表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役女王は辞退します  作者: 秋田ひかり
20/20

20、チャンスタイムが発生しました



今回の旅は、所謂お忍びでもある。

王女が魔物欲しさに出かけるなんて、褒められた事ではないだろう。


その為、名目的には「魔物の調査」だ。

ゲイン、騎士団長のマードナー、ベイドナー、ロルフと、ついでについて来たラフィラ。

ちょっと行ってさっと帰るつもりだったのだが、護衛数が足りないという事で、騎士団長までもが駆り出された。

後でお詫びの品でも送ろう。


馬車から降りたミシェルは、真っ赤なローブを羽織り、フードで顔を隠す。

他の面々も、目立つ格好はしていない。

騎士服を脱いだゲインやマードナーは、私服でそれとなく辺りを警戒している。

ただ、ロルフだけは煌びやかな服ではないにしても顔が目立っているようだ。

宿屋の前を歩く淑女達からチラチラと熱い視線が送られている。


ラフィラが若干威嚇しつつ、ロルフ自身はいつもの事なのか視線を全く気にせず、ミシェルのエスコートをしようとする。

腕を組ませようとするロルフをやんわりとかわして、今夜の宿の門を潜る。


入り口の正面に受付があり、左右に通路が分かれている。一階には食事処が併設されているようで、この時間だからか、ガヤガヤと楽しそうな声が聞こえて来る。


ゲインが受付を済ませるのを後ろで待っていると、後から三人組の男性が入って来た。


それぞれが武器を携え、首元には冒険者ギルド登録の証である銀色のタグがぶら下がっているのでミシェルでも彼らが冒険者だと分かった。


ゲーム内では、ゲインルートに入ると冒険者ギルドの話が出てくる。

魔憑の彼は、騎士団長に拾われる前は冒険者ギルドに所属していたからだ。


「大丈夫か?」


「あぁ、すまん。ヘマしちまって」


「気にすんな。それより、本当にあの回復薬効いてんのか? 全然回復してねーみたいだが…」


全身包帯に巻かれている男が目に入る。顔色が悪く、一人に寄りかかるように肩を貸して貰い歩いているが、今にも倒れそうだ。

聞こえてくる会話から、どうやら何かしらの怪我を負ってしまったらしい。


この世界にある回復薬は、エリーもお世話になっていたが、中には粗悪品も出回っていたりするので、もしかしたらそれを掴まされた可能性は高いだろう。

もしくは、回復薬では効かない毒などであれば、そもそもの処方が間違っているのだが。


ゲインが受付を終わらせると、三人組の一人が受付に歩いていった。


「ーーーー、ーーー」


「え?」


残りの二人がミシェルの横を通り過ぎた際、誰かの声が聞こえて振り返る。

しかし振り返ってみても後ろには入ってきた宿屋のドアしかない。

気のせいかな?と思うミシェルに、ゲインが声を掛ける。


「ミシェル様、お部屋に案内しますよ」


「ありがとうゲイン」


ゲインは冒険者の彼らの事が気になったのか、チラリと見て、直ぐに視線をミシェルに戻して部屋に案内してくれる。


部屋割りは、ミシェルとエリザで一部屋取って貰ったので、ようやっとロルフ達から離れられて安心する。すぐさま汚れた服を着替えてさっと風呂に入った後、一階にある食事処へと向かった。

食事中も、ラフィラを甘やかし、給仕の女性に囁き、他の客から誘惑されるロルフだったが、盾としてマードナーを間に挟んだので、直接的な被害はあまり無くてほっとした。

食後には思いっきり苦いコーヒーをエリザと頼んだ。

ゲインは始終顔を歪めていたので、彼もロルフは苦手なのだろう。


食事が終わる頃には夜も更けて、明日に備えて寝るだけである。

ワンピースのような寝巻きに着替え、エリザに髪を梳かして貰っていると、ドアをノックする音がした。


「夜分に申し訳ありません、ミシェル様」


「ゲインどうしたの? マードナー団長も揃って」


「ゲインの奴が、少々面倒な事に気付いたようですので、その報告に」


用心するように声を潜めた二人を部屋に招き入れ、ミシェルはベッドへと腰掛ける。


「面倒な事とは?」


「確証は無いのですが、多分、″夜″が来ます」


真剣な表情で告げるゲインを、ミシェルはキョトンとして見つめる。


「えっと…既に来ているような? 夜が怖くて一人じゃ寝られないとか、そーゆーギャップ的な話? 嫌いじゃないわ。エリザはあげられないから、マードナー団長との添い寝を許します」


「違います!!」


ミシェルの斜め上の発言に、慌てて否定すれば、マードナーがゲインの代わりに説明してくれる。


「″夜″というか、″闇の囁き″と呼ばれる魔物の事です。シュブ、と聞いた事は?」


「なんですって!」


マードナーの説明に、ミシェルは思わず立ち上がり、目を見開く。


「ミ、ミシェル様?」


あまりの勢いに、周りが逆に混乱していたが、ミシェルは体を震わせて心の中でその名前を繰り返す。


(シュブ!あぁシュブ! ケルベロスやグリフォンに次ぐ会いたいランキング三位のシュブ!!)


ミシェルは歓喜に心を踊らせながら、二人に向かって満面の笑顔を見せた。


「これより!シュブ捕獲作戦を決行します!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 〉ベイドナーの説明に、ミシェルは思わず立ち上がり、目を見開く。 部屋へ来たのはゲインと団長の二人なのでマードナーの説明ですかね? それとも3人で来た?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ