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また、バンド時代の夢を見てしまう。
楽しかった思い出。
古い機材車ハイエースで巡った全国ツアーだ。
ライブ後の打ちあげはいつも馬鹿みたいに盛りあがり、メンバー間の仲は良好だった。
あるときまでは。
「…………」
目覚めれば、毎度のこと夢と現実の差に眩暈がして、思わずまた布団を被る。
だが、次の瞬間にはその布団を押しのけ、身体を起こした。こないだみたいに二度寝して、遅刻の危機に遭いたくはない。
ベッドに座る響の視界に飛びこんでくるのは、実家に戻ってくるとき持ってきた機材一式。
けれど。
実はギターにも、アンプにも、この一ヶ月ずっと触れていない。
コードを押さえる指先に固いタコができてしまうのがミュージシャンの宿命だが、響の指はすっかり柔らかくなっている。
この先も音楽活動をしたいのか、したくないのか。自分でもよくわからない。
(それくらい大事だったんだ。俺にとってアルビレオは……)
解散して一ヶ月半が経つのに、まだ少しもショックが癒えていない。
それに気づき、響は苦笑した。
アルビレオは高校生のときからやってきたバンドだ。
響の二十一年の人生のなかでもっとも情熱を傾けた、真剣に取り組んだ結晶。
それなのに壊れた。
くだらない理由で。
このメンバーならメジャーに行けると確信していた。
ヴィジュアル系と呼ばれるジャンルに属してはいるが、外見だけでなく、楽曲の良さから確実にファンを増やしてきていた矢先だったのに。
ヘアメイクのスタッフだった女性を巡り、メンバー同士で取りあい。
三角関係になり、泥沼恋愛沙汰になり、アルビレオを巡る人間関係は修復不可能なまでにこじれてしまった末の解散。
表向きには「音楽性の違い」を理由にしたが、真実はばれているらしい。
インターネット上では、女関係が原因だと見事に噂されてしまっている。
メンバーに絶望し、壊れてゆくバンドをどうすることもできなかったおのれに憤りを感じ。
ファンの女の子たちをはじめ、これまで応援してくれた人々に対しても申し訳なくてたまらない。
響はボロボロに傷ついた。
解散ライブから数日間のことは、ほとんど記憶にないくらいだ。
浴びるように酒を飲み、さまよい歩いていたような気がする。
放心状態になった響がとった行動が——実家に戻ってきた、ということ。
きっと癒しを求めていたのだと思う。
実際、癒された。
母親も、ほとんど初対面だった義父も温かく迎えいれてくれた。
新しいバイトにもすんなりと馴染めた。
(この先、どーすっかな、俺は)
響はベッドから立ち、寝癖のついた白金色の髪を掻く。
窓の外は快晴だった。




