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019 エルナト到着、情報収集



 エルナトのギルド。俺たちはギルド長への面会をお願いしてホールで待機していた。王都ギルドのイメルダさんから連絡してくれてるはずだから、まずは会って情報が欲しい。

 欲しい情報は二つ。俺たちが王都から逃げた後、俺たちに対する対応がどうなったのか、追っ手が放たれたのか指名手配などがされたのかなど。もう一つはアマンダの両親の行方だ。

 それによってはアルドラ皇国へ急ぐ必要も出てくるかもしれない。


「亜人が多いね。この国って魔族は否定的で亜人は受け入れてるって言っても、ここまでで実際に見た亜人は昨日の盗賊だけだったよね」


ホールを見渡しながらアマンダが言う。


「受け入れてるって言ってもそんなに好意的じゃないってことなのかも。ここはなんでも受け入れてるエルナト皇国に近いから、亜人が多いって感じかな」


「昨日の盗賊とか兜外すまで気付かなかったし、獣人としての特徴を隠して暮らしてる可能性もあるかも」


 動物的の耳がある者、尻尾がある者、皮膚が硬質な光を放つ者、色々いる。その中でも異彩を放っているのが、コウモリのような羽を生やした者だ。数人の仲間と一緒に賑やかに騒ぐ様子は周囲の注目を集めている。


「ケインさん、アマンダさん、こちらへどうぞ」


 そんな様子を見ていたら受付の女性が声をかけてきた。ギルド長と面会だ。




-----------------------------------




「私がここのギルド長、ゴルドだ。君たちがイメルダの言ってた王宮から逃げ出した者たちだな」


 ギルド長のゴルドさんは案内の人が部屋を出るとそう切り出した。イメルダさんからの連絡はちゃんと届いてたみたいだ。やっぱり何か通信手段があるんだな。


「はい。脱獄してイメルダさんに助けてもらい、なんとかここまで来ました」


「それは大変だったな。アマンダだったな。お前はマクシムとサユリの娘なんだろ? 俺はもう殺されてるんじゃないかって気にしてたんだ、無事で何よりだ」


 偽名の方で話しかけてくるゴルドさん。イメルダさんの計らいかな。信頼できる人でももしものことを考えたら名前は偽名で通した方がいい。


「ありがとうございます、それで聞きたいのはそのお父さんとお母さんのことと、聖女や王国が私たちの対応をどうしてるかです。何か知ってますか?」


 早速アマンダが目的のことを切り出した。やっぱり両親のこと気になってるんだな。普段あまり口にしないけど当然か。この世界で唯一の肉親だもんな。


「ああ、知ってるとも。二人は無事だ。その点に関しては心配するな。魔族領で元気に暮らしてるらしい。情報はたまに来る魔族からのものだから確認のしようもないが、俺はあの二人をよく知ってるからな。魔族領で死んだなどと言われたら逆に信じられない」


 さすが脳筋両親だな。敵地に乗り込んで元気に過ごしてるのが当然と思われるほどの実力か。想像が追いつかない。


「あと、お前たちに対する手配はされていない。これはイメルダからの情報だが、王都内で王宮騎士が探してただけで、少なくとも今お前たちは追われていないと見て間違いないだろう」


 そかー追われてなかったか。それでも王都周辺で俺やアマンダのことを知ってる騎士とかに出会えば通報される可能性だってあるだろうから、どちらにしても逃げてただろうけどね。


「ありがとうございます、1番知りたかったことが確認できて助かりました」


「いやいや、イメルダと一緒でな。俺もマクシムやサオリには世話になったんだ。と言うか討伐に参加してた者であいつらの世話になってない者なんていないんだ。どこのギルド長だって二人の娘だと分かれば協力するさ」


 なんというネームバリュー。


「で、どうするんだ? 二人を追って魔族領へ行くのか?」


「行けるんですか?」


「ここからは無理だがアルドラからなら可能だ。と言っても魔族の町までだがな。魔王の城まで行った人間で戻ってきた者はまだいない。というか魔王に城があるのかも謎だ」


「じゃあ、アマンダの両親もその町に?」


「いや、そこには居ないだろう。その町まではアルドラから人が行き来しているが、二人を見た者はいないらしい。二人はもっと奥地に居る。アマンダはあの二人の目的を知ってるんだろ?」


「詳しくは知りませんが、きっと知性のある魔族とは分かりあうこともできるって考えて、交渉に行ったのだろうと思います」


「そうだ、そしてそのために魔族領の奥地で修業してるらしいぞ」


「なんで? 交渉に行ってなんで修業?」


心の声が思わず出てしまった。


「そりゃお前、決まってるだろ。魔族の世界では一番強いものが一番偉いからだ」


なんというシンプルワールド、力こそパワーの世界が魔界か! ということは


「言うことを聞かせたかったら、一番強くなって魔王になっちまえばいいって、日々戦闘好きな魔族と戦ってるらしいぞ」


「それって、袋叩きにあったりしないんですか?」


 アマンダが当然な疑問をたずねる。


「そこがまあこの王国の多くの者が勘違いしている部分なんだが、別に魔族は人間に敵意を持っていないんだよ。特に強い者ほどその傾向にある。さらには強ささえあればすぐに仲間入りできるのも魔族だ」


 ゴルドさんの説明をまとめるとこうだ。

 魔族の力ある者は人に対する敵意がない傾向にある。そもそも人と魔族領の間には広く魔物の生息するエリアがあり接触することも少ない。そして接触しても魔族は数人で騎士団を相手にできるほどの力を持っており、人間を脅威と思ってもいない。

 さらには魔素の濃い魔族領ではそれだけでエネルギー得られ、食事をとる必要すら少なくなるため、わざわざ魔素の少ない人間の領地が欲しいなどとも思っていない。



「じゃあなぜ王国は戦い続けてるんですか?」


「知性のない魔物は本能で襲ってくるし、繁殖して数が増えれば人の領地を襲う、さらには魔族にも色々いて、魔物に人を襲わせて楽しむような悪趣味な者がいたり、綺麗な娘をさらう者が居たりするからだ」


「それって魔族全体の意思と関係なく、人を襲う魔物と一部の問題魔族のせいで、魔族全体が人に敵視されてるってことですか?」


「そうだ、このミラ・カーフ王国では特にそうだ」


 なんか定番の世界観と違うな。魔王が悪の大親分で人を滅ぼそうとする、そんな設定はよくあるけど、この王国は無害な魔族に対しても人が逆恨みしてるってこと?


「まあ実際に被害にあった者や家族を失った者にとっては、分かっていても許せない。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いってのが実情だ。ギルドとしては害のある魔物を討伐するのは当然であり、それを支援してくれるのは、そういった魔物や魔族を憎む者たちだからな。国の姿勢としてまで魔族を否定しているこの国では、もう魔族と魔物を切り離して考えることなんてできないんだろう」


 ゴルドさんは最後の部分を少し悲しげに言った。


「で、どうするんだ? 特にアマンダ、両親を追うのか? それとケインだったな。お前は新しい勇者の召喚に巻き込まれてこの世界に来たんだろ? これからどうするんだ」


「私は両親に会いに行きたいです」


「俺はアマンダと一緒に行くつもりです、これまで世話になったし、女の子が危険な場所に行くってのをほっとけないですから」


 そう言うとアマンダが嬉しそうな顔を向けてくれる。お! もしかしてポイントアップ? 俺、いいこと言った?


「しかしお前は支援スキル使いなんだろ? 大丈夫か?」


 あぅ! ゴルドさんが痛いところを突いてきた。そうだね、アマンダの方が強いし、危険な時に守られたのは俺だった。


「大丈夫です! ケインは本気出せば私より強いですから」


 そうだ! 俺も本気さえ出せばって、そうなの?


「そうなのか? すまんがそうは見えないぞ?」


 うん、おれもそう思う。


「まあいい、そういうことなら今は丁度いいタイミングだ。お前たちを魔族領へ連れていってくれるかもしれない男が来ている」


「魔族領に詳しい人が居るんですか?」


 身を乗り出すアマンダ。そりゃそうか両親へ会える方法が近くにあるって言われれば飛びつきたくなるよね。


「ああ、詳しいぞ、魔族だからな」


 魔族の存在を否定し拒絶しているこの国に魔族が来る!? ゴルドさんによると表向きには亜人として、産物輸送の護衛として来てるらしい。エルナトは友好的な魔族を受け入れているアルドラ皇国と接する町だ。ここのギルドとしては情報を得るために、こう行った形で魔族と交流を持っているとのこと。

 そしてその魔族とは、ホールで賑やかに過ごしていた、背中に蝙蝠の羽を持つ男だった。名はリゲルといい魔族でありながらアルドラ皇国で冒険者をしており、かなりの人気者となってるらしい。

 これってイメルダさんがちょこっと言ってた人のことだよね?

 ゴルドさんはそのリゲルに相談することを俺たちに勧めてくれた。


 ちなみに昨夜の獣人盗賊に関しては、ギルド長への面会をお願いした時点で報告した。現場での対処が甘かったみたいで、ギルド長からは「なんで生かしてるんだ?」との反応だったが、すぐに対応してくれ騎士たちが馬車で捕獲に向かったらしい。






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