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二人の戦い

誤字報告ありがとうございます。

とても助かります!

「あぐっ!!」


 僕は熊型の魔物の突進をモロに受け、見えない魔物とともにふっ飛ばされる。その衝撃で見えない魔物を手放してしまう。

 結界内に残っていた大木に激突して僕は崩れ落ちる。


「うう……」


 封鎖結界は成功した。

 五十m四方の大結界だ。

 僕はどうやら結界の端まで飛ばされていたらしい。

 ぐったり倒れた僕の霞んだ目に結界の光が差し込む。

 あの外に出れればしばらくは魔物から攻撃されないはず……。

 白く輝く光の壁が希望に見えてくる。


 ダメだ。


 僕はかぶりを振る。

 さっきよりは強い封鎖結界を張った自覚はある。でも魔物が僕目掛けて結界にダメージを与えるのはおそらくダメだ。さっきの二の舞になる気がする。

 魔法少女が使うような杖をイメージする。すると手の内に純白の柄を持つ杖が現れた。その杖を使って体を起こす。


 周囲に感知魔法を張るようにイメージする。

 右上。

 杖を掲げて見えない魔物の攻撃を受け止める。

 この魔物の攻撃手段は分からないが爪や武器を持っている様子は見られない。僕と同じ打撃系と予想する。

 杖から魔物を凍結させるイメージで魔法を撃つ。かすった!

 すかさず杖を振りかざし魔物を叩き落とし、足で踏み付けるその前に僕は左に体を転がす。間一髪熊型の魔物の突進を避けられた。


 体中が痛い。

 治す魔法をイメージする。

 治った気がしない。

 使えない魔法もある。当たり前だ。僕は意識を戦闘に切り替えた。


 見えない魔物は見えないだけあって大ダメージを与えられていない。

 熊型の魔物は体が大きすぎて僕の攻撃じゃ大ダメージを与えられていない。

 どちらも一対一で時間をかけて戦えば、倒せるんじゃないかとは、思う。

 問題は二つ。

 まず一対一で戦えないこと。

 そして魔物に対して必殺技的な攻撃がないこと。

 昨日みたいな自爆は正直勘弁したい。


 杖から大ダメージを与える魔法はないか?

 マンガやアニメで見るような杖を使った大魔法は……この山を吹き飛ばす恐れがある。

 ……杖である必要はないな。


 しばし考えると魔法で刀身が光輝く剣を作り出した。


 僕が剣を構えると今まで突進一辺倒だった熊型の魔物の動きが明らかに警戒するような動きに変わった。

 見えない魔物は空をゆっくりと回って飛んでいる気配を感じる。


 まずは見える熊型から。

 ゆっくりと熊型の魔物に近寄っていく。

 途中見えない魔物からの攻撃を警戒していたが特に動きはなかった。

 ついに熊型の魔物と正対した。

 熊型は爪を出し、ゆったりと体を動かしている。


 ……


 動いたのは同時だった。

 熊型が左腕を薙ぎ払うように振り回す。僕はその攻撃に対して前へ飛ぶ。上から熊型の右腕が振り下ろされる。

 抱きしめるような熊型の動きに対し、僕は飛び上がってー見えない魔物に剣を振るう。

 当たらない。

 そのまま熊型の頭に乗ると剣を頭頂部に突き刺した。

 通らない。

 熊型が体を揺すって暴れたので慌てて距離を取る。



 そのときだった。


「ピュアハート!!!」


 空から竹宮さんが僕の真横に降ってきた。


「たけアイタッ!」


 名前を呼ぼうとすると竹宮さんの杖で頭をはたかれた。


「魔法少女ブルームーン、青き月に導かれし者!あなた達の悪行は見逃さない!」


 そして竹宮さんは口上を述べてポーズをとった。

 ピカーン

 竹宮さんーブルームーンは青い光に包まれた。


「大丈夫だった、ピュアハート?」


「……ブルームーン、ありがとう、大丈夫だよ」


 体は相変わらず辛いけど何だろう、気持ちがほっこりしてしまった。なんとかなる。


「魔物は二匹いる。ボクの攻撃は通じないみたい」


「分かった、私に攻撃は任せて」


 そう言って竹宮さんは呪文を詠唱し始めた。

 かなり大きな呪文のようだ。一撃で仕留める気なのだろう。

 これはさっき封鎖結界を張ったときと同じ。完成するまで竹宮さんを守りきることがミッションだ。


「絶対に詠唱中断しないでね!」


 僕の言葉に頷く竹宮さん。

 来た!

 見えない魔物に対して冷気の突風を浴びせるとみるみるうちに姿が露わになり、風に流されて逃げていった。

 その姿は羽の生えた大柄な妖精の男性体だった。

 次はこっち!

 僕と竹宮さんに覆い被さるように襲ってきた熊型の左爪の一撃を剣で受け止める。後ろに守った竹宮さんに当たらないよう勢いを左に受け流し、体勢を崩した熊型に思いっきり右ストレートをぶち込んだ。

 僕の体勢が多少崩れたところに妖精型が真上から一直線に竹宮さんを狙っているのを感じ、僕は竹宮さんの体を熊型とは反対方向の空中に投げ飛ばした。


「!?」


 いきなり空に放り投げられた竹宮さんは目を白黒していたが、詠唱は続いていた。

 僕は全力で着地点までダッシュすると竹宮さんを見事キャッチした。


 迫る熊型。空からは妖精型。

 そして僕は唱え続けていた封鎖結界を四度(よたび)、今の結界の大きさより僅かに小さい結界を開放し、そのまま投網のように魔物たちを結界の中に閉じ込めた。


 そして。

 竹宮さんの呪文が完成した。


『厳かなる月の青光よ』


 竹宮さんの杖から放たれた青光は魔物たちに直撃すると内側からさらに白く光り輝いた。

 魔物たちは声もなくその姿が崩壊していきー

 光とともに消え去った。

 残ったのは僕の網のような封鎖結界だけだった。


「まだ安心しないでピュアハート。必ず確認を怠らないこと」


 そう言われて僕も感知してみるが、この周囲に魔物の反応はなく、あの黒い波動も感じることはなかった。


「ふぅ」


 竹宮さんは一息着くと僕のほうを振り返った。

 その顔には嬉しそうな悲しそうな悔しそうな、そして様々な感情が垣間見えた。すぐに心配そうな顔になる。


「色々言いたいことありすぎてごちゃごちゃしてるけど…」


 そう言って竹宮さんは僕を抱きしめた。


「頑張ったねピュアハート。ありがとう」


 僕は。そのまま竹宮さんに抱きついてしまった。

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