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016 聖女回避作戦と新たなスキル


 結局俺たちは聖女の到着を待つことにした。別に聖女に会うためじゃない。聖女に会わないためにだ。焦って西を目刺して鉢合わせなんてことになったら笑えないからな。幸い聖女が立ち寄るのは教会であり、そこに宿泊することも分かった。ならばそれを確認して町を離れればいい。


「大通りに宿を取ろう。窓際の部屋を確保して聖女が通過するのを確認してから町をでる」


「そうね、それがいいわ」


「早ければ明日か、まぁ数日待たされる可能性もあるけど丁度いいから生活魔法を教えてくれない?」


「あ、そうだったね。やろうやろう」


 幸いこの町から西にある町までの距離は、徒歩でも問題なく移動できる距離だ。聖女一行が到着したら依頼を受けずすぐに出発してしまえばいいだろう。夜になるかもしれないが、俺とアマンダ二人なら、隠れるように野営すればいい。盗賊に襲われてもなんとかなるだろ。よし! 出発までに野宿用のシートとかも買っとくかな。今後の事を考えたら今の背負い袋よりもザックを手に入れた方がいいだろう。

 しかしこの世界は水と火が生活魔法でなんとかなるってのが便利だ。俺は元の世界でたまに登山をしてたけど、装備で水と火に関する物の占める割合って結構大きいし重いんだよね。逆に寝る時に使う銀マットとかは、軽いけど嵩張るのが欠点だった。やっぱり今の背負い袋は馬車の移動が前提だから、容量が足りないな。そう考えると護衛任務ってお得だよな。食料も野営の道具も依頼主が準備してくれてたもんな。移動も基本乗ってるだけでいいし。




-----------------------------------------




 町の正面入り口に近い大通りに面した宿、その宿の大通りが見渡せる部屋を確保した。ここなら聖女が通れば騒ぎで気付けるだろうし、レースのカーテン越しに見て確認もできる。食事も宿で済ませればいい。宿の受付にはちょっと体調が悪いから数日連泊するかもしれないと伝えてある。そんな感じでこの宿からでなければ、運悪く鉢合わせになることもないだろう。町に聖女が到着したら、体調が良くなったから先を急ぐとでも言って自然な感じにチェックアウトだ。


「じゃぁ生活魔法の訓練開始!」


 基本訓練とかが好きなのか、楽し気なアマンダ。部屋の遮光カーテンを閉めて薄暗くし、光る魔法陣を見やすくする。馬車でやったように文字無しの魔法陣を出して俺へ差し出す。そして俺がそれに触れて魔力を感じ取るのが第一歩らしい。


「どう? 感じられる? 魔力」


「いや、分かるような分からないような……そもそも俺に魔力とかあるのかな……」


 俺は少し暖かいようなものを感じるけど、どうもそれがアマンダの手のひらからの放射熱にしか思えないんだよな。


「魔力ってそもそもどんな感じなの? 分かるようになったら物理的に触る感覚があるの? それとももっと神秘的な感じ?」


「えーとね、ムズムズするような何かが溜まってくるような感じ、物理的じゃないよ。この感覚は私が魔力を集中したときの私の感覚だから、人とは違うかもしれないけど」


「そうかー」


「私も本格的に魔法の訓練なんてしてないから詳しくないけど、私たちみたいな召喚された人って魔力が少ないんじゃないかな。この世界の人でも魔力の総量って10代で限界が決まるって話だからね。ケインって30歳だったよね。魔力成長期を過ぎてこの世界にきてるから、極端に少なかったりするのかなー」


 う、なんか歳食ってるから成長しない的なやつですか? なんかチクっとくるな。しかし魔力量かそんなの自分じゃ分からない?


< 魔力 10 >


 見えちゃった。なんという俺の便利機能。あれ? でも前にはそんなの見えなかったと思うけど。あ、もしかしてスキルの熟練度とかあったしもしかしたらスキルが成長した?


 スキルオープン!

 体調管理 熟練度 4 

 詳細スキル  < 体調観察 >  < 体調操作 >  < 魔力観察 >    


 やっぱり、熟練度上がってるし、魔力観察ってのが増えてる。で、その能力は?

 項目に集中すると詳細が見えてた。


 < 魔力観察 > 魔力量を観察できる。


 それだけか! それだけだった。まぁ魔法がある世界なんだから、きっと使い道が色々あるんだろうけど魔法になじみがない俺には、そのシーンが分からないな。とりあえずアマンダの魔力量を観察すると。


 < 魔力 10 >


 俺と同じ表示だ。あ、これって魔力が今は満タンですよーってことだよな。だとしたら魔力がどれくらいあるのかとか多いとか少ないとかの判断は出ないんだ。そか、俺のスキルってなんでも10段階表示だもんな。


「どうしたの、ぼーっと見て、なんかついてる?」


 アマンダを見ながら考え事してたら、なにを勘違いしたのかアマンダが鏡を見に行った。 さっきご飯食べたもんね。


「違うよアマンダ、スキルに新しい項目が増えててね、魔力が観察できるようになったんだ。それでちょっと見てただけ」


「なんだ、私の顔になにか付いてたのかと思ったじゃない」


「はは、ごめん。でもこのスキル、魔力の現在の量が10段階で分かるだけで魔力の強さとかが分かるわけじゃないみたいなんだよね。車で言うとガソリンメーターみたいなもんかな」


「へー、そうなんだ。魔法使いとかだったら便利だったのかもね」


「だねー、せめて人の魔力の総量とか分かればいいのに。この人魔力が凄く高いぞ! とか戦う前に分かったら警戒できていいよね」


 < 魔力量比較 2.2 >


「なんか出た! アマンダ見ながら話してたらなんかでたよ! って < 魔力比較 2.2 > ってなんだ? どういう意味だ? あ、もしかして俺との比較?」


「それって、私の魔力はケインの2.2倍ってこと?」


「そう……なのかも、いやそうなんだろうな。ちょっとへこむ。俺、腕力でも魔力でもアマンダより下か」


 まぁさっきアマンダが言ってた、10代で魔力の総量が決まるって話が本当なら、魔法のない世界から30歳でやってきた俺の魔力が少なくても納得っちゃ納得だな


「そんなの気にしなくても、ケインには問答無用で敵を無力化できるスキルがあるんだからいいじゃない。それに私と一緒に旅するんだから、水にも火にも困らないでしょ?」


 くー、何気に嬉しいことを言ってくれるじゃないか。アマンダ優しい! このところ一緒に居るのが自然になってきた感じがする。よくよく考えると、30歳の俺がこんなハーフの可愛い子と旅するなんてなかなかないよ。そういう意味では異世界に呼ばれてよかったかも!


 俺は新しい項目 < 魔力観察 > を試すため窓際から大通りを見る。一般の人、神官や魔法使い風な人、色々な人の魔力を俺比較で観察した。その横でアマンダも通りをみている。魔法に関してそんなに詳しくないのはアマンダも気になるみたいだ。


「どんな感じ?」


「そうだな、普通の人、冒険者も含めて、魔法使いじゃなさそうな人の平均が2~3で、神官や魔法使いみたいな人は5~20とか、かなり幅広いな」


「へー、じゃぁ私はぎりぎり一般人くらいはあるってことかな」


「まぁ観察した中ではそうなるね。しかしそうなると俺は一般人の半分か……となるともっと年上で召喚されたアマンダの両親も低いのかな」


「そうかも、お父さんもお母さんも、生活魔法が覚えられなかったから」


「そかー、でもそうなると大神官って人はどうなるんだ? 結構歳だろ? 聖女の親なら。聖女の歳、俺と同じくらいに見えるし。魔力無いのにどんな怪我でも一瞬で治すって」


「それがスキルなんじゃない? スキルだったら魔力とか関係なく使えるし」


 スキルか? スキルってなんなんだろう。魔法とは別な力ってのだけは分かるな。俺自身、スキルを使う時に魔力なんて意識しないし感じもしない。だけど発動する。看護師をやってたから< 体調管理 >って名目のスキルなんだろうけど、元の世界でやってたことの延長線上って言うには、性能がぶっ飛んでる。そうなると、聖女やその親の大神官の触れるだけで大怪我だって治せるってのは、元の世界で医者? 元の世界では医者として外傷や病気を治療してたけど、この世界に来たことで俺と同じようにぶっ飛び性能になって触れるだけで治せてしまう……みたいな?

 アマンダの両親だって、元の世界で強かった人が、この世界に来て出鱈目に強くなった感じだしアマンダ自身もそうだ。もともと薙刀で強かったらしいけど、戦ってた姿を思い出すと、元の世界の人間にできるとは思えない動きをしてたと思う。なんとなく分かってたぞ。召喚された者のスキルは元々やってたことの拡張版なんだ。

 そうなると最初の召喚ではなんで勇者的な強い人を召喚しなかったんだろう。その辺りもどういう経緯だったのか神官とシスターに聞けばよかった。


 生活魔法の訓練はのんびりと日がな一日行なった。

 色々試してみたけど、結局俺は魔力を感覚にとらえることができなかった。

 水が出せるようにだけはなりたいんだけどな。やっぱりこの世界のトイレは自分の生活魔法で流すのが主流だった。出せない人ように桶があるが、トイレを流すためにアマンダに水を出してもらうってのはかなり恥ずかしい。早く使えるようになりたいぞ!






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