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神「賢者が魔法を使えるなんて、誰が決めた?」  作者: 源泉
第四章:賢者は空気が読める

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洞窟の入り口前には、三人と一匹が残っていた。

一匹はというと、



「バッテリー切れ〜……」



などと小さく呟きながら、ケンサクの肩の上でおとなしくしている。


しばらく沈黙が流れたあと、ゼドが口を開く。



「……言っておくけど」



視線を逸らしたまま、淡々と。



「この村に僕がいたのは、本当に偶然だから」



ケンサクは少し考えてから、首を振る。



「それは疑ってなかった。

仮に俺たちを監視する目的でここにいたんだったとしても――」



ケンサクはゼドをまっすぐ見つめる。



「助けてもらった事実は変わらない。感謝もな」



リテナも大きく頷いた。



「そうだよ。ゼドくんがいなかったら、今ごろ……もっと大変なことになってた!

本当にありがとう!」


リテナの脳裏に、さっきのケンサクの説明がよぎる。



――浄化のために、と火を持った村人たちが地下に突っ込んでいたら。



酸素はさらに燃やされ、重たい二酸化炭素は地下に溜まり続け、

取り返しのつかない悪循環になっていた。



「……それなのに」



ケンサクが腕を組み、リテナを見る。



「そんな場所に、人を助けるためとはいえ、一人で走っていくなんて」



その視線は、責めるというより心配そのものだった。

リテナは口を尖らせる。



「でも、それはケンサクだって……!」


「俺はリテナを――」



言いかけたところで、ゼドが割って入った。



「痴話喧嘩なら、あとにしてくれない?」



二人が同時にゼドを見る。



「一応、僕。命の恩人だからね」



少しだけ、得意げに。



「森では助けてもらったけど……今回は、僕が二人を助けた。差し引きしても僕が多く助けている」



ケンサクは小さく息を吐き、素直に頷いた。



「ああ。感謝してる。何か礼ができればいいんだが……」


「じゃあ、一つ頼みたいことがある」



ゼドは軽く言った。



「僕、本当は魔力の回復を待って、

拠点に転移魔法で帰る予定だったんだ」


「予定、だった?」


「さっき魔力を使っちゃったからさ」



ケンサクの肩で、ホタルがぴくりと動く。



「あれはすごかったよ〜!」



急に元気な声。



「地下全部に風を通して、しかも人を傷つけないように制御して!

あんなコントロール、簡単じゃないよ〜!」



ゼドは褒められているのに少し気まずそうに視線を逸らした。



「……だから、今はまた魔力が空っぽだ」


「つまり?」


「君たちに、僕を拠点まで送ってほしい」



ケンサクが眉を上げる。



「勇者たちの……拠点、か」



少しの沈黙のあと、頷いた。



「ああ、わかった。

魔法が使えない状態で一人で動くのは危険だからな」



ゼドはほっとしたように息を吐く。



「助かる。

それに……君は賢者なのに、常に魔法が使えないんだろ?」


「う……、まあな」



助けてもらった手前、嘘をついて誤魔化す気にはなれなかった。



「それも、ちょっと気になる」



その時。



「ケンサク〜……」



肩の上から、弱々しい声。



「その前に……私のバッテリー切れも気にして〜……」



ケンサクは即答した。



「お前は飯を食えば戻るだろう、もう少し待て」


「ひどい〜、私もだいぶ頑張ったのに……」



そのやり取りに、リテナが小さく笑う。


――救えなかった過去だけじゃない。

今、救えたという確かな記憶。


彼女の胸の奥に、まだ震えは残っている。

それでも、足は前に進める気がした。



ゼドは、洞窟の奥を一度だけ振り返る。


――救われるだけの存在じゃない。

救うために、選んで力を使えた。


それが、まだ少し誇らしかった。



ケンサクは二人と一匹の様子を見て、静かに思う。


知識は、確かに人を救う。

だが――一人では、足りない。


だから、仲間がいる。



「じゃあ行こうか」



ケンサクが言うと、

三人と一匹は、ゆっくりと歩き出した。



それぞれが、

ほんの少しだけ変わったまま。





第四章おしまいです。


第五章準備中ですので、少しお待ちください。

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