26/26
プロローグ
「――――」
落ちて、いたんだ。
深い、底よりも深い何処かに。
視覚も、聴覚も、いまはもう、何も感じなくなっていた。
少し離れたところで、一緒になって落ちていく、誰かの気配だけを感じていた。
……大切なモノがあった気がする。
記憶や五感が徐々に奪われていって、自分のものじゃなくなっていく。
……の!!……がッ!!!!
キン。っと、針で刺されたような痛みが頭に広がる。反射的に身をすくめる。
奪われていく感覚が、あたしの古い記憶を呼び起こしていた。
……ああ。またか。
あの時と同じだ。
あたしは落ちていく。いつまで落ちていくのかも分からない最中。
手元に残った、あの忌々しい、むせ返るような硝煙と、目の前にただただ広がる砂煙の記憶だけを握り締めて――




