プロローグ.脱社畜からのコンカフェ開業へ!!
ボクはみぎゃー、ミドフォー(Middle Forty:40代中盤)の社畜だ。
元々男性ホルモンの分泌が少ないのか華奢な体つきで、
会社内で出世してやろうと言う野心も特に無い。
そんなボクの楽しみと言えば、夜や休日の女装配信だった。
特にお気に入りはあるハロウィンの夜にやってみた猫耳ミイラ娘だ。
猫耳を付けた茶髪ボブウイッグを被り、体の方は結構簡単で
裸にただ包帯をぐるぐると巻いただけだ。
もしかすると配信中に包帯がほどけて裸になっちゃうかも、
と言う緊張感が常に付きまとい、気を張った状態で臨む事になる。
視聴者からの評価も上々で、
「エロい」「もっと際どく」「身に付けた包帯売って」などと、
この年齢の男に対して向けられるにはそぐわないような言葉が並んだ。
「え~、どうしよっかな~、だけど匂いとか嗅がれちゃったら恥ずかしい」
などとのらりくらりとそれらの言葉をかわしながら楽しむ。
そんなボクの配信中の話題と言えばもっぱらオカルト関連だった。
元々は妖精や悪魔等のファンタジー存在好きが高じて、
世界の神話やUMA、妖怪、宇宙人等、その興味は多岐に渡った。
ボクの興味の矛先は結構シンプルで『実在したらワクワクするもの』
に対してセンサーが働いていた。
だってもし本当に宇宙人がいたらどんな言葉を話すのかとか、
妖怪だったら何千年生きているのかとか、興味が尽きない。
そうした架空の生き物達の話を毎夜毎休日、配信で楽しんでいた。
そんなある日、会社で人事異動が行われた。
そこでボクの部署にはたくさんの女性社員達が流れ込んで来た。
元々女性社員比率が多めの会社ではあったが、この異動は凄かった。
ボクの上司になる人達が皆女性になったのだった。
社畜ではあるもののポンコツ社員だったボクは連日連夜怒られた。
「男のクセにこんな事も出来ないの?」と罵られ、
股間のアレがキュッと縮まる思いになる事もあった。
凄く恥ずかしくて、体中がカァーっと熱くなった。
あぁコレってもしかしてマゾになりかけてるのかな、と思った。
そんな日々が続きストレスが溜まっていたボクは、
1人深夜に会社に居残っていた。
特に急ぎの仕事があったワケでは無いが、やりたい事があったのだ。
ボクはおもむろに持って来た紙袋からウイッグを取り出した。
そう、会社内で女装コスプレをして配信しようと思ったのだ。
基本的に深夜に社員が誰か突然訪れる事は無い。
それでも、もしもの時の事を考えるとボクは興奮した。
こんな裸同然で包帯だけを身に纏った恥ずかしい姿。
女の子っぽいメイクを施し、クネクネと可愛らしく動く。
こんな所をもし上司達に見られたら、絶対終わる。
だけどストレスがピークに達したボクは刺激を欲していた。
そして配信の画面を開いた。
「こんちゃ~、皆今日は何と、会社で女装コスプレしてます!」
すぐに『え、マジ!?』『ヤバくね?誰かもし戻って来たら…』
『会社の名前教えろ、今すぐに襲いに行くわ』などと返信がある。
「すぐに襲いに行く」だなんて、完全にメス扱いだ。
ボクは少し胸が高鳴り、いっそ会社名を教えてしまおうかと考えた。
(ダメだダメだ、さすがに本当に襲われちゃったら恥ずかし過ぎる。
あくまでリスナーさんとは配信だけの関係だ。)
だけど配信を続けるうちに話題はオカルトからちょっとエッチな方向へ、
コピー機でお尻を撮って欲しいと言われた。
「え~、だけどそんな事して、撮った紙誰か欲しいの~?」
『買取希望!高価買取します』『いっそ尻拓取って』
『しっかり開いて中まで見えるようにしろ』などの言葉が飛び交う。
こんな中年男に皆必死になって可愛いなぁ。
そう思いながらボク自身もノリに乗って来て、色々と応じ始める。
そして『配信規定上はちょっとマズいかもだけど、いっその事もう
1人で始めちゃえば?投げ銭弾むよ?』と書き込まれた。
1人で、始める?いや、意味はよくわかってる。
だけどそれはもう視聴者を増やす最終手段だ。
だけどこの日のボクはとことん大胆になっていた。
包帯を少しズラして、リスナーさん達を過剰に煽る。
「ねぇ~、皆ボクのえっちな所見たいの?
仕方ないなぁ~、今日だけだよ?
絶対に録画とかしたらダメなんだからね?」
そう言いながらボクは包帯をズラして陰部をイジり始める。
すぐにこの異様な状況への興奮から達しそうになる。
(ヤバ、ちょっとコレ耐えられそうに無いかも。
ナメてたな、気持ち良すぎる…)
そうして達しそうになった時、会社のドアが開いた。
━ガチャリ━
「え・・・?」
「え...みぎゃー、君…?何、やってるの?ソレ。」
文字通り、時が止まった。
女上司がこんな真夜中に会社に戻って来ている。何故?
「財布を忘れてしまったのよ。新幹線のチケットが入ってたから。
ねぇキミ、そんな趣味があったの?」
「ち、違うんです!本当に思い付きで、初めてで…。
あ、ああ、す、すぐに止めますから!」
焦って急いで服を脱ぐボクに上司は冷たく言い放った。
「コレは…、ちょっと明日会議モノね。」
終わった。ボクはこの日を最後に会社を退職する事にした。
~1週間後~
ボクは会社を退職する事になり、有給消化期間に入った。
そんな中で様々な思いを巡らせていた。
(あ~、次の仕事どうしようかな…。
また同じような事になったら嫌だな。
って言うかブラック企業を渡り歩くのも嫌だな。
いっそ自分の店でも持てたら自由に…。
だけど、経営って大変そうだなぁ。)
そんなボクの目に、とあるチラシが飛び込んで来た。
【当該地域の方限定!コンカフェ専用物件】
コンカフェ?最近流行っているテーマを決めたカフェだ。
メイドやアリス等、好きな世界観に浸れる夢のような空間。
しかしボクはそのどれにも少し物足りなさを感じていた。
(いや、でもアリスとか言ってもアリス風でしか無いしさ、
まぁそりゃそうなんだけどね、実際のアリスが居るわけじゃないし)
更にそのチラシにはある文言が書かれていた。
【※但し、告知事項アリ。オカルト許容出来る方のみ。】
何とも明らかにワケありっぽい書き方だ。
いや告知事項と言うからにはネガティブな内容なのだろうが、
ボクは逆に食指をそそられた。
(相場から見ると賃料は凄く安いし、オカルトは好きだ。
一度話だけでも聞きに行ってみるかぁ)
そうしてボクは連絡を取り、その物件を内見する事にした。
当日、プライバシーの保護と言う事でやって来た貸主は
全身を覆う長いコートにサングラス、帽子、マスク。
更には筆談で商談を進める徹底っぷりだった。
どうやらこの物件は様々な【招かれざる客】が訪れ、
その事によりどの店舗経営者達も1週間と続かずに
契約破棄してしまうのだと言う。
だけどそういうワケありならボクには打ってつけだ。
「あの、じゃあこの物件借ります。
ここにサインしたら良いんですかね。よろしくお願いしますね。」
話はトントン拍子で進み、ボクはこの物件を借り入れた。
招かれざる客…。一体どんな存在達がこの店に来るのだろう。
そこでボクはインスピレーションが閃いた。
(色んな招かれざる存在がやって来るなんて、
まるで異世界にあるコンカフェみたいだ...。
よし、店のコンセプトは異世界コンカフェにしよう。)
更に、ただ普通に店長するだけじゃ物足りない。
ボクは退職する理由となったあのセクシーなミイラ娘の格好で
店を取り仕切る事を考えた。
(こんなエッチな恰好で店長やるとか緊張するけど、
逆に見られる事が興奮するかも。どうせ自分の店なんだし、
好き放題やっても良いよね?)
こうしてボクは自由な発想の元、異世界コンカフェを開く事にした。
この時のボクはまだ何も知らなかった。
本当に様々な異世界存在達が集うコンカフェになり、
更には世界を裏から操るような者達からも目を付けられて
とんでも無い事に巻き込まれて行く事になる未来を。




