第十五話 一方その頃、追放者たちは③(シャリオ視点)
「がぁぁぁぁああああああああああああああああああっっ!?」
巨大な岩の腕に吹き飛ばされ、僕は思わず絶叫を上げた。
ここは迷宮中層、第四十層のフロア。
優秀な後方攻撃職であるレイラがいないこともあり、相当余裕を持って冒険せねばならぬということで、ここに転移してきたのだ。
新メンバーを加えて腕試し……その程度に考えていたはずなのに。
「くそぉぉぉっ! せ、聖剣よ――」
手に持つ聖剣に、黄金色の光が結集する。
僕は【聖剣の加護】を最大限に引き出した一刀を放った。
しかし――、
「なぜだぁっ!? なぜ、なぜ、なぜ……っ!」
相対しているのはたった一体のゴーレム。
かつてはものの数分で倒してきた魔物だった。
だのに!
「なぜ、まったく歯が立たない!?」
『グォォォォオオオオオオオオ!!』
ゴーレムが唸りを上げ、腕を振り下ろしてくる。
すると、サッとクロエが僕の前に立ち、杖を構えた。
「シャリオ、今日は調子が悪いみたいね。仕方がないわ! いくわよ~っ《切り裂け水刃》!」
クロエの短い詠唱によって水系中級魔術・【ウォーターエッジ】が発動する。
圧縮された水の刃が岩の巨人に襲い掛かる。
弱点を突いた、Aランクの魔術師の攻撃呪文。
普通であれば、大ダメージを与えることができるはずだが……。
『グォ?』
「嘘っ、な、なんで……っ!?」
ゴーレムはビクともしていないようだった。
焼石に水がかかったように、気にも留めずに腕を振りかぶってくる。
「ぬぉぉぉおおおっ! 俺に、任せろぉぉぉおおお!!」
――と、呆然としていた僕とクロエの前に、エドガーが飛び込んできた。
(こいつの防御力ならっ!)
僕はニヤリと笑う。
エドガーは左手に持つ巨大な盾を構え、大剣をそれに被せるように斜めに構えた。
盾と大剣が淡く光る。【鋼鉄の加護】が正しく作用している証だ。
これまで何度もパーティーの窮地を救ってきた完璧なる盾は、しかし次の瞬間には吹き飛ばされていた。
「「「ぐぁぁぁぁぁああああああああっっっ!」」」
三人まとめて吹き飛ばされる。
そこにシャーリーが慌てて駆けつけてきた。
「み、皆さん大丈夫ですか!? 《安らぎ癒せ》!」
暖かな光が僕たちを包み、傷を癒していく。
と、シャーリーの後ろでキッドがぶつぶつと呟いた。
「これはひどい……連携もなにもあったものじゃない……これ、本来の実力はBランクにも届いていないんじゃ……」
「なんだとっ!」
僕は思わず憤慨した。
「ポーターごときが僕たちを愚弄したのか! 訂正したまえ今すぐに!」
「そうよそうよっ! アンタごときに何が分かるってのよ! 無能のくせに!」
「そうだぞっ、いい加減にしないとマイケルとアンドリューも黙ってないぞこの根暗め!」
言って、ブンブンと腕を振り回すエドガー。
キッドは慌てた。
「馬鹿野郎! 今はそんなことで言い合ってる場合じゃねぇだろ!」
「――は?」
キッドの口調が変わったのにも驚いたそのとき――、衝撃が僕らを襲った。
「「「うぁぁぁああああああああっ!」」」
「ちぃぃっ!」
吹き飛ばされる僕たち三人。
キッドはシャーリーの手を引き、大きく後ろに後退したようだった。
数瞬後、再びシャーリーの回復魔術が発動する。
「くそっ、くそっ、くそっ、くそっ!」
こんな現実は認められない!
身体が回復次第、僕は再び攻撃しようと構える。しかし――、
「さっきからなんでこんなに体が重いんだ! ふざけやがって……シャーリー! 君はちゃんと回復してるのか!」
「し、してますよ!」
「なあ……それってもしかして、迷宮の呪いのこと言ってんのか?」
迷宮の呪い。
それは、迷宮の深部に進めば進むほど僕たちの魂に作用して、体調の悪化など様々な害をもたらす存在だ。
「ああっ?」
だが、慣れ慣れしくなったキッドのその言葉に、僕は反発する。
「だったらその解除こそ回復術師の仕事だろう!? シャーリー、君はそんなこともできないのか!?」
「できるわけないでしょう!?」
「なっ!?」
突如切れたシャーリー。
キッドが説明を補足する。
「確かに呪いから体の異常を【ヒーリング】で回復させるのは術師の仕事だ。でも、中層までの深さの呪いを全て解除させるなんて、【聖女の加護】を持つティナさんぐらいしかできるわけないだろ」
「ぐ、ぐぬぬぬぬ~~~~っ!」
やはり、ティナが抜けた穴は大きかったということなのか!
だが……やはり認められない。
僕たちが、ゴーレムごときにやられるなんてことは!
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