表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/22

第十四話 水 着 回

―――暑い…いや、熱いよ……。

ジュージュワワァァーと、熱された鉄板の上で肉と野菜が舞い踊る。そこへソースをかけ、さらに炒める……。ソースの香りが食欲をそそる頃合いで、手を止めた。

「……よし、こんなものかな?」

 焼きそばを紙皿にのせると、ビーチパラソルで優雅に寝転んでいるアオの元へと持って行く。

「アオ、出来たよ」

「優斗……たこ焼きも食べたい……」

「たこ焼き?う~ん、材料はあるけど、作ったことないよ……とりあえず食べて」

「……うん……あーん」

 アオの口元へ焼きそばを近づけると、モグモグと両頬を膨らまして食べた。

「どう?美味しい?」

「……美味」

 遠くでキャッホーイ!と大声を上げ、クロとモモが遊んでいる。アオの隣にはミドリが大人しく座っていて、もう一つのパラソルの奥の方で、オペ子とキイは何か喋っているようだ。

 ―――そう、ここは無人島のビーチ海岸。

何故こんな事になったのか……それはクロのくだらない提案から始まる。

今からさかのぼる事、3時間前―――

「DM軍よ、よく聞けえ! ワシらはこれより、海水浴へ向かう事にする!」

「クロ司令、どういうことですか?今からですか?」

「オペ子よ! よくぞ聞いてくれた! 水着回、水着回じゃ! アニメでは水着回は鉄板じゃけえの! ワシらもそのビッグウェーブに乗っかろうぞ!」

「……一人で行ってください。私は敵の分析などで忙しいので」

「ダメじゃダメじゃ! 全員で行くぞ! 水着回のないアニメなんぞ、ゴミじゃ! クズじゃ! カレーライスのカレーのないライスのようなものじゃ!」

「司令! 全世界の水着回の無い、アニメや漫画に謝罪してください!」

「ええから行くぞ! 準備せえ! キイ、途中で優斗とミドリを回収せよ!」

「御意」

 ―――と言うわけで、僕たちは登校途中に襲われ、ヘリでビーチへと到着した。

……たこ焼きか。挑戦してみるかな? プレートもあるし。その前に焼きそばをみんなに食べてもらおう。

「ミドリ、焼きそばだよ? 食べる?」

〈……た……べる……ザー〉

 焼きそばを口元へ差し出すと、ミドリはパクンと紙皿ごと食べた。

「どう?美味しい?」

〈ザー……うま……う……ま〉

 食べさせ終えると、オペ子とキイのパラソルへ行く。

「……だなオペ子、新型兵器の開発状況はどうだ?」

「ええ、バンダイには要望は送ってるのですが、現代の科学では無理な所もあるようです。うちの技術開発班からも……」

「ねえ、キイ、オペ子。焼きそば作ったんだ。食べない?」

「片山優斗か。邪魔をするな」

「優斗さん、ありがとうございます。頂きますね」

 オペ子は焼きそばを手に取り食べ始める。

「美味しい!キイさんも食べましょうよ!美味しいですよ?」

「……毒など盛ってないだろうな?」

「そんなの盛ってないよ!」

 僕の焼きそばは、意外と好評みたいで、余る事なく完食となった。

「ぷひゃー! 遊んだのう! 遊んだのう! モモ! 少し休憩するけえ!」

「はわわ~疲れたヨ~」

 浮き輪とシュノーケルをひっさげたクロと、ピンクの水着を着たモモが、パラソルへと戻ってくる。

「ぬ?なんじゃ?この匂いは?」

「クロ、焼きそばを作ったんだ。次はたこ焼きに挑戦するから食べてよ」

「ふ、ふ、ふじゃけんじゃぁあー! 優斗よ!焼きそばじゃと? 焼きそば作るならお好み焼き作れや!」

「……作り方わかんないよ」

「ワシのカアチャン直伝! 広島のお好み焼きじゃけえ! 見とれや!」

 ……クロは頭にタオルを巻いて、お好み焼きを作り始める。

僕も負けじと初めてのたこ焼きを作る事にする。

ええと、生地って小麦粉だっけ? 薄力粉だっけ……?

携帯で作り方を探し、不器用な手付きで何度か失敗しながら、なんとか完成した。

……少し形が変だけど……美味しいかな?

軽くソースをかけて試食してみる。外はパリパリで中はしっとり、口の中でタコの歯ごたえがとても美味しい。

「出来た……たこ焼き完成!」

「ワシも出来たぞ!肉玉そばW!トッピングにイカ天とエビ、チーズを添えて…じゃ!グハハハハ!見よ! この素晴らしき料理を! グルメの雄山もビックリじゃけえ!」

「へー、これが広島風お好み焼きかあ。美味しそうだね」

「優斗よ、勘違いするでない、〝広島風〟ではない、〝広島の〟じゃけえ。覚えとけ!」

 どうでもいいし、どっちでもいい……。ともかく、みんなに食べてもらおう。

「みなの者! 集合せよ! これから宴を始めるけえの!」

「あ……クロ、アオはこないと思うから、先にたこ焼きを持って行くよ?」

「ほうか、お好み焼きも持って行くがええ。それと、どっちが美味いか聞いとけ」

「……え? なんで?」

「そりゃ、グルメ対決は鉄板中の鉄板じゃろうが! 優斗が負けた場合、一週間ブンドドに付き合ってもらうけえの!」

 ……そんなの、いつもやってる事じゃないか。

「でさ、僕が勝ったら?」

「そうじゃのう……。モモと一緒にお風呂に入れる券と、ミドリと一日デート券を進呈しよう。無論、その日は有給じゃけえ、しっぽりと楽しむがええ!」

 なんだって? ミドリと一日デート? これは負けるわけにはいかない! ミドリとデートかあ……考えただけでもワクワクする!モモの券は使わないけどね。

「クロ!絶対に負けないよ! アオの所に行ってくる!」

 僕はたこ焼きとお好み焼きを持って、アオの居るパラソルへと向かった。

「ふはっ! ワシの実家は、広島で一番美味いと呼ばれておるお好み焼き屋じゃけえの。負ける理由などないわ!グハハハハ!」

 すぴー……すぴー……。アオ、寝てるし!

僕はアオの肩を軽く掴み、身体を揺する。気持ちよさそうに寝てるから、起こすのも気が引けるけど。

「アオ、アオ? 起きて。たこ焼き出来たよ?」

 たこ焼きに反応したらしい、パチリと目が開く。

「あ……あ~ん」

 僕はたこ焼きをアオの口へと運ぶ。少し食べたところで、

「……あふい……あふい」

 アオは注射を我慢している子供のように、涙目で訴える。

僕はたこ焼きを冷ますため、フーフーと息をかけた。

「アオ、ごめんね。これで大丈夫だと思うよ?」

 パクリとたこ焼きを食べたアオは「……美味……美味」と幸せそうに答え、たこ焼きをまた催促し、すべて食べてしまった。

……そうだ、クロのお好み焼きも食べるかな?

「アオ、お好み焼きがあるんだけど、食べる?」

「優斗……お腹いっぱい……オレンジ……」

「飲み物だね。持ってくるよ」

 お好み焼きはここに置いておこう。お腹が空いたから僕が食べてもいいよね。

ジュースを取りに行くと、たこ焼きとお好み焼きは全部無くなっていた。

「おお! 優斗か! どうじゃったかの? アオの感想は!」

「う、うん。とても美味しかったって言ってたよ?」

「ほうか! やはり広島のお好み焼きは世界一じゃのう! む、そうじゃ! 世界各、DM支部の主食にしてやろうかの?グハハハハ!」

「それで……勝負はどうなったの?」

「ワシの圧勝じゃあ!ぬははは!」

 クロは、満悦な笑みでふんぞり返る。

「……3対2でギリギリですよね? 私はたこ焼きの方が美味しかったんですけど?」

「オペ子! だまっとれや!」

 口論が長引きそうなので、早々とアオの元へとジュースを運んだ。

のんびりしているアオを見ながら、僕はクロのお好み焼きを一口食べた……美味しい! とても美味しい! あっという間に全部食べてしまった。

お好み焼き、美味しかった。僕はクロに一票入れよう……クロ、君の勝ちだよ。

―――DM軍は昼食を終えた頃。クロは目を輝かせ、遊びのお題を出してきた。

「アオとモモはイカロス砂浜バージョンを作れ! ワシと優斗は、VS剣道スイカ割り対決をする! 終了後、みんなでピンポン玉ビーチバレーで遊ぶぞ!」

 VS剣道スイカ割り対決ってなんだよ……。ピンポン玉?

「うむ、それではキイよ、スイカをここに設置せよ」

「御意」

 キイはスイカを砂浜へ置くと、どこかへ行ってしまった。

「それでは優斗よ、これを持て!」

 剣道の竹刀を持たされ、僕は途方に暮れる。

「ねえ、クロ。目隠しして、スイカを割るんじゃないの?」

「そんな無防備な事出来るわけなかろう!よいか、優斗よ。目隠しなんぞエロすぎじゃけえの! 堂々と騎士道精神に乗っ取り、スイカをどちらが速く割るか勝負じゃ! 一子相伝の奥義! この、幻影ソードを見よ!」

 ……たんなる竹刀じゃないか。よし、決めた。さっさと終わらせよう。

「よし! 一瞬が勝負じゃけえの! 構えよ!」

僕は竹刀を振り上げ「えいっ」とクロが構える前に、思い切り竹刀を振り下ろした。

パーンッと……スイカはあらぬ方向へ粉々に飛び散った。

「わっ!」

「ぬわあああぁ! ……ふう、み、見たか! 優斗よ! これが幻影ソードのなせる技じゃ!」

 はあ…びっくりした……。今、クロもびっくりしてたよね? まあ、いいか。

「クロの勝ちでいいよ。でも、これじゃスイカ食べれないじゃない」

 ―――後方80メートル。

「片山優斗め! フライングとは卑劣なヤツめ! 次こそは必ず仕留めてやる!」

 ケースにライフルを収めると、キイは草むらの中に消えた。

「クロ司令ー! お砂のイカロス作るの、手伝ってくださいヨー!」

「まだ完成しとらんかったんか! しゃーないの。ワシも手伝ってやるけえ!」

 クロは両手を突き上げ「よっしゃー!」と雄叫びを上げ、手を振るモモの元へと行ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ