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001 木馬亭にて①

 風が強く寒い日が続き、シバケンはなかなか思うような仕事が見つけられなかった。

 冒険者ギルドで自分のやれそうな仕事は、屋根の修繕工事や火災現場の撤去作業といった、あまり人のやりたがらない依頼ぐらいしか残っておらず、しばらくはそれで糊口を凌いでいた。

 そんなある日、久しぶりに近くの集落までの荷物運びという仕事にありつくことが出来た。

 なんでも、ゴモ村まで仕入れに来た商人が、思わず商品を買い過ぎたのだという。

 自分の店に戻るのに、馬車を雇うには輸送コストがかかり過ぎるという理由で冒険者ギルドに声がかかった依頼だという。

 馬よりも人間の方が安上がり、というとシバケンは複雑な気持ちにはなったが、久しぶりの自分に合った仕事なので喜んで引き受けた。

 寒風吹き荒ぶ中屋根に上がったり、重い廃材を片付けたりという仕事をさせるのは忍びないので、その間シマノフスキにはワイルの仕事を手伝ってもらっていた。

 シマノフスキは、僅かながら話す事も出来るようになってきたので、すっかり“アンジュの顎”の皆にも可愛がられるようになっていた。

 ギルドで依頼を受けるための手続きを済ませると、シバケンは、その足で依頼者の元へと向かった。

 近くで宿をとっているという依頼者は、マクナという名の爬人だった。

 商人をしているというだけあって、爬人独特のイントネーションも少なく、愛想の良い男だった。

 話をしてみると、荷物運びの依頼を請けた事を本気で喜んでくれているようで、話はトントン拍子に進み、早速宿の倉庫に預けてあると言う商品を見せてもらうことになった。

 確かに、馬車で運ぶには荷物の量が少なく、馬車をチャーターした場合はコストがかかり過ぎるのだろう。

 シバケンは自分の荷車への積み方を目算したが、なんとか全部乗りそうな量だった。

 聞くと目的地はザッカリーナだという。


「ザッカリーナって、あのプリズメイン村の手前にある?」

「手前って言っても、だいぶこっち寄りだけどね。でもよかった。知ってるみたいなら、安心だ。あの街道は整備されてるからね。夜盗の心配も無いから、ただ運んでくれたらいいよ。そのかわり、明日の朝には出発したいから、そのつもりでいて欲しい。」


 ザッカリーナは、カンナの実家がある集落だった。

 そういえば、この10日ぐらい“木馬亭”に顔を出していなかった。

 というのも、火事場の後片付けや、屋根の修繕工事が続き、身体は冷え切った上に埃まみれになったため、身体を洗って身体を温めるうちに、外に出るのが億劫になっていた。

 久しぶりに、今晩シマノフスキと一緒に行こうかな。

 シバケンは明日の出発時間を確認し、その足で買い出しに行こうとしたが、買い出しもシマノフスキと一緒の方が喜ぶだろうと、予定を変更して“アンジュの顎”の支部に戻った。


「あれ、早かったね。良い依頼なかったの?」


 玄関先を掃除していたワイルが声をかけてきた。

 獣人は毛があるので寒さに強いのだろうか、日頃と変わらぬ元気さでワイルは仕事をこなしている。


「いえ、逆に良い仕事があってね。依頼者も良い人そうで、話はトントン拍子にまとまったよ。」


 「そりゃ、よかったね。」と、シバケンが近頃慣れない仕事をしていた事を知っているので、ワイルは我が事のように労ってくれた。

 ワイルの仕事は少しで終わりそうだったので、シバケンは片付けを手伝いながら、支部の中に入る。

 入ってすぐ、ディガーの件での入院から無事に復帰をしたナイマンと目が合い「よっ」と声をかけられた。

 ナイマンは、すぐに見た事のない冒険者と思われるパーティとの話に戻っていった。

 ナイマンは復帰早々、すぐに仕事を請け始めていたのだが、後遺症などもなく本人は至って元気だという。

 他には、若い男女が食事をしていた。

 依頼から戻って、今やっと食事にありついたかのように一心に食べており、それをヤンナが嬉しげに見ていた。


「ヤンナさん、ボクにもご飯貰えるかな?」


 ワイルが声をかける。

 ヤンナはシバケンの方を見て、一緒にどうかという顔をしたが、


「いえ、シマノフスキと明日の依頼用の買い出しに行きますから、そのついでに外で食べてきます。何かついでに買っておくものはありますか?」


 そうだね、とヤンナはしばし考え、いくつかの品をメモに書いてシバケンによこした。

 シマノフスキはシバケンの声が聞こえたので、奥から顔を出した。

 シマノフスキの横にはプシホダがいた。


「シバケン、今からメシか?それなら、オレも買い出しに付いて行ってやるよ。」


 その言葉に苦笑いをしながら、シバケンはシマノフスキの手を引いて、支部を出た。

2023.4.23 誤字訂正 ⇒ 誤字報告ありがとうございました

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