第15話「中間者ドミール」
出発の準備は、着々と進んでいた。
「忘れ物はねぇな?」
リドウが確認する。
「ああ」
俺は短く答える。
リリーニャも頷いた。
「大丈夫です」
フウカも荷物を抱えながら言う。
「……うん」
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そのときだった。
扉が開く。
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「戻った」
低い声。
クローだった。
だが――
その隣に、もう一人。
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緑色のショートボブ。
どこか柔らかく、それでいて油断ならない雰囲気の女性。
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「おー!!ドミールさん!!」
ワショーが駆け寄る。
「久しぶりっす!」
「元気そうじゃん!」
ナデクも笑う。
「相変わらず軽いわね〜」
リーノが手を振る。
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女性――ドミールは、くすりと笑った。
「ふふ、ちゃんとやってるみたいだねぇ」
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その視線が、こちらへ向く。
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「……なるほど」
ゆっくりと俺たちを見渡す。
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「君たちが“例の”子たちか」
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「ドミールだ」
軽く手を上げる。
「ダムステル支部の――中間管理者、ってとこかな」
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リドウの目がわずかに細くなる。
「……ミドルのアナグラムか」
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「そうそう」
軽い調子で頷く。
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「クローから状況は聞いたよ」
「あと、この子たちの様子もね」
3人組をちらりと見る。
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「ちゃんと役に立ってるみたいで安心した」
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「当然っす!!」
ワショーが胸を張る。
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クローが口を開く。
「彼女は今回の件の護衛兼案内だ」
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「混乱状態の中、単独行動は危険だからねぇ」
ドミールが続ける。
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「だから、私も同行するよ」
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「……信用できるのか」
リドウが低く言う。
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ドミールはその言葉に、少しだけ楽しそうに笑った。
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「ほぅ」
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「君が、トリコワ先生の愛弟子さんか」
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その一言で、空気が変わる。
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「……誰から聞いた」
リドウの声が硬くなる。
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「さあねぇ」
ドミールは肩をすくめる。
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「ただ、興味はあるよ」
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「どんな子が、あの人の意思を継いでるのか」
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リドウは何も言わなかった。
ただ――
その視線は、警戒を隠していなかった。
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場面は変わる。
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宿屋の浴場。
湯気が立ち込める。
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「……あったかいねぇ」
フウカが小さく呟く。
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「ええ」
リリーニャが微笑む。
「こうして落ち着ける時間も、大切です」
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カタリーニャがゆっくりと湯に浸かる。
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「旅は大変よ」
優しく言う。
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「でも――」
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フウカを見る。
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「あなたなら、大丈夫」
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フウカは少しだけ照れたように笑った。
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「……うん」
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静かな時間。
湯の音だけが響く。
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「……帰ってくるよ」
フウカがぽつりと言う。
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カタリーニャは頷いた。
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「ええ、待ってる」
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短く、でも確かな言葉だった。
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場面は翌日。
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朝の光が差し込む。
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「じゃあ、行くぞ」
リドウが言う。
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「はい」
「うん」
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ドミールが軽く手を振る。
「案内は任せて」
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クローは静かに頷いた。
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宿屋の前。
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「いってらっしゃい」
カタリーニャが微笑む。
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フウカが手を振る。
「行ってきます!」
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「任せてくださいっす!!」
ワショーが叫ぶ。
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「この街、守るからな!」
ナデクが拳を握る。
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「なんとかなるって〜」
リーノが笑う。
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その言葉を背に――
俺たちは歩き出した。
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ダムステルを後にする。
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その先にあるのは――
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混沌。
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アナグラム。
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そして――
動き出す各国の思惑。
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「……面倒なことになりそうだねぇ」
ドミールが呟く。
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その目は、どこか楽しそうだった。
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(続く)




