第三十九話 膝枕(レーヴァ視点)
『……こうして勇者は世界に平和をもたらしました。……はい、これでおしまいね』
『ねぇねぇお母様、もう一回! もう一回だけ読んで!』
『ふふふ、レーヴァは本当にこのお話が好きね。■■なのに……一体誰に似たのかしら』
『だってだって、勇者ってすっごくかっこいいんだもん! それに■■と仲良くした人間だっていたんでしょ?』
『……レーヴァは、ここから出たいの? やっぱり、家の中はイヤ?』
『うーん、不満なわけじゃないよ。お母様も、お父様も、兄様だって優しいし。……でも、ずーーっと家の中にいるのは、やっぱりちょっと退屈かも。私、もっともっと広い世界を見てみたい』
『……そう、でも……』
『……分かってる。過ぎた夢だってことはちゃんと分かってるから。お母様に迷惑がかかることはしないよ。だって私……お母様のこと、大好きだから!』
『…………そう……ごめん、ごめんね…………ありがとう、レーヴァ』
『えへへ』
泣きながら私を撫でる母。
バチバチと炎が燃える、家の暖炉の前。
ソファーの上に寝そべり、母の柔らかな太腿に顔を埋ませる。
これは記憶だ。
私の……幼かった頃の、温かな記憶。
柔らかな母の肌に包まれて。
私は、こんな温かな日々がずっと続けばいいと思っていた。
これ以上のことは望まないからと。
――あんなことに、なる前は。
――――――――――――――――――――
ばちばち、ばちばちばちばち。
炎が燃える音で、私――レーヴァは目を覚ました。
ぼんやりした視界が明るくなるにつれ、ここが階層主の棲む広間であることを認知する。
そして、これまでのことを思い出す。
あの――騎士のようなモンスターに首を斬られて、それで……
(ああ、再生したのね。まぁ、■■の体だったら当然よね……でも、こうして暖をとっているということは……)
と、そこまで考えをめぐらして、気付く。
(温かい……そして、弾力がある?)
頭の上に感じるこれは……
気になり、体を反転してうつ伏せになってみる。
がっちりしているが、顔を埋めると反発を感じて気持ちいい。
つんつん、つんつんつんつん。
ぐりぐり、ぐりぐりぐりぐり。
指先で突っつき、顔をぐりぐりとさせる。
仕上げにすぅぅっと匂いを嗅いでみると……ふむふむ、中々香ばしい。
これは一ヶ月近くまともに風呂に入らなかった成人男性の…………
「……おいお前、起きてるだろ」
「…………バレた?」
私はチロっと舌を出す。
見上げると、心底嫌そうな顔をした彼がいた。
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