表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/22

第17話 純粋な愛は冬休みから

 開絵、勾乃、心山の3人は直久が処置室に向かった後。

 談笑をしながら、時間を潰していた。

「本当?」

「ほんと、ほんと出会って4日で告白だよ。ほんと信じらんないって思ったけど、最後にまさかの展開があったんだよね~」

 小説の話だと思っていた開絵は、開口一番。

「どんな、題名?」

 勾乃は、右手で口を押さえる。

「心山琴咲」

「ええ?」

「もう駄目だっ」

 勾乃が笑い始めた。

「これは、両親の恋愛秘話だったのです」

「本当なの!」

 扉がスライドし、直久は右手首に包帯を巻かれた姿で彼女らの元へ歩いて向かった。

「弓菜ちゃん。本当の思いを、早く。伝えた方がいいよ」

 開絵は、口元を軽く結び口を開く。

「それは、そうかもしれないですね」

 独り。椅子から立ち上がり、直久に向かって走り出した。

 直久の目先に立ち、目を合わせる。

「部屋の外で、話しませんか?」

 直久は開絵の言葉に同意し、通路へと向かう。

 誰もいない通路を並んで、歩き始めた。

「先に話しても、いいか」

 静かに開絵は頷く。

 一面。白塗りの通路は、最適な室温と湿度に保たれていた。

「右手首は、軽い魔力流痛障害まりょくりゅうつうしょうがい。魔力を流すと痛みがあるけど、数日で完治するらしい」

「あの時、やっぱり。無理をしたんですね」

 苦笑いをした直久は、話を続ける。

「ところで、どこに向かっているんだ。開絵さん」

「魔法練習場」

(魔法練習場? どんな話なんだろう)

 立ち止まって考えていた直久に対して開絵は、命令する。

「いいから、来て下さい」

 そう言い残し、足早に目的の場所へと開絵は向かった。

 彼は、開絵の後姿を走って追いかけた。



 魔法練習場は縦35メートル、横21メートル。吸音性タイルが2人の足音を完全に消す。

 現在、2人は魔法練習場にいた。

 無音の空間、壁は薄いホワイト。照明が灯った室内で開絵は、先に話し始める。

「先ずは、見てください」

 直久の耳に開絵の息遣いが、聞こえてきた。

 左手を前に出す。

「わたしの魔力を変換(コンヴァージョン)形成し」

 常人では、見ることすらできないが、直久は視界に捉えた。

「綺麗な正四面体を、形成できている」

 そうですか、と言いながら魔力を拡散させ発動を止める。

「やっぱり、魔力が見えるんですね」

 直久は、ゆっくり頷いた。

(チートなのか。特別な体質のどちらかは、解かっていないんだよな)

「ここからが、本当の本題です。あの時、その……。告白をしてくれましたが、やっぱり。早いです」

(そうだよな。謝った方が、いいか)

 口を開きかけた、直久に対して待ってくださいと言い止める。

「もう少し、観たいです。直久さんのこと、わたしに見せてくれませんか」

 数秒の間が空く。

「ありがとう」

 心の中で、直久は飛び跳ねて喜んでいた。

 開絵は両手を背中に回して組み。肩を軽く揺らしながら、もじもじする。

 行動の全てが、直久の鼓動を高めていることに開絵は、気づいていなかった。

「今度の冬休み、12月22日からですね」

(今年の冬休みは、12月22から1月5日までだったな)

「冬休み、一緒に動物園。行きませんか?」

(行き成り、しかも直球で!)

「い、いいんじゃないか」

 開絵の顔が、ほんのり赤らむ。

「動物園は、独りより2人の方が絶対。楽しいですしその、あれです。まだ、デートではありませんから……」

 まだ、その部分に少し何かを感じた直久は話題を変えようと口を開く。

「開絵さんはどんな、動物が好き? 俺は、ペンギンとカワウソだけど」

「そうですねー。カピバラ、アメリカンビーバー、セグロジャッカル、オグレプレーリードッグ。

 アカギツネ、シマリス。他にもいるけど、そろそろ戻りません?」

(開絵さんって、動物に詳しいんだな)

 頷いて同意した、直久は扉へと向かう。

 開絵は、その後ろ姿を追いかけた。


    §  §  §


 明日、12月24日。開絵さんと動物園にいく日だ。

 浮かれずには、いられなかった。

 4日前に異世界往来監視局にいった時。新しいライトノベルを柿谷から、渡された。

 性能が上がったらしい。確か、倒した敵の魔力をより自分のものにできる。

 このライトノベルは、開くことができないようになっている。

 椅子から立ち上がり、扉の方を見ながら思う。

 魔力を込め詠唱することで、武器化するライトノベル。

 どのように考えても、変な話だ。

 今の日常が、開絵さんとの出会いをくれた。

 人生。何が起こるか解からないから面白い。

 扉に掛けたカレンダーの23日に、赤色ペンで線を入れる。

 右側にある本棚へと向かい。『ラノベ・マンガ・ラノベ 9巻』を掴み、椅子に座った。




 どこにでもあるコンビニ。そこで、直久は約束をした相手がくるのを待っていた。

 中年男性が、直久の近くにあるゴミ箱へコンビニのビニール袋、一杯に詰め込んだゴミを捨て。

 店の中に入っていった。

 1人の女性が、直久に近づいてくる。

「お待たせしました」

「時間丁度ですよ。開絵さん」

 直久とコンビニの近くにある。バスの停留所へ2人で向かい始めた。

 開絵はエクルべイジュのトレンチコートから、覗かせる。

 スカイブルーとホワイトのボーダー柄シャツ。(たけ)の長いパンツの色は、テラコッタを穿いていた。

 全体的にクリーム色の小さな鞄を、右肩に掛けている。

 直久は、ネービーブルーのジャケットと普通の長袖シャツ。アンバーのパンツと言う出で立ちだった。

 珍しく、大気が綺麗なのか上空は霞んでいない。

 2人は停留所で、目的のバスを待つ。数分後に停車したバスに、2人で乗り込む。

 バスの中では、2人共ほとんど話をしなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ