第十六話 一方その頃、追放者たちは④(シャリオ視点)
「くそっ! キッド、君は指示を出せ! 僕たちは攻撃に専念する!」
「指揮行動は必要なかったんじゃないのか?」
「うるさい! 命令に従えっ! リーダーは僕だぞ!」
「へいへーい」
間の抜けたポーターの返事に腹が立つが、そんなことも言っていられない。
僕とエドガーは剣を構え、クロエは杖を構えた。
「奴は腕を後ろに構えている。おそらくは先ほどと同じ振りかぶりだ! シャリオとエドガー二人でこれを防ぎ、クロエが続けて攻撃魔術。その魔術が炸裂した地点に二人は攻撃をしかけろ!」
「なにっ!?」
僕は思わず叫んでいた。
「なんだそのふざけた指示は!? 何秒後にどの方向から攻撃が来るか、敵の弱点はどこなのか、どのタイミングでどこに移動してどのように攻撃をしかけるのか、もっと具体的な指示をしろそんなこともできないのか!!!?」
「できるわけないだろ!? そんなことできるのはモルドさんくらいだ! 凡人の俺と超人を一緒にするなよ!?」
「「「!?」」」
キッドは我慢できず、ブチ切れたといった様子だった。
僕たちが呆気に取られたのも束の間、衝撃が再び僕たちを襲った。
『グォォォオオオオオオオオオオッ!』
「「「うぁぁぁああああああああっ!」」」
結局、僕とエドガーでは攻撃を防ぎきれず、三人とも吹き飛ばされる。
迷宮の壁に叩きつけられる僕たち。
「ぐ……あああああああっ!?」
剣を持っていた右腕がブラブラとぶら下がる。
これは……骨折、なのか? 分からない、今まで怪我なんてしたことなかったから分からない。痛い痛い痛い腕が痛い!
そこに、攻撃を避けたであろうキッドとシャーリーが近づいてくる。
シャーリーが回復しようと杖を構え、キッドはどういうわけかそれを制した。
「なあ、この際聞くけどよ。モルドさんを迷宮に放置して追放したって噂、あれ、本当なのか? 教えてくれよ。ああ、本当のことを教えてくれよ。彼女は嘘を見抜く加護を持ってるんだ。嘘をついたら回復はしない」
「う、うぎぎぎぎぎぎ……!」
僕は痛みを堪え、返答するのをやめていた。
しかし――、
「し、したわよ! 下層の入り口六十層にね! 縄で縛ってアイテムも全部奪って放置してやったわ! ね、ね、ねぇこれでいいでしょう!? 回復してよ!」
「う、うむっ、ついでに動けなくなるまでボコボコにしてやったわ! だから回復しろシャーリィィーーー!!」
「な……クロエ、エドガー……君たちは馬鹿なのか!?」
二人の証言と、僕の様子を見て、スッと目を細めるキッド。
「嘘を見抜ける加護なんて嘘だったんだが……こいつら、ついに白状しやがった……本当にやりやがったんだ!!」
キッドは懐からナイフを取り出した。
あれで僕たちを刺しでもするつもりか!?
普段ならどうとでもないが、今は腕も振れない状況だ。
このままじゃ死ぬ――、
「キッド、やめなさい。私たちの仕事はここまでよ」
「だけど、だけどよっ!」
「気持ちは分かるけど、撤退するわよ」
言って、二人は転移結晶を使って消えてしまった。
クロエとエドガーが叫ぶ。
「あのクソ女っ! 嘘吐きやがった! 回復しろよビッチ!」
「ああああああっ! 万全の状態だったら顔面がぐちゃぐちゃになるまで殴ってやるというのに!」
だが、叫んでいる暇はなかった。
『グォォォオオオオオッ!』
再び襲い掛かるゴーレムの巨椀。
「「「うぁぁぁああああああああっ!」」」
僕たちは吹き飛ばされ、さらにボロボロになって迷宮から撤退するのだった……。
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