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葵ちゃん

今回は短いです。

 ギュッと意外と力強く抱きついてくる葵ちゃん。私の胸に顔を埋めているのでその表情は見えない。

 いつもならこういうスキンシップって恥ずかしがる気がするんだけど……。


 改めて彼女の姿を観てみると、ドレスはボロボロ泥だらけ、サラサラだった髪も汚れでその輝きを失い、体中擦り傷や小さな裂傷を負っていた。

 ただ幸いなことにあの熊型の爪攻撃のような致命的な一撃を受けてはいないようなので、昨日のように全身溶かされ自爆したときよりかは、はるかにダメージは小さいだろう。

 それでもこの魔力で編まれた魔法少女の衣装を着ていてこれなのだから、相当ギリギリな戦いだったのが見てとれる。

 ……そして魔物二匹相手にひけを取らず、私が来るまで耐え続けた葵ちゃんはやはり別格なのかもしれない。

 見た目は可愛いか弱い女の子だけど、元々はゲーム大好きな男の子なのだ、マンガやアニメ、ゲームから色々インスパイアされて独自の戦い方をしたに違いない。


 だから見えない表情は震えとか安心して泣いているのではなく、ただ緊張の糸が切れただけなんだな、と思った。


 私は今回こそ葵ちゃんに守られて(途中空中に放り出されたときはさすがに驚いたけど)、確実に仕留められる魔法を使えたけど、本当はこんなことではダメなのだろう。

 本来私の管轄は私一人で守らねばならないのに。

 まだ何も出来てない。


「ピュアハート、封鎖結界を解いてちょうだい」


 一分程二人で抱き合ったあと、背中をぽんぽんと優しく叩いて葵ちゃんにお願いをする。

 案の定、彼女は顔を真っ赤にして慌てて私から離れた。


「ごごめんっ!すぐするからっ!」


 私に背を向けて封鎖結界を解きにかかる葵ちゃん。

 私のほうが名残惜しかったとか気付かないよね。



 封鎖結界を解き、私たちは帰路に就く。


「どんな戦い方をしたの?」


 隣を飛ぶ葵ちゃんに聞いてみた。

 ちなみに彼女の体の傷はそのままだ。家に帰ってから自分で治したいらしい。戦闘中に回復をイメージしたけど何も起きなかったそう。

 回復魔法は封鎖結界と同じ詠唱魔法だと言うと「そっかあ」とだけ呟いた。


 葵ちゃんが思い出しながら話す内容に私の頭はどんどん混乱していった。

 一回で封鎖結界を成功させた?

 今も使っている空を飛ぶ魔法はベランダから飛び降りて発動させたあ?

 封鎖結界の多重起動……?そう言えばあの魔物たちをまとめた封鎖結界は網のような不定形だった。

 考え方自体は納得出来るものがあるけど、昨日魔法を初めて使った人間の考えじゃないと思う。

 極めつけは詠唱の長い魔法の二重詠唱。

 封鎖結界を詠唱しつつ空を飛び、攻撃魔法を詠唱し、攻撃や迎撃を行うなんて、()()()()()


 最初に封鎖結界を破られて以降、葵ちゃんに慢心はなかった。

 混乱した私が葵ちゃんになんとか注意出来たのは、空を飛ぶ魔法の最初の使い方だけだった。


 このまま成長を続けていったら……葵ちゃんはどんな魔法少女になっていくのだろうか。


 家に着いたあと、ベランダを開けっ放しだったのを葵ちゃんの柔らかいほっぺたを横に引っ張って注意すると、私はそのまま学校へと戻っていった。

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