第2話
ラファの町の近くに山にある登山道。そこに意気揚々と山を登るアスタと、すっかり疲れ果てているアリスとマリーの姿があった。よくよく考えれば、以前はこういった行き来に苦労するような場所の実地調査はマーガレットに任せきりでアリス自身がこうやって汗水たらしてマジックアイテムのもとまで行くということはあまりなかった。そのため、いつの間にかずいぶんと体力が落ちてしまっているようだ。その一方でもともと貴族だったマリーもこういった状況には不慣れらしく、体力はあまりないように見える。
「ちょっちょっと……待ってください。少しだけ……休憩……」
そんなことを考えているさなかで、マリーは限界を感じたのか、か細い声で休憩をしたいと申し出る。それを受けて、アリスはやはりそう来たかと考える。そもそも、山を登り始めてからそれなりに時間が経つが、アスタは休憩を取るといった行動をしていない。本人は普段からそういったことをしていて平気なのかもしれないが、アリスもマリーもこういった状況には慣れていないので、アスタに比べて疲労がたまるのは自然なことだ。
「あぁそうか。すまないな。君たちのことを全く考えていなかったよ」
マリーの休憩をしたいという申し出に対して、アスタはこちらの事情についてあまり考えていなかったことを認めながらその場で立ち止まる。
「さて、ここから少しだけ上ったところに休憩するのにちょうどいいような岩場がある。そこでいったん休むとしよう」
そう言ってからアスタは再び登山を開始し、アリスとマリーもゆっくりながらそれに続いていった。
*
登山道の途中にある岩場。アスタ曰くこの山を登るにあたって多くの人が休憩所として利用しているというその場所は周りに比べると比較的平たくて、確かに休憩するにはもってこいの場所だ。
「はっはっはっそれにしても、ここから見る景色はいつ見ても美しいな」
アリスとマリーが息を切らしながら座り込んでいるのに対して、アスタは余裕そのもので岩場から見える町の風景を見て楽しんでいるようだ。
「……ところでアスタ博士。ここからマジックアイテムがある現場まではどのくらいあるんだ?」
アリスが質問すると、アスタは視線を岩場から見える風景からアリスに移して返答をする。
「うむ。そうだな……今いる地点だとまだ半分も行っていないな。私としては日が暮れるより前にマジックアイテムがある場所に到達したいからもう少しペースを上げたいところだが……」
アスタは息を切らしているマリーへと視線を送る。
「ふむ。アリス教授はともかくそこにいる助手は限界のように見えるな。いっそのこと、今日はここでキャンプをするか?」
その言葉に反応するような形でアリスもマリーへと視線を送る。
「……確かに私の助手のマリーは素手の限界のようだし、そうしてくれるとありがたい」
その会話の後、アスタは岩場から少し離れた平地に魔導書を使いながらテキパキと三人分のキャンプの準備を済ませる。
キャンプの準備が終了するなり、マリーは自らに割り当てられたテントに入り、そのまま入り口を閉めて、改めて休息を取り始める。その様子を見てアリスは小さく息を吐く。
「……まったく。私もマリーももう少し体力をつけた方がいいかもしれないな……」
今のところ、アリスはまったく動けないというほど体力を消耗してはいないのだが、それでも限界が近づいてきているのは確かだ。この場においていまだに余裕を保てているのはアスタぐらいだろう。
「いやーすまないすまない。普段はひとりで登るから君たちの消耗を考えていなかったよ」
当のアスタはそのようなことを言いながら笑顔を浮かべている。そんなアスタを見て、アリスは二度とこの人物とかかわってはいけないと心の中で誓うのであった。




