第1話
北部連邦ラファ共和国の首都ラファ。北部連邦東部の主要な観光都市として知られているこの町の玄関口となっているラファ駅のすぐ近く。アスタの研究所とされている建物の前にアリスとマリーの姿はあった。
「ここ……なんですよね? どう見ても普通の民家ですけれど……」
「あぁ確かにそうだが、依頼書に書いてあった住所はここだな」
そういった会話の後にアリスは民家……もとい、研究所の扉をノックする。すると、扉が開き白衣の女性が姿を現す。
「こんにちは。少々失礼する。私はフラン魔法大学校のアリスだ。ここはアスタ博士の研究所であっているか?」
アリスが尋ねると女性は笑顔で返答をする。
「もちろん。ここは私、アスタの研究所で間違いない。えっと、隣にいるのは助手か何かかな?」
そう言いながら、アスタはマリーの方へと視線を動かす。
「はい。アリス教授の助手をしておりますマリーです。よろしくお願いします」
「そうかそうか。わざわざ遠くから来てもらって申し訳ないな。早速だが、研究室へと案内するよ」
そう言って、アスタは家の中へと入って行き、アリスたちはそれについていく。そんな中で、アリスは内心ため息をつく。この依頼を受けたのは失敗だったかもしれないと……アスタ博士は自分の研究に自信があるのか、はたまた常識が足りないのか、遠くから来てもらった客人に対する敬意が足りないような気がしてならない。別にしっかりともてなせとは言わないが、もう少し下手に出てもいいのではないだろうか? いや、そもそもそんな事を考えるのは少し傲慢なのだろうか? そういったことはさておいて、事前に軽く調べた情報では少々変わり者だとは聞いていたが、ここまでとは思わなかった。というのが、アリスの考えだ。
そんなことを考えている間にもアスタの案内でアリスたちは廊下を進み、研究室と書かれた札が垂れ下がっている部屋へと案内される。
魔導書と思われるたくさんの本が収められている本棚と部屋の中心部に机が置いてあるその部屋の椅子にアリスたちは座る。
「それで? 依頼書に書いてあったマジックアイテムというのは?」
椅子に座るなり、アリスはいきなり本題に入る。本来なら、いろいろあいさつやらそれに伴う自己紹介やらが必要なのかもしれないが、今回の場合はそれは不要だと言えるだろう。
アリスの質問に対して、アスタは机の上に地図を広げて町の近くにある山の山腹にある赤い丸の地点を指さした。
「ここだ。マジックアイテム自体が少々大きくてな。ここまで持ってこれなかったから、発見場所に今も置いてあるよ」
その言葉を聞いて、アリスは深くため息をつく。やはり、この依頼を受けたのは失敗だったかもしれないと。手紙自体には大型のマジックアイテムとは書かれていたものの、持ち運べないレベルのモノであるとは書かれていなかった。それに地図を見る限り、当のマジックアイテムは山の中……町から近いとは言っても、いちいち町に戻っていては時間がかかってしまうので、山の中でアリスとマリー、アスタの三人でキャンプをすることになるだろう。ただでさえ、変わり者と言われているいるアスタだ。四六時中一緒にいるのは何とか避けたいところであったが、こうなって来るとマジックアイテムの解析が終わるまで三人で行動するということは避けられないだろう。
「しかし、キャンプをするとは聞いていないぞ。こちらとしては宿に泊まるつもりでそういった準備はしていないのだが……」
「それなら心配いらない。こちらで数名でキャンプできる程度の準備はしてある」
準備をしていないという理由で断ろうとしたのだが、どうやらそれに関してはアスタの方で準備ができているようだ。ということは、ここまで来てしまったからにはもうやるしかないだろう。
そこまで考えて、アリスは再び深くため息をついた。




