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魔法少女委員会2

「ただ今戻りました」


学校に辿り着いた私はベランダに降り立ち、そっとガラス扉を開けて中に入った。


空き教室の中央に丸く配置された五つの席は三つ埋まっていた。

お弁当を食べ終わり、紙パックのお茶を飲みながら手元の本に目を落としていた中島優子先輩は、目線だけ私の方に向けると


「おかえり。早かったな」


と声をかけてきた。そして先輩は右隣の席に無表情でお行儀よく座っている私そっくりの人形に、目線だけで合図を送った。


「おかえりなさい、お嬢様」


人形は立ち上がり、椅子の後ろに移動すると、両手を前に揃えて深々と私相手にお辞儀をする。私は人形が引いてくれた椅子に座る。


「先輩、自分と同じ姿の人形にこんなこと言われるのはちょっと……。それで何かあった?」


初めてこの人形のお世話になるが、確かに少し不気味だ。先輩の趣味は悪い。


「お昼休みすぐに教室に戻ったところ、智絵里様に体調の心配をされておりました。その後静香様が先生に呼ばれまして、周囲の話では宿題の丸写しが問題になったのではないかとの予測です。お嬢様がお戻りになるという連絡がマスターよりありましたので購買にてお昼を購入いたしました。本日のお昼はこちらのパンと牛乳になっております」


「報告ありがとう。先輩、人形ありがとうございました」


「まだ魔力に余裕が全然あるから、メイドとして使っててもいいんだぞ」


頭が痛くなる。なにが悲しくて自分と瓜二つの人形にお世話されなければならないのだろう。

せめて葵ちゃんなら……。


先輩に丁寧にお断りして人形を消してもらうと、私は時計を見上げながらパンの包装を丁寧に破る。


「竹宮さん、昨日今日と連続魔物退治だったらしいけど、戻ってくるのが早かったみたいね」


パンにかじりついていると先輩の左隣の席に座っていた女子生徒の声が聞こえた。


「もうコツでも掴んだのかしら。さすが努力家は違うわね。私にもコツを教えていただきたいものですわ」


いい声でイヤなことを言ってくる。

お昼休みはあと十分もない、人形はパンを二個買ってくれたけど一個はあとにしよう。お手洗いにも行きたいし。

そうそう、忘れないうちに。


「先輩、私のお昼代ですけど」


食べかけのパンを机に置いて財布を取り出し、先輩にお金を渡そうとすると先輩は手で私の動きを制した。


「桃華くんが無事に帰ってきたんだ。それで私は満足さ」


そう言ってニヒルな笑みを浮かべた。


「ありがとうございます」


先輩の厚意だし押し問答をする時間も正直惜しい。


「ちょっと」


お昼休みももうすぐ終わる。対応が面倒な子の相手をしている時間は私にはない。

急いで残りを口に押し込み、牛乳で飲み込む。そして立ち上がると私は先輩と面倒な同級生ー西園寺エリィーに一礼し、空き教室をあとにした。



「桃華ちゃん大丈夫なの~?」


お手洗いを済ませ、教室に入ると智絵里がとてとてと近寄ってきて私に抱きついてきた。

今日は良い日だ。


そのまま二人塊になって席まで移動する。

席まで移動するとくたびれた様子で後ろの机に寝そべっていた静香が顔を上げた。


「桃華今日マジで調子悪そうだな。アレじゃなさそうだし早めに寝とけよ」


「ありがとう、今日はしっかり休んどく」


「桃華ちゃんの今日の用事って通院だったの?うち来る?」


魔法少女と学生の掛け持ちは本当に大変だ。

今まではまだまだ見習いだったけど、これからは今日みたいに慌ただしい日が増えそうだ。

親友が私を心配して声をかけてきてくれるのが嬉しい。

出来るだけ二人に心配かけないようにしないと。


ちなみに智絵里の父親は病院を開業しているが産婦人科だ。二人して同じような方向の心配するのは止めて欲しいと思った。

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