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22/22

No,22

「・・・・・・・楽しい人たちだったね・・・・・・」


「・・・・・・それは否定しませんが・・・・・・」



感慨深い雅の呟きに、各務は少々面白くない。


大体、仕事の出張先で出会った日本人と、一度帰国して、再度プライベートで渡ったフランスで再会するとは思わなかった。

あまつさえ、ゾロゾロと集団でパリ観光をする事になろうとは。いつも雅を独占していたい各務としては、全く不満で仕方がなかった。




―――だが―――




「彼らは、貴方の良いご友人になって下さりそうですね」


何十年もの間に培われた【物分かりの良い大人】の仮面は伊達ではない。







雅は社交的な性格だが、それは仕事を円滑に運ぶための、上辺上だけのものでしかない。

学生時代、生来の栗色の髪と白磁の肌の持つ外見の魅力に惹かれ言い寄られた事から、外見でのみ見られる事にうんざりしていた。今も付き合いのある人間など皆無と言ってもいいだろう。

だから、初めてだった。外見に拘らずに、普通に接してもらえたのは。心の鎧を纏わない、素の雅に親しく接してもらえたのは。



一人だけ女性がいたが、何故か彼女には、あまり女性(おんな)を感じる事もなく、まるで同性に接するように自然に振る舞えたと思う。

新婚のせいか、彼女はとても慎ましく、夫君に寄り添う様は本当に微笑ましいほどだった。


・・・・・偶にいるのだ。人妻であるにも関わらず、雅の容姿に惹かれ、あからさまに色眼を使う困った女が。


だが、紫と云う女性は、そんな女たちとは比べる事が申し訳ないほど貞淑で、深水にベタ惚れの様子だった。




―――そして、何より、翠君―――




【緋龍院 翠】となった、その瞬間に立ち会う事になったが、あんなに素直で明るい笑顔を向けられたのは初めてだった。

天然なのかと思えば、妙に老成したような感じも伺え、雅とは趣味が合う事が本当に楽しかった。


【緋龍院】と云う極めて珍しい姓から察するに、あの緋龍院グループの一員なのだろう。だが、そんな事はどうでも良い。



【翠】は翠で、【雅】は雅・・・・・・そんな当たり前の付き合いが出来そうで、今からワクワクする。







イタリアやパリでの事を思い出していたら、横から遠慮のない溜め息が聞こえた。



「・・・・・・・いい加減に、傍にいる私の事も思い出して下さらないと拗ねますよ?」



(フランスで似たような事を呟いていた男がいた事を各務は知らない)




「・・・・・・ごめん、ごめん。・・・・・・・許して?・・・・・愛してるから・・・・・・・」

「・・・・・・ついでのように言わないで下さい・・・・・・・」




文句を言いながらも、雅の唇の誘惑には勝てない。



あの異国で不思議に縁のあった彼らとの交流が、これからも続くであろう事を覚悟しつつ・・・・・各務は眼を閉じた。





※ ※ ※





「・・・・・・素直な子だったね・・・・・・」


「・・・・・・そうですね・・・・・・・」


「・・・・・私が、姉たちへの土産だと言ったら、疑いもしなかったよ。

あのドレスや香水を、自分の為に見ていたと知ったら、翠君は何て思うだろうね・・・?」


「・・・・・案外、あっさり受け入れてくれるかも知れませんよ。見掛けに寄らず、豪胆な処もあるようですから・・・・・」




―――果たして、そうだろうか?―――




彼の、緋龍院さんへのリングを選ぶ振りをして、自分に似合いそうなアクセサリーをこっそり見つめていた事を知られたくはない。






この自分に・・・・・【香月】に出来た、初めての得難い友人なのだ。決して、失いたくない。









そんな、香月の葛藤が手に取るように理解る高見沢は、恋人の身体を膝の上に乗せ優しく髪をすく。







―――何せ、やくざの情婦と云う立場をあっさり受け入れているのだ。並の度量ではない―――







香月には見えないように黒笑(ほほえ)みながら、あの中で唯一の女性だった人間の事を想う。



“普通”ではない事情を抱え、深遠なる闇を纏い、無理をして痛々しい笑みを浮かべる女性。







―――いや・・・・もしかしたら・・・・・・・―――







あの【ヘルマプロディトス】の彫刻の前で佇んでいた時の表情を思い出す。


同じ症例の人間を、ただ一人、診察した事がある。十中八九間違いないだろう。







そんな事を考えている事など微塵も感じさせずに、いきなりのように切り出す。



「ところで香月。私は、翠君が羨ましくなってしまったんですがね。貴方のここにリングを贈っても良いですか?」



そう言って、香月の男にしては細い手をとらえ、左手の薬指に唇を落とす。

ハッとして、途端に【桜木太一郎】の仮面を取り戻す恋人が憎らしい。



「・・・・いつまで待てば、【太一郎】さんは納得して下さるのですか?


・・・・・いい加減、同棲のお許しを頂けませんか・・・・・?」






・・・・・こう言えば、【彼】は必ず、沈黙して、悩んでしまう。








―――そう、そうやって、私の事だけを考えていれば良いんですよ―――




―――いつまでも、その心の中に、他の人間を抱えている事は許さない―――







これから始まるであろう、愉しい人々との交流を想いつつ、高見沢は香月の身体をソファーに押し倒した。









―― おまけ ――




「だから、悪かったって言ってるでしょっ! 

あんたに一言でも言っとけば良かったって。


でもね、あの時、あんなに喜んでる翠に、何をどう言えば良かったって言うのよっ!?


京牙(あんた)の仲の悪い深水(おとうと)が行ってるはずだから、

パリに行くのは諦めろなんて言える訳ないでしょ!!



・・・・・結局、楽しかったみたいなんだから良かったじゃない。

何よ、【深水ン】なんて大笑いだわ♪」




それからも、延々と京牙との話は続いたのだが。最後に。




「そうそう。正式なご結婚、おめでとう。

私の可愛い翠を泣かしたら承知しないからねっ」




ピッ!




言い放って、携帯を切ってやった。


今頃、『誰が、お前の翠だ!アレは俺ンだ!!』と、

あの独占欲の強い男は大騒ぎしているに違いない。





あ~、スーーッとしたっ!




大体、何よ。この深水(あいつ)の持って来た土産物の山は。


蚤の市で買って来たようなアンティークばかりじゃない。


これじゃ、お土産って云うより、仕入れに行ったようなもんじゃない!


・・・・・ま、流石に趣味はいいけど。




唯一、まともなのは、翠の買ってきてくれたLANCELだけね!


ホント、あの子は、あたしの趣味を理解ってるわ♡






ま、あの兄弟の仲も大分、修復出来たみたいだし・・・・

何より、翠と紫さんが、あんなに楽しんで来たみたいだし。




あたしも、そのうち行って来ようっと。







「お~~、シャンゼリゼ~~~ッと♪」






                                                                    FIN

これで終わりかい!?との、皆さまの罵声が聞こえるようでございます(笑)


甘々ラブラブの新婚旅行、お楽しみ頂けましたでしょうか?

18歳以上のお嬢様方は、R18の他の作品もどうぞよろしくお願い致します。

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