第一話 荷物持ち
よくある追放ものです。実験的に色々やりたいとおもいます。
「オレたちはお前を連れていくために迷宮に挑んでるんじゃないんだよ、ナタル」
リーダーの勇者が吐き捨てた言葉が、冷たい石造りの洞窟に響く。
仲間たちのレベルはすでに40を超え、上位職のスキルを次々と習得していた。一方で、俺ナタルはレベル1。どれほど強大な魔物をともに倒そうが、どれほどの経験の泥を被ろうが、ステータス画面の数字は「1」から微動だにしない。
* ナタル(自分): レベル1 / 職業:荷物持ち / 獲得経験値:0
* パーティーの仲間たち: レベル40超 / 各種上位職 / 圧倒的成長
最初は「健気に荷物を運ぶ重宝な奴」だった。だが、階層が進むにつれて魔物の威圧感は増し、俺を守るための「無駄な手数」がパーティーの足を引っ張り始める。巨大な魔物の素材、大量のポーション、予備の武具……背中の荷物は重くなる一方なのに、俺の腕力も体力も、出会った日の弱小なままだった。
「引きずり回される荷物」から、「ただの足手まとい」へ。
仲間たちの視線から温度が消えるのに、そう時間はかからなかった。そして今日、深層へと続く大穴の前で、俺の背中から強引に革袋が引っぺがされた。
「ここで終わりだ。荷物は自分たちで分担する。……今まで重いものを運んでくれたことだけは感謝してやるよ」
冷酷な宣告とともに、俺は薄暗い洞窟の奥底へと突き飛ばされた。
「レベルが上がらない」という呪いのような体質。それがこの理不尽な追放の理由であり、俺の絶望のすべてだった。……だが、奴らが去り、静寂が訪れた闇の中で、俺の視界の端に誰も見たことのない不気味な赤色のウィンドウが浮かび上がる。
【条件達成:レベル上限(Lv.1)の完全固定を感知】
【封印スキル『概念吸収』が発動します】
レベルが上がらないのではない。俺の身体は最初から、経験値などという生ぬるい数値を超越した「世界の理そのものを奪う器」だったのだ。
俺を捨てて光の差す地上へ向かった奴らの背中を、闇の底から見つめる。
「足手まとい、か……。覚えてろよ」
背負う荷物を失った両手で、俺は静かに復讐の黒い炎を燃やし始めた。




