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支音は淡々と語った。優は口を開かず、ただ話を聞いている。
全てを語り終え、支音はホッとため息を吐く。そして、優の顔色を窺うように横目で見る。優の表情に変化は無かった。憎しみも悲しみも、ましてや喜びもどんな感情も見られなかった。そんな様子に少し拍子抜けするほどだった。
「ごめん」
優の言葉だった。短くでもはっきりと聞こえた。
「どうして? 謝るのは私の方なのに……」
「あなたのこと、殺そうとした。最低なことをした。今ならそう思える」
深く後悔しているようだった。声がいつもよりも低く沈んでいる。支音はゆっくりと首を横に振る。
「謝る必要なんてないよ。あのときは、罰がきたって思った。罰を受けたら許されるんだって、本当に思った。目が覚めた時、許されなかったって思った」
「私の未練に付き合ってくれるのも、それが理由?」
「半分はそう。でも、半分は違う。私は、私が死ねば全てうまくいくって思った——」
支音は一言一言を噛み締めるようにして言う。
「——でも、違った。未練を聞いたとき、私1人が死んでもどうにもならない。全員に復讐を果たせたとしても、どうにもならない。だから、支援者として動かないとって」
「それは、それは、高尚なことだね」
優は呆れたような乱雑な物言いをする。
「私は、真面目に!」
「だって、何も変わってないじゃん」
「だから! 変わろうとしてるの!」
勇気を出した覚悟を踏み躙られた。そう思ってしまったら、感情を抑えることはできなかった。優は心底つまらなそうに首を掻く。
「変わってないよ。美玲の言うことを聞く昔と、学校の決められたルールを守る今と」
優の言葉に不意をつかれた。口を開けたまま、うまく言葉が出ない。一度しっかりと口を閉じ、深く呼吸する。目を開いて口を開く。
「違うよ。今は私のために生きてる。この学校に入ったばっかりの時はね。未練なんて知らないって無視してたんだ」
苦笑いをしながら自虐的に語る。
「今はその人の大切にしたかったこと、どうしてもやり遂げたかったこと、そんなサポートができるこの立場を誇りに思ってる」
「そう」
支音には優がどんな気持ちで、変わってないと言ったのかがわかってた。だから、微笑みながらこう返した。
「ありがとう」
優は照れくさそうに手を振る。
「そう言うのはいいから、私の未練はわかったの? 支援者さん。復讐には意味がないって気づいてたんでしょ? そもそもそれも意味がわからないけれど」
「いやー、それがあんまり思いついてなくて」
「今まで、どうやってきたの?」
「勘?」
「それでよく、誇りがあるなんて言えたね」
わざとらしく、深くため息をついた。気がつくと、すでに学校の前に着いていた。
「おかえり」
校門には1人の生徒が立っていた。彼女は白のメッシュが特徴的だ。口角を上げて見せる笑顔はどこか気味が悪く感じられた。
「ただいま……結奈ちゃん」
支音の言葉を無視して、横を通り過ぎていく。
「優さん。どうだった? 支音が支援者に向いてないってわかったでしょ?」
なんの気無しに発せられたその言葉は、支音の心に深く突き刺された。




