039 探索を終えて③
次の朝、仕事が無いから朝寝をしようとしても、逆にシバケンは早く目が覚めてしまった。
横で寝るシマノフスキを起こさないように、そっと寝床を抜け出す。
「おっ、起きたかい?」
火を囲んでマナカとサナックがいた。
珍しい組み合わせだったが、用事が済んだのかシバケンと入れ替わりでサナックは去って行った。
「おはようございます。」
「ちょうどよかった。今サナックから別の依頼の話が出たんだ。」
「別の依頼?」
「ああ、ここからすぐにそっちに向かう必要があるから、アタシの荷物だけ盗賊ギルドに届けてくれないか?」
「そんな事ならお安いご用ですよ。」
と言って、2人は荷車にむかう。
サナックが連れて来た者の中には、木製品の補修が出来る職人も居たため、昨日のうちに荷車の仮補修はして貰っていた。
マナカは自分の荷物をバラすと、必要な物だけを取り出し、また荷造りをし直した。
「マナカさん、今からまた依頼でしたら薬草とかまだ残ってますか?この依頼用に買い込んだのはいいですけど、ずっと荷台に積んだままで、結局使わなかったんですよ。」
マナカは呆れたような顔でシバケンの顔を見返す。
「ホントにお人好しなんだね。それがよくあの戦いを生き残ったもんだよ。お言葉に甘えて、薬草はありがたく頂くとするよ。はい、これだけ有ればいいかい?」
と言って、薬草を受け取り、その代金を置いていった。
相場よりもだいぶんに高値だった。
「こんなには。」
「いや、荷物持っていってもらうんだから、その報酬分を色を付けさせてもらっただけさ。」
「そんな、この4日間はマナカさんに採取して貰った食べ物を食べてたのに、そんな気を遣ってもらわなくても。そうだ、干し肉とかは食べます?」
そう言って、干し肉を渡そうとするのを、マナカは笑いながら受け取ってくれた。
「あれ、その短剣?」
マナカは荷物の中に入れていた短剣に目を止めた。
アーゲンタインの部下だったゲルギスの遺体から、ガイエンが抜き取り、シバケンに渡してくれた短剣だ。
しばらくそれを見ていたが、「なるほどね」と呟いて荷物の中に戻した。
怪訝そうに見つめるシバケンの顔を見返すと、何事もなかったかのように「気になっただけさ」と言ったきり、マナカは朝食も食べずに出かけていった。
その頃になると、アルゲリッチ達も起きており、珍しいことにシマノフスキも寝床から這い出してきていた。
最後の食事だというのに、特にいつもと変わりない食事を済ませ、すぐに帰る支度を始めた。
その最中、急に騒がしくなったかと思うと、シバケン達の帰り支度を見にセッカイクが姿を現したのだった。
朝日の中で見るセッカイクは、毛をキラキラと反射させ一層神秘性を増していた。
「4人の顔と匂いは覚えた。こちらから人間の集落に顔を出す事は無いだろうから、また会いに来てくれ。その時はジャムを忘れるなよ。」
笑ったのか顔を歪ませると、すぐにその姿を消した。
3人は顔を合わせる。
「セッカイクに忌腐酒なんて、なんて依頼だったんだろうね。」
ヌブーがポツリと呟く。
「ああ、確かにね。アタシも穴に落ちた時はどうなるかと思ったよ。だけど、シバケンはしっかりしてたし、シマノフスキに至っては、恐ろしいぐらいの魔法制御だったからな。フタを開けたら、アタシ達の方はそれほどの苦労はしなかったかな。」
いやいや暗い遺跡を慎重に進んだり腐鳥の餌場に突撃したりと、なかなかハードな依頼だったな、とシバケンは苦笑を漏らした。
「ヌブーの方こそ大変だっただろ?」
「ああ、アンタ達が落ちた後は、あのラガが主導権を握ったからね。あいつはアンタ以上の脳筋さ。アタシまで最前線で戦わされたよ。」
不満は言いながらも、あのヌブーが楽しげに話していた。
アルゲリッチとこうして話が出来るのを、心の底から喜んでいるのだろうな、とシバケンは感じさせられた。
「ハーブティーが入りましたよ。熱いから気をつけて下さいね。」
「おっ、ありがとよ。」
アルゲリッチとヌブーは手を伸ばす。
シマノフスキ用には蜂蜜をたくさん入れて、「熱いから気を付けて」といって、シバケンは渡してやった。
「ホントに、この子があんな魔法を使うなんてね。話は聞いてたけど、実際にこの目で見ちゃうとね。」
フーフーと息を吹きかけながら飲むシマノフスキの姿を見ながら、ヌブーは感慨深げに呟いた。
「なぁ、シバケン。アンタの事だから心配はしてないけど、この子の事しっかり頼んだよ。困った事があったらアタシを頼ってくれていいからね。アタシの方も、出来るだけ情報を集めておくよ。」
「ありがとうございます。魔石屋の事とか、分からない事が多いので、その時は是非相談させて下さい。頼りにしてます。」
ハーブティーを飲み終わると、それぞれが片付けを始め、4人揃ってゴモ村への帰路についた。
2023.4.23 誤字訂正 ⇒ 誤字報告ありがとうございました




