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003 大量大量

 結局、シバケンは彼らの仕事を手伝う事にした。

 この国で信用のある者を保証人にするという話の中で、自分を出したのだ。

 ただの人殺しではない。。。と思いたい。


 言われるがまま、死体の懐に手を入れる。


「それにしても、なぜ初めて会ったこんな素性も分からない自分なんかに、親切にしてくれるんですか?」

「親切?なに、他意は無いわ。荷物持ちにちょうどいいスキルを持っていただけじゃ。それにヒューモ様も懐いているようだしな。」


 ヒューモは、既に2人目に取り掛かっていた。


「よし、全部そこに広げたか?それでは、次はワシが指示する物を袋に詰めて持って行け。袋はそこにある。生憎と荷車までは用意がない故、村まで担いで貰わねばならぬがな。ゴモ村に着いたら銀貨2枚をやろう」

「銀貨2枚?」

「不満なのか?」

「いえ、物価が分からなくて、それが高いのかどうなのかが。」

「そう言う事か。難儀な奴じゃな。銀貨2枚で20,000ガン。贅沢せねばお前さん1人、宿屋に泊まって10日は過ごせる筈じゃ。それが半日の簡単な荷物運びでなら、破格とは思わぬか?」

「10日ですか」

「目つきがかわりおった。では、承知じゃな。」


 そう言うと、ガイエンは広げた荷物に手を伸ばした。


「ついでに、この国の金についても教えてやろうかの。村に着いたら色々と困るのだろうからな。」


 と、思い出したかのように、ガイエンはその場に金を並べ始めた。


「こんな物は使ううちにすぐに覚えるものよ。あっさりとしか言わぬからな。」


 銅貨と銀貨と金貨の順に並び、それぞれ形状が異なる物が混ざっていた。

 聞くと銅貨には穴の空いた銅銭と、銅貨があり、銀貨と金貨には、それぞれに大豆ほどの大きさの銀粒・金粒があるという。

 銅銭、銅貨、銀粒、銀貨、金粒、金貨の都合6種類の硬貨が存在している事になる。

 金の単位は、さっき聞いた通り『ガン』だと言う。

 銅銭1枚が1ガンで、銅銭100枚と銅貨1枚が同じ価値。

 それ以外は、銅貨10枚で銀粒1顆。銀粒10顆で銀貨1枚というように、10枚でその上の価値の硬貨と等価だという。

 まあ、こればっかりは経験で覚えていくしかないだろうが、単純そうなのでそれほど苦労はなさそうだ。

 問題は相場感だろう。

 大人1人が、安宿に泊まって10日暮らすのに20,000ガン。との事だ。

 日々の食事にどれだけかかり、どんな仕事でどれだけの収入になるのか、そのあたりはしっかりしておきたい。

 いずれにしても、こうして教えてもらえたのは、非常に貴重な時間だった。


「ありがとうございました。」

「それでは、そろそろ仕事をしてもらおうかの。今から要る物とそうでない物を仕分けをする。ワシが渡す物を背嚢に詰めていけ。」


 ガイエンはそう言うと、これとこれ、と次々にシバケンの方に放り投げてよこした。

 装飾品やまだ使えそうな武器のほか、乾燥した草などであった。

 乾燥した草は薬草なのだろうか、押し花のようなものも混じっていた。

 それらが、次々と投げられる。

 言われるがまま、シバケンは背嚢に詰めていく。

 ヒューモも面白がって、ガイエンを真似て物を投げてくる。

 あたふたするシバケンの姿を見て、さらにヒューモも面白がる。

だが、都度ガイエンが一瞥をくれた上で無言であるのは、ヒューモの仕分けは的確に行われているのだろうか。


「おっ、こいつはなかなか良い物だ。シバケン、これはお主が使うといい。ナイフひとつ持たんと不便だぞ。」


 と言って、ナイフをシバケンの脇に投げてよこした。

 拭いてはあるものの、刃の根元には血がこびりついていた。

 刃渡り20センチほどで武骨な実用向きのデザインだった。

 刃に触ると、すぐに切れそうなぐらい良く砥がれていた。


「ついでに、これもやる」


 大きな葉に包まれたものを放り投げた。

 シバケンは恐る恐る広げてみると、干し肉と薄焼きのパンが包まれていた。


「わしらの食料を分けるつもりは無いから、お主はそれを食うがいい。ゴモ村に着いたらワシらの仲間の所で飯は食わせてやるが、食料はあっても困らぬじゃろう。まあ、1週間ぐらいで食べ切った方がよいだろうな。」

「1週間!?」

「ん?どうした?」

「あっ、いえ。1週間というと?」

「なんじゃ、そんな事まで分からんのか?」


 ガイエンは先が思いやられると、呆れ顔を浮かべる。

 その様子を見ていたヒューモは口を開く。


「シバケンはそんな事も分かんないんだ。1週間は、10日だよ。で、5週間で1ヶ月。10ヶ月ではなんでしょう?」

「。。。1年?」

「正解!」


 やけにヒューモは楽しそうだ。

 ガイエンの言う通り、懐かれているのだろうか。


「それじゃあね、これ分かるかな。1日は何刻でしょう?」


 刻?

 10日で1週間。

 5週間で1ヶ月。

 10ヶ月で1年。

 までは分かったが、刻というのが分からなかった。


「分からないの?答えは、正15刻と従15刻の合わせて30刻でした。」

「、、、?」

「怪訝そうな顔をしておるな。正1刻から正15刻までカウントした後は、従15刻から従1刻へと数字が少なくなっていく。それが1日よ。まぁ、こんな物は生活していけば自ずと理解出来てくるわ。さあさあ、無駄話はこれぐらいにして、さっさと作業を終わらせんと、夕方までにゴモ村には着かぬようになってしまうぞ。早うせい」


 ガイエンにせき立てられて荷物の仕分けをするうちに、背嚢は両手で抱えるぐらいの大きさになった。

2022.8.13 誤字訂正 ⇒ 誤字報告ありがとうございました

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