第四十一話 お前のことをもっと知りたいんだ
「……おいお前、起きてるだろ」
「…………バレた?」
レーヴァは俺の太ももの上で反転してこちらを向くと、チロっと舌を出しておどけてみせた。
「まぁ、それはそれとして聞きたいんだけど、これってどういう状況?」
「アイツ……【彷徨う赤き鎧】を討伐した後、お前が再生を始めて……それでせっかくだからと思って、料理作ってお前の目覚めを待ってたんだよ」
「いや、その辺の経緯はなんとなーく状況見れば分かるんだけど……私が聞きたいのは「この膝枕は何?」ってコト」
「あー……」
俺はコホンと一つ咳払いをして居住まいを正す。
ここからの選択肢は重要だ。
剣状態の〈レーヴァ〉は攻略には必須。
彼女を手放すわけにはいかないのだ。
「いや、その、まー……直接地面に頭乗せて寝るってのは、しんどそうだなと思って」
「げぇ……」
「「げぇ」ってなんだ「げぇ」って」
「そんなに優しいのモルドらしくなーい! ねぇ、あなた本当にモルド? 頭大丈夫?」
「うるせー……お前が苦しそうにしてたから気を遣ってやったんじゃねぇか」
「苦しそうに?」
「? ああ、悪い夢でも見てたんだろ?」
「んー……どうだろ。でも、起きる直前に見てた夢は良い夢だったわよ? あ、もしかしたらモルドが膝枕してくれたかしらね?」
そう言ってカラカラ笑うレーヴァは、純粋な子供のようだ。
銀色の髪がふわりと舞い、頬が薄っすらと染まっている。
世界で二番目に可愛いと、そう思えるほどだ。
「…………」
だからこそ、俺の心はジクジクとナイフで刺されたように痛かった。
俺は、彼女を利用しようとしているだけなのだから。
「なぁ、レーヴァ」
「なぁに、モルド」
見上げてくる深紅の視線に、できるだけ紳士な視線で応える。
「俺さ……さっきの戦いでお前の首が跳んだとき、すげぇ後悔したんだ。俺に宿っている回復できる呪いのこと、ちゃんと教えてなかったからさ。お前は、俺を助けるために飛び込んできてくれたってのに……俺は、お前のことを信用しきれてなかったんだ。そして、そのせいで、お前を傷つけちまった」
キョトンとした顔になるレーヴァ。
俺は愛想の良さそうな表情を浮かべて続けた。
「だから、お前のことをもっと知りたいんだ。これから生死を共にする……その……仲間として」
「なかま……」
えへへ、と笑って。
レーヴァは何度も口の中で「なかま……なかま……」と繰り返す。
俺は苦笑しながら奥歯を噛み締めた。
よくもまぁ、こんな純粋無垢な相手につらつらと嘘を吐けたものだ。
人でなしだけでなく、詐欺師の才能もあったかもしれない。
俺が笑みの表情を崩さないようにと努力していると、レーヴァは顔の前で手を絡み合わせた。
「ふふふ、モルドは私のことが知りたいのね?」
「あ、ああ」
「分かったわ! 私のコト、一から全部教えてあげる! じゃあ、まずは名前から改めて――」
言って、その場でくるっと一回転するレーヴァ。
今度は背中の後ろで指を絡ませて、こちらを妖艶な瞳で覗き込みながら――
「私の名前はレーヴァ……レーヴァティン・フォン・アウレンベルク。冥界の地獄領ゲヘナ出身の悪魔で、その中でも『魔武器』っていう武器に変身できる変角種っていう希少種ね。あ、ちなみにこのSSSランクダンジョンのあの部屋に居たのは、実家の政争に巻き込まれて実の兄に誘拐されかけた挙句、実家秘蔵の転移魔法陣で逃げ込んできたからよ」
「ああ……あぁっ?」
想像以上の情報の暴力に、俺は殴り殺された。
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