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011 逃亡という名の旅立ち


ガタゴトガタゴトガタゴトガタゴト……


 馬車の荷台、その一番後ろに座る俺とアマンダ。天気はいいし風も気持ちいい。早起して寝不足だからか、馬車の揺れまで眠気を誘い、さっきから欠伸が何度もでる。アマンダも同じみたいだ。


「気持ちいい天気ね」


「そうだねー」


 こうやってのんびり日に当たるのってどのくらいぶりだろう。よく考えたら元の世界でも仕事は室内だし最近は外で遊ぶようなことも無かったから、本当に久しぶりかも。本当に日差しが気持ちよく頬を撫でる風も悪くない。このあたりはまだ王都からそう離れておらず危険もないから緊張感すらない。

 

 俺たちは夜明け前に起こされた。よって今日は早起きのご褒美はなしだがそれは別の話。

 イメルダさんは言ってた通り食料と生活道具を背負い袋にまとめて渡してくれた。それから別れを惜しむのではなく、護衛対象との合流場所やその時間まで隠れる場所を説明してくれ、あっさり「元気でな、何かあったらいつでも来な」と送り出された。

 その後は予定通りだ。王宮騎士と遭遇することもなく、無事に護衛対象の荷馬車と合流。イメルダさんから受け取った依頼受託の書類を見せて出発。今に至る。


「護衛って私たちだけじゃないんだね」


「だね。このサイズの荷馬車だと、前に2人、後ろに2人って感じなのかな」


「どうなんだろうねー」


 護衛任務は俺たちだけじゃなかった。もう一組の二人組が依頼を受けており計4人での護衛となった。合流した時、互いにギルドカードを見せあう。その二人組はどちらもCランクだったので、スキンヘッドの男がリーダーとなる。ランクが高い人がリーダーになるのが普通なんだろう。だけどカードを見せ合った時にアマンダの「総合力 B」をみて驚いていたのがちょっと面白かった。

 そして互いに自分の役割を伝えあい、もしもの時の戦術が簡単に話し合われた。


「若いねーちゃん女が前衛で、おっさんが後衛か! その籠手、体術使いかと思ったら支援スキルのつかい手かよ。珍しいが変な組み合わせだな」


 悪気はないんだろうけど、微妙に傷つく。まぁ戦力としてアマンダと比較されても大差ありすぎて悔しくないけど、おっさん呼ばわりにはちょっと傷付いた。この人たち俺より年上だろ。俺、30歳はまだ若いって思ってるんだけどな。そういえばこの世界の平均寿命とかどうなってんだろう。30歳をおっさんって言うだけあって結構短命だったりするのかな。

 支援魔法については、筋力を上げたり下げたりできるってのと、自然治癒力を高められるってことだけ伝えた。実際それができることも確認済みだ。自然治癒力と意識したらすぐ見えた。


< 自然治癒力 5 >


 こんな感じに。5ってのは普通ってことなんだろう。こんな漠然とした焦点を絞らない操作もできるみたいで、これなら副作用的な害もなさそうな気がする。傷を治すために細胞を活性化させたら無秩序に増殖して癌化しましたじゃ笑えないもんな。


「本番は夜だ、明るいうちはまず危険はないからのんびり行こうや!」


 Cランクの彼らは昼は警戒する必要もないと言わんばかりに荷台の木箱の上でくつろいでいる。実際街道には他にも馬車が走っていて、時折騎士も巡回なのか見かけすれ違う。こんな状況で襲撃があるとは思えない。夜が本番って言ってるけど、どんな感じになるんだろうな。そういうのもイメルダさんに聞いておけばよかった。

 ちなみにスキンヘッドのリーダー役がダレンさんで、その相棒がドルトンさんだ。二人とも剣と盾を装備した標準的な冒険者に見える。もちろん何となくだ。俺にそれを判別するほどの情報や経験はない。


「気さくな感じの人たちで良かったね」


「そうだね、でも護衛任務ってこんな感じなんだね。もっと緊張して警戒するような感じかと思ってた」


「そうね、でも王都の周辺だしいきなり治安が悪いってことは無いんじゃない?」


「それもそっか……」




--------------------------------------------




「退屈ね……」


「そだね……」


「あ! 魔法の練習しよっか!」


「ここでできるの?」


「最初はね、魔力を感じるだけだからどこだってできるわ」


「じゃぁお願いするよ。便利そうだし、俺も早く自分の能力判定が見てみたい」


 アマンダが早速集中する。薪に火をつけた時と同じ感じだ。手のひらは上にむけてある。3秒ほど集中するとその手のひらの上に、魔方陣が現れる。周囲が明るいからかその光は薄っすらとしている。

 

「あれ、輪っかだけだね、前に見た時は文字があったような」


 魔法陣は手のひらより小さいサイズで二重の円があるだけのシンプルな物だった。


「なんの意思も加えてないからだよ。これにこうやって水を意識していくと……」


 アマンダが手を馬車の外へ差し出し集中する、すると魔法陣に文字が浮かび上がり、その中心から水があふれだしてきた。量はコップ数杯分の水が地面へと流れた。


「おお、凄い。なにその手順、おもしろいね」


「えっとね、魔力を集中して土台を作って、そこに意思を加えて魔法発動って感じかな」


「ふんふん、それで俺はどうしたらいいの?」


「まずは魔力を感じるところからだから、私が作った魔法陣に触ってみて」


 そう言うとアマンダはまた集中して二重の円だけの魔法陣を作り出す。


「はい」


 差し出された手の上にある魔法陣に指で触れてみる……なにもわからないな。物質ではないのは分かるがもう少し何か感触があるのかと思った。物理的な感触は無しだ。


「そうじゃなくて、同じように手のひらで触れてみて、感覚を集中するんだよ」


「こうかな」


 俺はアマンダの手のひらに自分の手のひらを被せるようにして魔法陣に触れる。

 ん? なんとなく暖かいような、いやこれはアマンダの手のひらからの放射熱か。魔力ってどう感じたらいいんだ? 俺はあれこれ角度を変えてみたり魔法陣を叩くようにしてみたりやってみるがさっぱりだ。才能ないのか? でも生活魔法は誰でも使えるって話だしな。あ、繊細な感覚だから揺れる馬車の上じゃ難しいとか?


「暇だからってイチャイチャしてんじゃねーぞ! こちとら最近カーチャンが冷たくてご無沙汰なんだ。勘弁してくれ」


 ドルトンさんが、笑いながらからかってきた。


「いえ、そんなんじゃないんです。俺、生活魔法がさっぱり使えなくて、教えてもらってるんです」


「は? 支援魔法みたいな高度なことができて生活魔法が使えないってなんだよ。変な奴だな」


「本当に支援の力があんだろうな。いざって時にできませんじゃ命に係わるぞ」


 おっと考えが浅かった。お互い命を預けるんだからそういう信用は大切だよね。


「それは大丈夫です。やってみせますね」


 そういうと俺は立ち上がり、二人の方へ向く。魔法だと思ってくれてるみたいだからちょっと魔法っぽく手を拡げ集中する振りをする、そして二人の方向へ手を向け、分かりやすく声に出す。


「筋力強化!」


( 骨格筋 筋力 7 )


「ん? なんだこれ、すげー力が入るぞ」


 ちょっと近い場所にいたドルトンさんに効果がでた。試しに二人に意識を向けたけどやっぱりそういうやり方だと近い人に効果が出るみたいだ。


「うおお! なんだこれ、支援魔法ってこんなにすげーのか!」


 ドルトンさんは、馬車を飛び降り体を動かし始めた。馬車は人が軽く走るくらいの速度で移動しているが、その周囲を強化した筋力を楽しむように走り回っている。


「おい、そんなにすげーのかよ、俺にもやってくれないか?」


 その楽しそうな様子をみてダレンさんもやってくれと頼んできた。


「うおおおお! こりゃすげーぞ、自分の身体じゃねーみてーだ。今の俺、Bランクの連中と同じくらい動けてるんじゃねーか? この前苦労したトロールの群れもこれなら余裕でやれそうだ!」


 へー、トロールとかいるんだ。さすが異世界。でもそれって魔族なの? 魔物に分類されるの? そういうのももっと勉強してみたいな。王都を脱出したのはいいけど、本当に知らないことばっかりだ。ある程度王都から離れたら一度集中してこの世界のこと勉強しよう。

 

しばらく強化した筋力を楽しんだダレンさんとドルトンさんは、見事に筋肉痛になった。笑


「ちょっとー、お願いしますよー、そんなので護衛は大丈夫なんでしょーねー」


 御者に呆れられた二人の「筋力強化」を解除し、回復魔法の振りをしてスキルを使用する。


( 自然治癒力 8 )


 まだ昼前だ、夕方までに効果が出てることを祈ろう。

 しかしいい実験になったな。二人には申し訳なかったけど、筋力強化って神秘的な力で力を倍増って魔法みたいな効果じゃなくて、元々ある筋肉の力を絞り出すような効果みたいね。人間の筋力って意識して頑張っても30%とか40%とかしか使えてないって話だけど、それを無理やり100%まで使っちゃうみたいな。そりゃすぐに筋肉痛になるよね……あ! これって使えるかも!

 筋力強化する、短時間の運動で筋肉痛にする、自然治癒力強化で短時間で筋肉超回復! すっげー高効率の筋トレができるんじゃない? 後、眠気の操作も併用して睡眠も好きな時にとれるし、消化吸収を強化すればタンパク質の摂取とかも強化できる。これ面白いかも。いつかやってみよう。


 結局俺は、揺れる馬車の上での魔法の練習はあきらめ、日が沈むまでのんびりとした馬車の旅を楽しんだ。




-------------------------------------------





「よーし、今日はこのあたりで野営だ、良さそうな場所で止めてくれ」


 王都から各方面へ向かう街道はしっかり整備されていて、ほとんどのコースで野営せずに済む距離に宿場がある。だけどイメルダさんが選んだこの護衛任務のコースにはそれが無い。野営なんて慣れてないから宿場がよかったんだけど、これも追手が来ても見つかりにくいように考えてのことだろう。

 御者は視界の開けた場所を選び馬車を止めた。


「いやー助かったぜ、回復魔法ありがとな。筋肉痛、ほとんど感じなくなったよ。結構魔力を使わせちまったし、休んでていいぞ」


 やっぱり気のいい二人だ。俺は別に疲れていないけど、無理して動こうとしても不自然かもしれないから遠慮なく休ませてもらった。アマンダはしっかり手伝ってる。ずっと馬車の上で退屈だったんだろう。ダレンさんに教えてもらいながら天幕を張ったり焚火の準備をしたりと楽しそうだ。

 俺たちが野営が必要な護衛任務が初めてだと伝えると簡単に説明してくれた。


「夜は昼とは違って注意が必要だ。このあたりは魔物はいないが冒険者くずれの野盗はいる。だが大規模な野盗はすぐに討伐隊が組まれるから、いても数人単位の雑魚で、手口は寝ている間にこっそり荷物を持ち逃げするようなセコイ連中だ。しっかり見張って気付けさえすれば逃げていく」


 なるほど、王都の近くで危険な存在は基本討伐されるから雑魚しかいないと。それ以外にも俺たちが初心者と分かった二人は、色々なことを教えてくれ結構勉強になった。


「お前、随分と遅い冒険者登録だな、そのネーチャンと浮気して家を追い出されたとかか?」


 あははははは、ってアマンダ……そういう冗談好きみたいね。

 どうやら30歳で初心者冒険者ってのは珍しいらしい。とりあえずそんなのではないと誤解は解いた。

 夕食を済ませ、見張り順を決めると就寝だ。野営は宿で寝るほどゆっくり休めない、その分早く休む長く休むがコツらしい。早い時間と明るくなる時間は比較的安全だからと、最初が俺、次がダレンさん、そしてドルトンさん、アマンダという順番に決まる。

 俺の見張り時間が終わり、天幕の下に敷かれたシートの上で横になる。俺はもともと寝つきが良い方ではなかったが、今は違う。スキルを利用して快眠だ。


( 眠気 10 持続時間 30秒 )


 こう使えば、究極の睡眠導入剤だ。30秒もあればしっかり寝付くし副作用も無し。しかも30秒経過後は普通の睡眠だから、何か物音でもすれば普通に目を覚ませる。便利だ! 俺のスキル……スヤスヤ




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「おい! 止まれ! もうバレてるぞ、立ち去れ! 起きろ! 賊だ!」


 俺はドルトンさんの大声に目を覚ました。






狭い行動範囲だった物語がやっと外の世界へ進みました。

評価、ブックマーク、ありがとうございます。

応援の気持ちだと受け取ってます。

今後も楽しみながら頑張っていきます。

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