の席に座らされるということは、緋影と天子の距離が近づくということでもあった。


 そのことにハッと気がつき、刹那で緋影たちの方に顔を向けたりんねちゃんは衝撃の光景を目の当たりにした。


 緋影と天子は、今まさにお互いの肩が触れて、気恥ずかしそうに、「申し訳ありません」と天子は言葉を発し、甘酸っぱい青春の雰囲気を醸し出していた。


 『こいつ……やはり悪女だ!?』となるりんねちゃんは、ヤンデレ人形ドールと化していた。


 またもや、りんねちゃんの脳内天子が、「残念……お前の旦那(旦那ではない)はもう、わたくしの虜よ」と高笑いしながら言っており、ぐぬぬぬぬとなるりんねちゃん。


 こちらこそとなっている無表情の緋影に対して、りんねちゃんは、キッと無表情人形ドールフェイスを浮かべ、『浮気は許さない!』『そんな悪女に騙されるな!』と睨みを利かせる。


 デレデレ鼻の下を伸ばしている無表情の旦那(旦那ではない)に怒りを覚えるも、今は配膳ロボットを見るのが先だとなるりんねちゃんは、ニヤリと勝利の笑みを浮かべた。(勿論、無表情)


 そう、ホールドされていないなら、移動は可能、呪いの人形ドールに意地悪しようなど千年早いとなるりんねちゃん。


 刹那、『天ノ川天子敗れたり!!』とばかりに、いつの間にかりんねちゃんが、テーブルの端に移動し、ちょこんと腰を掛け座っていた。


 一瞬でテーブルの端にいつの間にか移動していた呪いの人形ドールにすぐに気がついた歩と陽子は、お互い抱き合い恐怖で震える。


 そして、マジマジと眼の前の配膳ロボットを、キラキラのオッドアイで無表情に見つめているりんねちゃんは、また喋らないかなとワクワクしていた。


「あれ? りんねちゃんさんがいつの間にかテーブルの上に……?」


 料理を取ろうとした天子が、テーブルの上のりんねちゃんに気がつくと首を傾げてそう言った。


 今頃、自らの失態に気がついたかと勝利の笑み(無表情)を浮かべながら、配膳ロボットをマジマジと観察するりんねちゃんに緋影も気がつく。


「あれ……いつの間にかそんなところに置いてしまったのか……」


 そんな超絶鈍感な緋影の抑揚のない声でのこの発言に対して、いやいや、そんなわけないとなる陽子と歩なのである。


「あら、そうなのですか? わたくし……てっきり、りんねちゃんさんがいつの間にか自分で移動したのだとばかり……」


 天子の核心めいた一言に、やっと気がついたかとなる陽子と、『しまった!?』となるりんねちゃんなのである。


 配膳ロボの方を見つめたままに、冷や汗ダラダラと流れる(気持ち)ピンチなりんねちゃんは、すべてを察した。


 またもや、りんねちゃんの脳内天子が、「今までのは演技……見事に騙されましたね」と言っていた。


 まさか、鈍感な振りをして油断させ、緋影に自分が呪いの人形ドールであることをバラす作戦だったのかと勘違いして勝手に焦っているりんねちゃん。


 そして、これにはフムと考え込む緋影なのである。


 ついに自分が呪いの人形ドールだと、旦那の(旦那ではない)緋影にバレる瞬間が訪れたかと緊張の面持ちで配膳ロボの方を見つめるドキドキのりんねちゃん。(心臓はないけど)


「そんなわけないと思うけど……」


 いつも通りの鈍感な緋影に、所詮小娘の浅知恵だったかとホッとひと安心なりんねちゃんだが、再び『あれ?』と疑問に思う。


 別に自分が呪いの人形ドールだとバレても問題ないはずなのに、なんでこんなに慌てたのだろうと考えるりんねちゃん。


「でも、もし、そうなら天ノ川さんのところに行きたかったのかもしれないな」


 緋影のその一言に、『それは、絶対にない!』となるりんねちゃんは怒りの無表情を浮かべ、先程の疑問はどこかに吹き飛んでいった。


「ほ、本当ですか!? それは大変光栄なことで……フフ、とても可愛らしい」


 ヒョイッとりんねちゃんは天子に持ち上げられ、ハイテンションな彼女にチュキチュキ大好きと頬ずりされる。


 これには、本気で嫌そうな無表情を浮かべ絶叫(無音)するりんねちゃんなのである。


「わたくしも、りんねちゃんさんのこと大好きですよ」


 そう嬉しそうに言う天子に対して、『私は大嫌いだから!!』と天子を全力で拒絶する呪いの人形ドールりんねちゃん。


(まぁ、りんねちゃんが勝手に動くはずがないけど……天ノ川さん……嬉しそうだし……そういうことにしておくか)


 仲良しさん(緋影から見て)のりんねちゃんと天子を微笑ましい無表情で見守る緋影は自分のスマホを取り出して、すぐにカメラを起動しパシャリと撮影する。


 まさか、旦那の(旦那ではない)緋影からの裏切りとも呼べる行動に絶望の無表情を浮かべるりんねちゃん。


 緋影のスマホの画面には、嬉しそうにりんねちゃんに頬ずりする天子と、本気で嫌がる虚無顔のりんねちゃんが映っていた。


 その画面を見ながら、我ながら良い瞬間が撮れた内心で大満足の緋影なのであった。


 そんなやり取りをしていると『早くお料理取ってほしいワン』と完全に放置されていた配膳ロボットが機械音で怒る。


 その機械音で正気に戻った歩は、慌ててすぐに料理を取り始めようとするも、そのあまりに鈍臭そうな手つきに、あわあわと心配になる陽子なのであった。


 すぐにそれに気がついた天子が、不慣れな歩の手伝いをするためにりんねちゃんを解放した。


 テーブルの上に置かれ、ホッとひと安心したりんねちゃんは、すぐに元いた奥の空いたスペースへと、いつの間にか移動し、おとなしくしていることにした。


 これは敗北じゃない――戦略的撤退といった無表情を浮かべているりんねちゃんなのであった。


 それぞれが注文したコラボ料理がテーブルに運ばれる中、ランダム封入の「みにかわ」なるグッズもきちんと添えられていた。


 それをみんなが「どうぞ」と陽子に渡すと、ちょっと――いや、かなり嬉しそうな陽子なのであった。


 普段はキツめの表情が、嬉しそうにへにょへにょと崩れていた。


 それを見て、(やっぱりあゆみちゃんの親友は良い子なんだな)となった緋影は、ファミレスに来てよかったと思うのであった。

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