野宿
不毛の土地に、たどり着いたサラとエリザベート
そこへサラの同僚だった二人の聖女がやってきて、一緒に住むことに。
新たな、そして復活のための再出発なのだ。
エリザベートと馬車に揺られること二日。
ようやくヴェルリナと呼ばれる土地が見えてきた。
貧弱な集落があるようだが・・・
「あそこがヴェルリナですよ」
「ホント何もないのね。集落があるようだけど、それ以外ないのね」
後見えるのは荒涼とした風景のみ、右手のこんもりとした森は
「あれが魔族の土地だそうですよ。あまり近寄らない方が良いですね」
「そうね。でもあれだけ近いと接触しないわけにはいかないな」
左手から前方にかけても、草一本生えていない荒れた土地が見えるだけ。
小川の手前にある大きな樹の下に馬車を止め、
「サラさま、今夜はこの馬車で泊まりましょう」
「そうね、それしかないわね」
夜もどこかで魔物と思われる吠える声などが遠くに聞こえる。
翌日
さわやかな朝を迎えた二人のもとに、
いつの間にかミレイユ、マージョリーの二人がやって来た。
「二人ともどうしたの?」
「サラさま・・・」と言うなり二人はサラに抱き着き泣きじゃくる。
二人の話を聞くと
サラが追放になった後、ミレイユ、マージョリーは聖女の資格を剥奪され
ほぼ奴隷としてジュリエット国王夫人のもとで強制的に働かされていたという
「それは毎日地獄のようでした」
「食事も満足に与えられず、朝から晩までこき使われました」
「一人づつでは感づかれるので二人同時に、王宮を抜け出したのです」
「追手は途中まで追いかけてきましたけど、諦めたようです」
マージョリーが来たのは朗報かもしれなかった。
「あなたは確か生成スキルを持ってたよね?」
「はい、何でも作れます!あっ!」
「そう、そのスキルを存分にここで生かして欲しいのよ。どう?」
「やります!サラさまのお役に立てるなら!」
「ミレイユ、あなたは私と一緒に家づくりと農作業をしましょう」
「わかりました。エリザベートさまは?」
「私も一緒にやります。魔物が襲ってくることもありますから」
マージョリーはその生成スキルで、生活に必要なものを作っていった。
「そうそう馬にも餌をやらないとね」
「サラさま。この近くに草原がありました。そこに放牧しては?」
「そうなの?じゃあミレイユ、そこへ連れて行ってあげて」
「はい」
ミレイユは馬の手綱をもって、近くの草原へ連れて行った。
馬は美味しそうに草原の草を食べている。
夜
「4人じゃあ、狭いよね」
「でもサラさまといっしょなら文句は有りません」
とミレイユは言うけれど狭いことは狭い。
「家を建てるしかないかな。この小川のそばなら水も確保できるし」
「そうですね、でも資材をどうしますか?」
「うーん・・・」
「悩んでも仕方ないし、明日また考えよう」
狭い馬車の中でサラは
このままではいけない・・・
フィリップお兄さまは、何故あんなに奥さまの機嫌を取るようになったのだろう?
もう国王陛下と呼ばれる人なのに、なんで私を排除してまで奥さまの・・・
そう考えても、もはや致し方ないんだよなぁ。
この場所を住みやすくしていくしかないのかな。
エリザベートやミレイユ、マージョリーの寝顔を見ながら
サラは思わず涙ぐんでしまった。
だめ。こんなことで泣いては・・・
いつかは王都へ戻って、お兄さまに一言言いたいよ。
なんで私はこんな目に遭うのか?
奥さまは何故私を目の敵にするのか?
でも考えないようにしよう。
過去に囚われてはいけないんだ・・・
まんじりともしないまま夜が明けた。
翌日も、また次の日も草原に馬を放牧させて、その近くの何もないところに
「ここを農園にしましょう!」
「でも、このあたりの土地はあの森にすむ魔族が瘴気を流しているから
どんな丈夫な作物も育たないと言う事ですが」
「そこでミレイユの出番よ」
「私ですか?」
「そう」
ミレイユには地中の気の流れを読み取り、悪い流れがあればそれを聖女の力で
良い流れに変える事が出来る能力があるのだという。変換スキルをもつミレイユ。
「そうでしたね。私、変換スキル持ってました。ではやってみましょう」
彼女はそういうと、手を地面にあて、何やら詠唱し始めた
「地の流れよ、正しく、美しい流れに!チェンジ!」
「これでいい流れになると思いますよ」
出来上がった畑に、きゅうりやトマト、ナスやキャベツなど植えていく。
「なんでこんなに持ってきたの?」
種を持ってきたのはマージョリーだ。
「何か作物を作らないと飢えるから、逃げてくる途中の農家でもらいました」
でもすぐ収穫できるわけでは?ないと皆が思っていたが・・・
サラが種を植えた畑に向かって、何やら詠唱しながら手を動かしている。
「じゃあ、明日の朝をたのしみにね」と言ってサラは馬車に戻った。
次の朝、皆が驚く状況が生まれていた。