第五十七話 エンシェントドラゴンのアップデート!
勇者パーティーと管理者の襲撃から数日後——。
激しいシステム変動の余韻が残る中、ナタルのもとに突然、魔人ヴァルネが部屋へと足を踏み入れてきた。その艶やかな顔には、どこか冷ややかな笑みが張り付いている。
「ねえ、ナタル。少し耳寄りな(あるいは厄介な)情報が入ってきたけれど、聞いていく?」
ヴァルネは腕を組み、不敵な瞳を細めながら、管理者の動向について告げた。
「管理者がね、あなたへの直接裁定を諦めた代わりに……残りのエンシェントドラゴンの『アップデート』を始めたのよ」
「アップデート、だと?」
ナタルが低く問い返すと、ヴァルネは妖しく微笑みながらうなずいた。
「そう。ただの防犯カメラや巡回警備員だったあいつら(セキュリティコア)を、もっとエグい『戦闘仕様』に書き換えているわ。このままじゃ、龍たちはただの『アクティブモード』を超えて、あなたを完全消去するための『特化型デバッグ兵器』に生まれ変わってしまうわね」
——突然の来訪に、ナタルは眉をひそめてヴァルネを見据えた。
「管理者自らコードの書き換えだと?」
「そうよ。あなたが最初のエンシェントドラゴンを討伐して以来、奴らも危機感を抱いたみたいね」
ヴァルネは艶やかに微笑みながら、ナタルの部屋のソファに勝手に腰を下ろす。その指先では、微弱なエラーコードの光が蝶のように舞っていた。
「残りのエンシェントドラゴンたちは、ただ世界に君臨しているだけの『最強の怪物』から、あなたというバグを物理的に抹殺するための『特化型デバッグ兵器(アップデート版)』に強制換装されているわ。このまま放置すれば、それぞれの領域全体があなたを消去するための要塞兵器に生まれ変わるでしょうね」
「ふっ……。作り物の神話の頂点気取りが、今更仕様変更か」
ナタルは黒い手袋を嵌め直しながら、冷徹な笑みを浮かべた。その眼光には、怯えどころかさらなる「狩り」への狂気が宿っている。
「好都合だ。どうせ全員まとめて喰らい尽くすつもりだった。奴らが迎撃の準備を整える前に、こちらから次の領域へ踏み込んで叩き潰すまでよ」
ヴァルネは面白そうにクスクスと笑い、足を組み替えた。
「いい返事ね、ナタル。それじゃあ、アップデートが完了する前にあなたが狙うべき、次の『エンシェントドラゴン』が潜む領域のデータを見せてあげる……」




