第1話「底辺作業員は理不尽に異世界へ転移します(汗)」
日本のとある町に底辺作業員と位置づけられた男がいた。
彼の名前は「佐々木透」。
月収は18万円。
契約社員。
ボーナスなし。
昇給なし。
工場のライン作業を、ただ延々と繰り返すだけの人生である。
現在彼は”譲れない想い”を胸に、上司に呼び出しを食らっていた。
「おい佐々木、手が止まってるぞ」
現場リーダーの怒鳴り声が飛ぶ。
だが、その怒鳴り方は明らかにおかしい。
俺は時計を見る。
まだ休憩時間のはずだった。
「今、休憩時間ですよね」
そう言った瞬間、現場の空気が凍った。
リーダーは眉をひそめる。
「は? 俺が働けって言ったら働くんだよ」
――またこれだ。
理不尽。
根拠のない命令。
そして誰も逆らわない空気。
学生時代、俺は優等生だった。
成績も良かった。
だが社会に出てわかった。
この世界は
正しい人間が勝つわけじゃない。
声の大きい奴が勝つ。
理不尽を押し付ける奴が勝つ。
……本当にそうか?
俺はゆっくり口を開いた。
「労働基準法第34条。
6時間以上の労働には休憩が必要です」
工場の空気が固まる。
「今はその休憩時間です。
なので働く義務はありません」
リーダーの顔がみるみる赤くなる。
だが、俺はさらに言った。
「それとも、会社として法律を破るつもりですか?」
沈黙。
そして次の瞬間――
「……うるせぇ!」
怒鳴り声と同時に、視界が真っ白になった。
床が消える。
重力が消える。
そして俺は理解した。
――落ちている。
だがそこは、もう工場ではなかった。
「貴様、人間の分際で王の命令に逆らうとは何事だ!」
目を開けると、
豪華な玉座の間だった。
鎧を着た兵士。
高慢そうな王。
そして膝をつかされている俺。
王は言った。
「奴隷として働け。拒否すれば死刑だ」
……なるほど。
どうやら異世界でも
理不尽は存在するらしい。
俺はゆっくり立ち上がった。
そして言った。
「その命令、論理的に破綻しています」
王の顔が凍る。
「まず確認しますが――」
俺は静かに笑った。
「あなた、本当に王ですか?」




