037 探索を終えて①
マナカ、アルゲリッチ、ヌブーは3人とも疲れていたようだった。
通常、野営の見張りは交代制で、センノキというどこにでも生えてる木を使う。
というのも、まっすぐ生えるというのと、燃えずに燻っているというので、同じ長さに切って、その木に火をつけてその木が灰になるまで、という時間設定に便利だからだ。
シバケンは最初の見張りを買ってでてから、暫くしたら3人の寝息が聞こえてきた。
よほど疲れているのだろう。
ベテランの冒険者に似合わない姿だった。
シマノフスキの前腕の長さで統一したセンノキだが、一本目が灰になろうとしていた。
普段なら声をかける前には次の見張り役が起きてくるのに、今日はその気配すら見えなかった。
シバケンは黙って二本目のセンノキに火を付ける。
一本でおよそ70分ぐらいか。
焚き火が消えないように注意しながら、シバケンは1人で時を過ごした。
結局、2本目のセンノキが半分ぐらい燃えたあたりで、次の見張り役であるマナカが目を覚ました。
アルゲリッチとヌブーは目を覚ます気配すらなかった。
翌朝、甘い香りにシバケンは目が覚めた。
「シバケン、起きたか?昨日、余分に見張りをしてくれたんだってな。お陰で皆がゆっくり寝られたよ。アンタも疲れてるだろうに、ありがとよ。お礼ってほどじゃないけど、マナカがアッツを見つけてくれたから、それを煮てジャムを作ってるよ。パンやチーズにつけて食べてくれ。」
アルゲリッチは上機嫌で鍋をかき回している。
お言葉に甘えてまだ熱いジャムを味見させてもらうと、あまりの酸っぱさに一気に目が覚めた。
「ははは。まだ酸っぱかったか?」
「ああ驚いた。こないだ食べたのはもっと甘かったから。ビックリしましたよ。」
「待ってな。もうちょっと煮詰めると甘くなるからよ。」
各人が気ままに食事をし、各々の仕事をしていると、あっという間に時間は過ぎていった。
シバケンは魔法で出来た岩石が砂に戻った為、まずはそこからという事で、ゴブリンの住処の掃除をし夜には川で綺麗に身体を流す。
大量の死体は魔石を切り取った後、穴に埋める。
その死体の数に、シバケンは改めて戦闘の激しさを思い知らされた。
スキルの能力もあり、シバケンは淡々と仕事をこなしていった。
セッカイクも手伝うという訳ではなく、ただフラリと壁をすり抜けてやってきた。
セッカイクは酸っぱいジャムが気に入ったようで、食事の度に顔を出すようになった。
最初こそ萎縮して話す事も出来なかったが、しだいに会話んを楽しむようになった。
そんなこんなで、あっという間に三日目の朝を迎えた。
シバケンは、昨日の夜から手がけ始めた腐鳥の餌場の掃除を、本格的にスタートする事とした。
昨日のうちに、汚物を埋めるための穴は掘っておいた。
シバケンは布にハーブを染み込ませてマスク代りの物を作り、無駄な抵抗を試みたが、息苦しいだけで本当に無駄だった。
諦めたようにシバケンは作業を開始するものの、瘴気に酔うと脅かされて、30分に一度は休憩をとる必要がありなかなかに捗らない。
途中からは、汚い、という感覚も薄れ、黙々と作業をこなしていった。
ただ、仕事終わりの際には、皆の迷惑にならないように、下流で身体を流す気遣いは忘れなかった。
マナカに採取してきて貰った、クロジという植物の実を水と混ぜると、ぬるぬると泡立ってくる。
その中に香りの強いハーブを一緒に混ぜて、洗うというより、身体に擦り付ける。
魔物の返り血を浴びた時など、油汚れにいいという。
確かに汚れも臭いもよく落ちはするのだが、休憩の度ごと身体を洗っているので、1日終える頃には肌がヒリヒリしてきた。
シマノフスキは、午前の作業が終わる頃には既に痛がっており、かわいそうなので汚物掃除はシバケンが行う事にした。
そんな様子を、手伝いもせずに時々セイカックが覗きに来ていた。
四日目の夕方、サナックとダッカーナが戻って来た。
ラガとアイルッシュの代わりに、10数人の旅団を組んでいた。
セッカイクの話をしたら、大至急で編成されたという。
代表はサナックでもダッカーナでも無く、調査部の室長という老人だった。
その老人は、セッカイクとの面談にむけて色々と差配をしようとするのだが、なかなか思うようにセッカイクとのコンタクトは取れなかった。
逆にいつの間にかセッカイクがダッカーナに対し《服従》の魔法を使っていた事に皆が驚かされた。
ダッカーナ自身も、全く気付いていなかったらしい。
とはいえ、これが功を奏してダッカーナはセッカイクのスポークスマンの役割を担い、セッカイクとのコンタクトもスムーズにいくようになった。
「ホントに今回はご苦労だったな。報酬はギルドに払っておいた。魔石については、ラガ達の分は気にしなくて良いから、お前達で分ければよい。明日にはもうゴモ村に帰っていいぞ。」
セッカイクとの会談と、遺跡の調査といった仕事に忙殺され、サナックがおざなりな言葉をかける。
その夜、シバケン達は焚き火を囲んで久しぶりにのんびりした時間を過ごす事が出来た。
2023.4.23 誤字訂正 ⇒ 誤字報告ありがとうございました




