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16 とある女官の独り言③

買いかぶりすぎな女官視点。

 ミリアです。


 今日のミドラドルさまは、なんだかとっても落ち込んでいるような、イライラしているような…


 洗濯はいつも通りすごい速度で終わらせていくんですが、すごく話しかけ辛い雰囲気です。


 やっぱり、今朝聞いた、あの噂のせいなのでしょうか?



「ミドラドルさまが伯爵の御子息を殴って、遂に勘当される」



 そんな噂を食堂で聞いてしまいました。


 なぜそんなことになっているのでしょう??


 最近のミドラドルさまはとてもそんなことするように思えないのですが…


 他の方々が、「いつかやると思っていた」とか「やっぱりそういう方だ」とか言っているのを聞いて、悔しい気持ちになりました。


 でも、厨房の方や最近一緒に働いている方は、私と同じように悔しそうな顔をしていました。


 



 勘当の話は本当なんでしょうか?


 でも、まだお城で仕事を手伝ってくださっているのなら、間違いなのでしょうか??



 思い切って聞いてみます。


「…聞きました…」


 そう言うと、ミドラドルさまは、ふっと笑います。


「…どうやら、先王がお戻りになられたら…城を出ることになりそうだ…」


 なんで??


 なんでそんな諦めたように言うんですか?


 思わず、涙が眼にたまります。


「…泣かないでくれ。俺は大丈夫だ」


 泣きそうな私にそう言います。


 私は泣きません。


 だって、泣きたいのはミドラドルさまのはずです。


 どうしてと問う私に、悔しいと言う私に…


 優しく笑うんです。悲しそうに笑うんです。


 やめて!


 あなたはもっともっと認められてもいいはずです。


「ミリア、ありがとう。


 でもね…これで良かったとさえ、俺は思ってしまうんだよ」


 そう聞いた瞬間、私は思わず、何を聞いたのか理解ができませんでした。


 そんな私にまた優しく笑うんです。


「俺はね、ミリア。


 きっと…ここじゃない場所に行きたいんじゃないかと思ってる」


 ああ、この方は!!


 この方は、きっと…。


 ここという場所は、この方にとっては窮屈でしかない。


 もっと広い世界を見ている。


 そう思いました。


 私は以前も思ったことに確信をもってしまいます。


「あなたの御武運をお祈りいたします」


 そう言うと、複雑そうに笑います。


 そして、私ではなく、渡り廊下の屋根の方に視線をむけます。


 その眼は、さらに遠くを見ているようです。



 やっぱり!やっぱりなのですね!


 この方は、世界を見ているのです。


 こんな小さな世界ではなく。


 私は思っていました。

 

 いつか…


 いつかこの方は…


 優しいこの方は、私たちを…


 この国を捨てます…


 この国がこの方を捨てるんじゃないです。



 いつかきっと、この方がこの国を捨てる、そんな日が来ると…




 私は確信してましたよ、ミドラドルさま。





次回、命の危機

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