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005 休憩

 しばらく歩いているうちに、二つあるうちの片方の太陽が沈み、若干肌寒くなってきた。


「そろそろ休憩するか」


 そう言うと、ガイエンは手ごろな石に腰を下した。

 シバケンも背負った袋を気を付けながら、ガイエンの正面の位置に腰を下ろした。

 ヒューモはシバケンの横にぴったり腰を下ろした。

 無邪気な笑顔でこちらを見ると、思わず笑みがこぼれる。


「ヒューモ様の残りは、水筒ごとお前さんにやるよ」


 と言うと、ガイエンは革水筒を投げてよこした。


 ありがたい。

 これでまた必需品が手に入った。

 ヒューモが飲み終わった水筒にはまだたっぷりの水が残っていた。


 水を飲むシバケンの姿を眺めつつ、ガイエンはズボンの右裾をまくった。

 そこには包帯がまかれており、血が黒く固まっていた。


 慎重に包帯をはがすと、自分用の革水筒で水を口に含み、バックから薬草を取り出すとそれも口に入れた。

 何度か咀嚼すると手に吐き出し、それを傷口に塗り込んだ。


「ああ。ヒューモ様を狙ってきたのでな。情けないことに、手傷を負った」


 じっと見ているシバケンの視線に対し、ガイエンは答える。

 4対1でやりあって、手傷を負うのが「情けない」だって?

 やはりこのガイエンという人、雰囲気通りやばい人だ。

 それに、まだこんな小さい子供が狙われている??

 彼らの事情には、あまり深入りしない方がいいのかもしれない。


「ゴモ村でしたっけ、ここから近いんですか?」

「ああ、順調にきている。この分だと暗くなる前には無事に着きそうだ。」

「そうですか、良かったです。ずっと歩きっぱなしですから、ヒューモ様もお疲れなんじゃないですか?」

「何言ってるの。ボクは全然疲れてないよ。」

「ふん。お前さんと違ってこの程度で疲れるような鍛え方をしていないわ。」


 ダメなやつだなぁ、と2人の視線がこちらに向く。

 鍛え方って、まだ10歳くらいでしょこの子。

 こんな子が鍛えなきゃいけないなんて、ここも深入りしない方がよさそうな話題かな。


「シバケン、まだ休憩したい?そろそろ行こうよ。」

「そうですね。おい、シバケン、いつまでも休んでないで、そろそろ行くぞ。」


 ヒューモは全く疲れた様子もなく、シバケンの手を引いて立ち上がらせようとする。

 シバケンは背中の荷物に気を付けながら立ち上がる。

 もう少し休憩したかった。

 イカンの実も食べたかったなあ。

 などと考えながら再びガイエンの後について歩き始めた。


 と、急にガイエンが立ち止まると、腰袋から何かを取り出し草叢に放り投げた。

 その何かは、すさまじい勢いで飛んでいき草叢に消えた。

 と、草叢の中から『グェ』という声が聞こえてきた。


 シバケンはガイエンに促されるまま怖々草叢に近付き、木の棒で草叢を分け入った。

 中には、大型犬ぐらいの大きさの獣が息絶えていた。

 額には鉄の塊がめり込んでいる。

 口には鋭くは無いが太い牙が生えており、全身針金のような剛毛に覆われていた。

 スマートになった猪、といったところか。


「動物が死んでますよ」


 ガイエンに声を掛けると、ここまで持って来いという。

 必死で引きずってくると、ガイエンは額にめり込んだ礫を抜き取った。


「ギャパンだ、旨いぞ。村へ持っていけば、肉も皮も金になるぞ。またお前さんの小遣いが増えたの。」

「それはとてもありがたいんですけど、このままは持っていけませんよ。」

「わかっておる。シバケンよ、これから暮らしていく上で、この程度の解体ぐらいは身に付けておいた方がよいぞ。」


 ぶっきらぼうに見えて、先程から気に掛けてくれている、ありがたい人だ。

 ガイエンは手慣れた手つきで解体をし始めた。

 気持ちの悪さはなく、マグロの解体ショーのようにその手際に見入っていた。

 全身の皮をはぎ、皮に残った脂をこそぎ取る。

 その後、丁寧に草で血を拭き取り、シバケンの背嚢に放り込む。

 肉は胴体の上等な部分だけを切り取り、違う草に厳重に包み込み同じく背嚢に入れる。


「では、行こうかの。」

「脚とかはこのままでいいんですか?」

「ああ、本来なら内臓まで全部持って行きたいところだが、さすがに持ち運びが出来んわ。残念だがこのままにしておこう。他の動物の餌になるゆえ、無駄にはならん。」

「それにしても、解体するのあっという間にでしたね。皆さんこれぐらいやられるんですか?それとも、ガイエンさんが特別早いんですか?」

「どうかの。他人と比べたりするようなもんじゃないでな。皆同じようなもんだと思うぞ。だが、これから冒険者としてやるなら、解体の機会はたんとあるじゃろ。」

「ありますか?」

「ああ。冒険者の依頼に害獣駆除は付き物だ。それに、森に入る機会も多くなるゆえ、依頼の途中で獣に出会い、仕留めたらそれで報酬とは別の収入にもなるわ。」

「なるほど。というと、冒険者の皆さんは解体がやれるんですね。」

「全員やれるか、というと例外もあるだろうが、やれるようになって損はない、という事よ。」


 今までの世界とは違う、この世界での基本的な素養というものから身に付けていかなくてはならなさそうだ。

 こんな事なら、魚屋や肉屋でバイトしておけばよかったか。

 いや、解体もそうだが、まず、そもそも動物を仕留めるところからか。

 自炊してたので、魚は捌いたりはしたが、まさか屠殺まで行うようになろうとは。


「解体のほかにも、獣の名前、食用にむいてるかどうか、皮などが売り物になるのか、覚えることがいっぱいじゃな。」


 愉快そうにガイエンは笑う。


「ギャパンは無理だけど、イリスぐらいならボクでも解体できるよ。」


 ウサギぐらいの大きさの小動物なら、ヒューモでも解体出来るらしい。

 となると、逆に対価を払って人にやってもらう、という選択肢もあるかもしれない。

 覚えなければいけない事も多いから、その全てを自分でやるのは到底無理だ。

 もう少し情報を集めよう。

 自分にどんな仕事が出来るのか、そもそも、どんな仕事があるのか。

 不安は尽きない。。。


 シバケンの不安をよそに、一行はゴモ村まで歩みを進めた。

2022.8.13 誤字訂正 ⇒ 誤字報告ありがとうございました

2022.9.3 誤字訂正 ⇒ 誤字報告ありがとうございました

2022.9.18 誤字訂正 ⇒ 誤字報告ありがとうございました

2023.8.20 誤字訂正 ⇒ 誤字報告ありがとうございました

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