1出会い
「聖女にうつくしいものを」の長編版です。よろしくお願いいたします。
俺は音楽家で有る。
自分でもいうのも何だが、声も良い背も高い男らしい感じの顔立ちではないが、中性的な作りの顔と人生楽に行けそうなルックスである。
まあ実際のところ楽では無いが。
音楽家と名乗れる様になったのにいままでどれほど苦労したか、ようやく作曲と演奏、歌唱の音楽で食える様になった。
で、教団から仕事をもらった。個人的に正直教団とは関わりたくなかったが、受ければ尊き人々とのご縁も出来る。
その仕事は教団内のものに情緒教育のために音楽を教えて欲しいと命じられた。
要は音楽の先生である。
教団の教導院のガランとした教室でどんな奴かな、女の子が良いな年上だとやりにくなあと思って居たら、
入ってきたのは一人の女の子だった。
わたしは教母様から命ぜられた教室の扉を開けました。
そこに居たのは机に座って居る(お行儀悪いです)男の人でした。
男の人なのに黒い長い髪に緑の目に長い足の男の人でした。
わたしは「あなたが音楽を教えてくれる人ですか?」と聞きました。
俺は
「俺以外に誰が居るかな?妖精さんとか音楽の女神様とか見えるか?」
と俺は女の子に言った。
教団の教女見習いの制服を着て居るがちょっと大きいブカブカで袖が手先しか見えて居ない、黒いタイツに包まれた細い足が見えて居る。
青水晶の瞳と角度によって虹色に見える白銀の髪(高魔力だと虹色になるらしい)に彩られた白い顔は全くピクリとも動かなかった。
人形いや、名工が手がけた彫像に見えなくもない
「君はなんと言われてここに来たんだい?」
と俺は女の子に言った。
「教母様に言われてきました。『音楽』を習う様にと言われてきました。」
「へえ、・・・君は『音楽』といえば、どんなのを思いつく?」
「・・・教会の聖歌です」
彼女は少し考えた後答えた。
・・・普通は「どんな曲、どんな歌が好き?」とか聞くのだろうけど、教室に入ってきた彼女が、彼女の顔が全くの無表情だったからだ。
教団の新技術で作られた人形が入ってきたのかと思った。
・・・イヤな予感はあたった俺はこの子の情操教育のために雇われたのだ。
やっぱり教団はろくなもんじゃない!
わたしには心が無いそうです。わたしは生えて居る花を見たら、「雑草だから抜かないと」と考え、鳥が囀ったら、「フンを落とさないと良いな」と考えます。
普通は美しい、キレイ可愛いと考えるそうです。・・・よく分かりません。
わたしには「霊力」という力が有って傷や病気を治したり、「淀み」を浄化したりして皆を助けなければならないのです。
幾度かお姉様やお兄様たちと一緒に聖務に出て霊力を使いましたが、いつも怒られるので失敗して居るみたいです。
怪我や淀みは消えて居るみたいですが。周囲の人たちは怒ります。
失敗して居る理由がわたしに心が無いからだそうです。心無い事を言うからだそうです。
なので、教母様から音楽を習えと言われて来ました。
音楽を習ったら心が分かるんでしょうか?
と彼女は淡々と理由を話した。
俺は自分の予感が当たったことを知った。
絶対!絶対!ろくな生まれじゃない!良くて捨て子、悪くてスラムのゴミ捨て場
昔のどこか王様が国中の赤ん坊を集めて笑わず話しかけずに育てた結果で一人残らず死んでしまったとか、獣の仔に母親に似せた乳だけの模型と温かい布の模型どちらを選ぶかと言えば温かい布を選ぶとか、子供は四歳までには感情が出来る。とか
どうしようもない知識がプカプカと浮かんでくる。
ほとんどが前の記憶だ。悩んでいるとき考え込んだときとか時々ふっと浮かんでくる。どうしようもないものだ。
親が手をかけて育てたとかじゃないのは確かだ。
さっき手を上げた時、後ずさったから殴られたことがあるんだと思う。
今はどうなのかわからないけど・・・
何をどうしろと言うんだ!今でも前でも精神医療なんざやったことない!
まあとりあえず・・・
「そういえば名前聞いて居なかったなあ。名前教えてくれ」
「・・・『聖女』と言われて居ました。」
と少し考えたうえで言った。俺は呆れて
「違う、いつも呼ばれて居る名前とか、付けてもらった名前とかだよ」
「おい、とか、これ、とか呼ばれて居ました。」とたんたんと答えた。
「うーんじゃあ、あだ名とか付けて良いか?」と俺は提案した。
「あだ名?」と目を見開いた。
はじめて表情らしきものを見た。
「呼び名だな。不便だろ」と俺は目線を合わせて言った。
「不便を感じた事は有りません。」少し後ずさる近すぎたか申し訳ない。
「じゃあ、聖女ちゃんで」短絡的で有る
「わたしは『聖女』の資格はまだ有りません」ちょっとむっとして居る?
「候補なんだろ?」と俺は軽く聞こえる様に言った。
「・・・教母様には言われました。」
「呼ばれたいしっくりくる『名前』って有るか?」
「・・・」思いつかないらいしく俯いて居る。
「わからないか」俺は静かに言った。
「・・・」顔を上げた。深い青い瞳が美しいと思った。
「とりあえずと言うことで、呼ばれたい名前あったら教えてくれよ」
「・・・分かりました。」納得してくれた様だ。
「あなたのことは何とお呼びすれば?」
「・・・音楽家とでもよんでくれ、」と俺は言った。
「・・・とりあえずやってみるか。」




