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 『なにか』が増えて今日で3日…


 だんだん慣れてきたよ。


 おかげで、視線を向けることも少なくなってきたのが昨日…


 そう思っていたら、今日は距離が近い!!


 なんだ?この距離!!?


 すぐ目の前にいる。真後ろをついてくる。


 なんだってんだ!


 これは、挑発行為か?

 話しかけてくるのをまっているのか?


 



 落ち着け、俺!!


 朝のジョギングコースに向かいながら、近くを追いかけてくる『なにか』にイライラしていた。


 くそ!!

 今日は『なにか』が気になって、つい遅くなってしまった。

 もう、少しだけ明るい。直に日が昇る。

 いつもの小さな森について、準備運動を始めようとした。


 が!!



 何かを感じたわけじゃない。


 だけど、ぞっとした!


 思わず、頭を思いっきり下げた。



 ピュン!!!!!!



 俺の頭があったところをきらりと光るものが通り過ぎた。


「っく!!」


 やばい!!


 不安定になった体制で、前にこける。


 右手をついて、振り返ろうとして、また、何かを感じた。


 思いっきり身体をひねる。


 

 ドスッ!!!!



 転んだ姿勢の俺の腹の横に刃物が突き立てられる。


 そのまま、距離を取りたくて、ごろごろと転がる。


 しばらく転がって、起き上がる。


 まずい!まずいぞ!!

 

 心臓がばくばくする!

 息がすでに切れていた。


 相手をすばやく確認する。

 黒い!!人の形だ!!

 黒いマント、黒い覆面で顔を覆っている。

 背は俺より頭一つ半は小さく、身体も細い。

 持っている刃物は、体に似合わず大きい。

 言ってみれば、斧のような…


 だめだ!

 あれは俺の細剣では、受けきれない!

 受けたら、真っ二つだ。


「…何者だ?」


 顔は全く見えないが、雰囲気が笑ったように感じた。


 来る!!


 黒いのが、踏み込んだと思った瞬間、すごい勢いで距離を詰められた。


「くっ!!」


 刀が上段から振り下ろされる。


 横に跳んでよけようとするが、大きな刀によけきれず、足をかすめる。


「っつ!」


 血が落ちる。


 くそ!!

 遊ばれてる!!


 すぐに次の攻撃に入れば俺を切れるのに、一撃終わるごとに一呼吸置く。


「…俺の命なんか狙っても、誰も得しないぞ」


 …言っててむなしくならないこともない。

 こんな時ばっかり、頭は妙に冷静だ。

 黒いのに向き直っていたが…



 ぞく!!



 また何かを感じて、這いつくばるように屈む。



 シュン!!!!



 頭の上をまた、今度は細い刃物が通りすぎる。


「くそ!!」


 

 新手かよ!!?


 屈みこんで走り、近くにあった木を背中にして黒い奴らに向き直る。


 息が妙に切れる。


 現れた新手が屈んで走るときに、俺の腕と背中を切りつけていた。


 血が滲む。

 腕はともかく、脚と背中は、おそらく結構深い。

 足元にじんわりと血だまりができる。

 普通ならかなり痛いのだろうが、今は全く痛みを感じない。

 だが、心臓が背中にあるように、どくどくと脈打っている。

 

 新手は、最初の奴より背は高く、がっしりしていた。

 最初の奴は分からないが、こいつは男だろう。


 だけど、こいつも刀を振るう速度が速すぎる。


 くそ!くそ!!

 逃げ切れる自信がない!


 こいつらは俺よりも恐らく足が速いだろう。

 俺よりも強い。

 魔法なんか使われた日には、確実に詰む。


 どうすればいい??

 どうすれば逃げれる?


 話し合い?

  何も返してこないところを見ると、期待できない。

 走って逃げる?

  そもそも足の速さが違うし、足の怪我は思ったよりも深い。

 声を出す?

  ここから誰かに聞こえる大声を出せる自信がない。

 戦う?

  走る案と同じだな。俺の剣で勝てるような相手じゃない。


 ……あれ??

 なんか、すでに詰んでね??


 ゲームオーバー一歩手前?


 妙に冷静になってきたな。

 こちらの様子を伺う奴らから、視線は外さない。


 そうか…

 俺は死ぬかもしれない…


 でもね、『ミドラドル』!

 俺は、二度と死にたくないんだよ!!

 最後までは諦めない!!


「俺は…」


 じりじりと近付いてきていた奴らの足が止まる。


「俺は、こんなところで殺される訳にはいかない。


 でも、無理なら、せめて…」


 笑ってやる。


 最後まで笑っていてやる。


「俺は絶対に笑って逝ってやる!!」


 ごめんな、『ミドラドル』。

 俺はお前を助けると、お前を幸せにすると、そう誓ったのに…


 あのバカ息子にハメられた時も、勘当と言われた時も、俺はどうして、たった一つの誓いも守れないんだ。


 ああ、また後悔が残る。

 今度は、家族の泣き顔は見たくないな。



 俺はにっこりと笑いながら、俺の前に立つ二人を見ていた。


 スキを見て逃げられないか…?


 スキなんか見えないが…


 


 そんなことを思っていると、また感じた!


 今度は、後ろの木から!!!


 しまった!!!


 でも、振り返るわけにいかず、意識だけ向ける。


 真後ろの木から、俺のすぐ横にひょろりとした男が出てきた。 


 俺よりも背が高いとか…!!


 やっぱり、基本は黒い。


 俺を見て、にやりと笑う。


 手には、小さなナイフ。




 ああ、本当に…詰んだ!



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