第十三話 変 身 D M 軍
「優斗よ! ここまでよくやったの! あとはワシにまかせえや!」
「あなた誰ですか? ここは部外者立入り禁止です」
「オペ子、そのボケはもうええけえ。キイを呼び戻せ! ミドリも呼べ! DM軍を集結させよ!至急じゃ」
「……わかりましたよ」
オペ子は不満げな態度で、投げやりに言葉を返した。
「目標はイカちゃんと名付ける!グハハハハ、イカめしにして喰らってくれるわ!」
「クロ!どう見てもクラゲじゃないか!」
「今、最後にイカと言ったの? 語尾はゲソじゃ!覚えとけえ!」
イカはどうでもよかったけど、僕はクロの高圧的な態度にホッしていた。
「ミドリ、到着しました。キイさんは少し遅れます。技術開発から苦情が出てます」
「おこめの券でも送っておけ! 全員、校庭へ出るぞ! 優斗、おまえもこい!」
「うん、わかった……ミドリ、一緒にいこ?」
〈ゆっ……ザー……くり……いこ……〉
アオがソファでぐっすりと寝ていて、起こすのに時間が掛かってしまった。
校庭へ出ると、クラゲは遥か上空に停滞していた。
「ふん!イカちゃんめ!寿司のネタにしてくれるわ!」
「クロ様、遅れました」
「おお、キイよ!これを全員に渡すんじゃ!」
「これは……?」
「ミラクル変身リコーダーDXじゃ。こんな事もあろうかと、バンダイに発注しておった変身グッズじゃ! 量産してDM軍の資金源にしようと思っての!」
ただのオモチャじゃないか……僕らが大変な時にオモチャで現実逃避してたくせに!
「優斗よ、なんじゃ?その反抗期満々な目は? よかろう! 括目せよ! 変身じゃあ!!」
ピロロ~ロロ、ピロロロローと、クロはどこかで聞いたような音を奏でる。
クロは浮き上がり、全身光に包まれ、みるみる姿を変えていく。
「ブンドド大好き! オモチャはバンダイ! ダークブラック!!」
――……えぇえええ!! ホントに変身した―――!?
クロはグッとこぶしを突き上げ、決めポーズを終えると、
「ふん、まあまあじゃの。これなら幼女たちにも人気が出そうじゃの」
クロの髪はもさっと増え、あちこちリボンが結んである。体は黒いゴスロリ風……というか、日曜朝にやってるアニメの衣装にそっくりだ。
「ね、ねえ、服が今朝見たアニメと同じのような気がするんだけど」
「優斗よ! 前にも言ったじゃろ! パクりパクられ振り振られじゃ! よし、DM軍、全員変身せよ!」
ピロロ~ロロ、ピロロロローとDM軍はリコーダーを奏で、光に包まれる。
「片山優斗! お前を必ず殺す! ダークイエロー!!」
「みんなのアイドル! 脳内お花畑! ダークピンク!!」
「……めんどい……ダークブルー」
〈ゆっ…ザー…ゆっ……ダー……グリ……ガー〉
全員とても可愛く、お人形のような風貌で僕は見とれてしまった。ただし、ミドリに変化はない。僕的にはそのままで問題ないけど。
「クロ司令~なんで私がお花畑なんですカ~!」
「変身すると勝手に言葉を発するんじゃ。ダークピンクよ。あまり気にせんでええけえ。イメージじゃ!イメージじゃけえ!」
自信満々に、クロは何の根拠もない説得をする。
「優斗よ! 日曜朝放送しておる、変身少女との違いを見せてやろう! 奴らのスカート内は鉄壁防御されておる! 違いはこれじゃああ―――!!」
クロは、いきなりスカートをめくり上げ、パンツが見えた……。
「なに……やってんだよ!問題はそこかよ!」
「そうじゃ……問題はそこじゃ!ワシらはありのままを受け入れ、モロパン仕様にしてみた。素晴らしいじゃろう! 豚もブヒヒじゃ! ホレホレ!」
クロはDM軍のスカートを次々とめくり上げる。
「なるほど……ブルーは縞パンか! ピンクは桃玉かの! ひゃひゃひゃ!」
……見えてしまった……本当になにやってんだ……!
「な……なんじゃと! この尻のプリントは……やってくれおるわっ! バンダイめ!全員キャラパンとは……!タイアップのつもりかっ!」
歯を食いしばり、悔しがるクロ。そろそろ止めないと敵が襲ってくるかもしれない。
「ねえ、いい加減にしようよ、クロ……」
「こん、ばかたれが!!」
ポカーンとリコーダーで叩かれる。めちゃくちゃ痛い!
「ダークブラックと呼べい! 変身後はそう呼べ!」
……めんどくさいやつだな。あ、前からか……。
「痛いなーもうっ! ……ダークブラック? それで、変身した事で強くなったり、必殺技とかで敵を倒すの?」
「ん? 別に強うなったり、必殺技とかないけん。変身するだけなんよ」
クロは悪びれる事なく平気な顔で言った。……なにを言ってるんだこいつ!
「じゃあ、どうするのさ! あのクラゲ!」
「ばかもん! イカちゃんじゃろうが! ゲソにして喰らってやるわ!」
『クロ司令!! いい加減にしないとオモチャ処分しますよ!!』
グラウンドにオペ子の大音声がこだまする。すると、司令部の窓が開き、オモチャを掴んだ手が出される。
「な、なんと……!ワシが作った、144分の1スケール、アウトグラム!や、やめてくれやー、ワシが悪かったけえ!許してくれえやー!!」
クロは地べたに這いながら涙し、オペ子に許しを請う。
『10分ごとに一体落とします! 早く敵を殲滅してください!!』
「あ、あやつ……オモチャテロリストか!なんたることじゃ……! 早くオモチャを救い出さねば!!」
「ダークブラック。イカちゃんを倒せばオモチャは解放されるから敵を倒せば……」
「む……そうじゃな!オモチャを解放する為、DM軍は死力を尽くしてイカちゃんを倒すけえの!……優斗よ!変身と言う言葉には、もう一つ意味がある! 知っとるかの?」
「え……? もう変身してるじゃないか」
「グハハハハ! 括目せよ! これが真の変身じゃあ!!」
リコーダーを高く掲げると、眩い光が辺りをつつむ。目を閉じた一瞬の出来事だった。
ズズーンと地響きが鳴り、ダークマター軍が……。
「優斗どうな?でっかくなったじゃろうが! 北海道はでっかいどう! 熊もおるよ?」
―――クロたちは巨人化した。でも……そんな事は些細な事だよ!
「クロー! なんで裸なのさー!!」
「グハハハハ! 服が一緒に大きくなるわけないけえの! しかも、しかもじゃ!! デリケートな部分は謎の光で隠されておるんじゃ! 素晴らしいバンダイの技術力! ……なお、この光はBDとDVDで消え……」
「クロー! 見えてるー! 下から色々見えてるってばー!!」
「な、なんと……! おのれ、バンダイめ……! 深夜のエロアニメをあれほど見習えと! まあ、まあよかろう。豚がブヒブヒ鳴いて、円盤買ってくれるかもしれんけえの!」
裸のダークマター軍はクロの前に集合する……その光景は非現実すぎて理解出来ない。
「クロ様、いかが致しましょう」
「わーん!恥ずかしいヨー」
「……疲れた……」
〈…ゆっ……ガー〉
「うむ、これよりオモチャ救出作戦を行う。その為にはイカちゃんを始末せねばならん。覚えておろう?ワシらが残業してまで得た物を!さっそく準備にかかれ!」
ズシン、ズシンとDM軍は、家や電線などお構いなく踏み潰しながら四方へと広がる。
クロ、何をするつもりだ? ……ああ、あんなに街を壊して。
「全員、位置に着いたかの? それでは、よーいドン! ……と言ったらスタートじゃぞ?」
クロはお決まりのジョークを言うとニヤリと笑う。みんな反応してないので、静かに見守る事にした。
「よし! DM軍、一撃必殺技を準備せよ! 位置について、よーい……ドンっ!!」
全員街中を駆けていく……。家や建物を縦横無尽になぎ倒しながら。巨大化してるからタチが悪い。
「DM軍!いくぞぉおおおおお! 下! 右下! 右! P!」
「えっ!もしかしてっ、ここで―――!?」
「「「シャオリュウケン―――!!!」」」
DM軍は、高く―――高く飛び上がり、拳を突き上げ飛んでいく。
イカちゃんはパッシャーン!と砕け散った。砕け散った破片は周辺に散らばり、空へと消えて行く―――。
ズシーン!と地響きが鳴り、砂煙が舞い上がると、DM軍は地上に降り立った。
クロは拳を挙げガッツポーズをし、
「大勝利じゃあああぁ! オモチャは守ったぞ!グハハハハ!!」
勝った……オモチャのためにって、クロらしいけど……。
「クロー!早く元の大きさに戻りなよー!」
「そうじゃの! よし、全員戻るけえの!」
DM軍が光に包まれると、小さく戻った……け…ど、
「ふー、なんかスースーするのう!」
「きゃー! 完全に裸ですヨー!」
「ワタシはどうとも思わないが」
「……疲れた……寝たい」
〈……ゆっ……ザー〉
「うわぁー! ちょ、ちょっとは隠してよ! ……オペ子聞こえる? DM軍の服を至急用意して! お願い!」
『優斗司令、了解しました。ミドリを除いて人数、分射出します』
こうして―――DM軍はイカちゃんの侵略を阻止した。
その後、一晩で街は修復され、それ以外は特に語る事なく平穏な日々が―――




