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26 事件の裏側



人身売買、麻薬売買の現場そして犯罪集団を潰したその日の夜。

各々、自室でゆっくり休むことになった。

私もさすがに疲れたので、部屋で軽食を食べて入浴しゆっくり休むことにした。




次の日は、アリアとミハエルお兄様だけが学園に登校した。

アイラおば様とアルヴィンお兄様はそれぞれ用事があると出かけた。





私は昨日、使用した暗器の数を確認したり、磨いたりすることにした。

天気も良いし庭でやろうと、荷物を両手に持ち廊下を歩いていた。


「リユー」


ベルが私を呼ぶ声が聞こえ振り向くと、焦ったように私に駆け寄るベルが見えた。


「どこに行くんだ!?」


「庭で暗器の手入れしようと思っているだけだよ」


私がそう言うと、ベルは安心したように肩をうなだれる。

私は意味が分からなくてコテンと両手いっぱいに荷物を抱えたまま首を傾げる。


「違うんだ。昨日の事がまだ頭を離れなくて……。

またリユーが俺の目に入らない場所に行くのかと思って……」


「大丈夫だよ。

今日は屋敷から出ないように言われてるし、ここにいるよ」


しょんぼりとした様子で言うベルにおかしくなり笑いながら伝える。

ベルは安心したように微笑んで私の手から荷物を引き取る。


「一緒に行こう。

ちょうどリユーの好きなレモンケーキも焼けったってさっき聞いた。

お茶でもしながらゆっくりしよう」


2人で庭へ向かった。

その足取りは軽かった。



私が、テーブルに暗器を広げ、数を確認しながら手入れに励む。

ベルも自分の剣を磨くことにしたようだ。

2人で無言の時間が過ぎていく。


私が「ふぅ」と軽く息を吐いて、暗器をテーブルに置く。

軽く背伸びをすると、ベルが微笑んでこちらを見ていた。


「終わったなら、ケーキとお茶の準備を頼もうか?」


ベルが笑顔で提案してくれたので、それに喜んで賛成する。

香りのいいお茶と大好きなレモンケーキを前に胸が躍る。


口にレモンケーキを運ぶと、爽やかなレモンの味と芳醇なバターの香りが鼻を抜けていく。

甘すぎないこのケーキはサウス家に引き取られた時に、初めて食べて以来、大好きになったものだった。


「リユーはこのケーキずっと好きだな」


「この世の中に、こんなにおいしいものがあるなんて知らなかったもん」


あっと言う間に、自分のお皿に乗ったケーキがなくなってしまったことに少ししょんぼりとする。

すると目の前に半分になったケーキが差し出される。


「ほらこれも手食べていいぞ」


「ありがとう」


満面の笑みで受け取る。

私がこのケーキを好きなことを知ってから、ベルもレモンケーキが好きなのにいつも私に半分くれる。



毎回くれるので『いいの?』と尋ねると

『リユーがおいしそうに食べているのを見る方が好き』

と子供の頃に言ってくれた。



それ以来、いつもベルはレモンケーキを私に半分譲ってくれる。


「昨日、怪我は無かったか?

いつも訓練の時も終わって、入浴の時にリユーは怪我に気づくから……。

気になって寝れなかった」


「入浴の時にちゃんと確認したよ。

今回は全然なかったから安心して。

ベルもたくさん動いたんだから。

ちゃんと寝なきゃ」


私が頬を膨らませながら言うと、ベルは笑いながら私の膨らんだ頬を指でつまむ。


「気になったのは本当だけれど、ちゃんと寝たよ」


2人でじゃれ合いながらゆっくりと過ごす一日は、昨日までの事がウソかのような一日だった。





夕食の時間になり、アイラおば様とアル様を交えて6人で夕食をとった。


「昨日の話はあとでゆっくりとお茶を飲みながらはなそう」


アル兄様の言葉通りに、私たちがクォーツを離れてからの学園のことや、こちらでの生活について話しながら、和やかな夕食の時間は過ぎた。



夕食を終え全員で歓談室に移動する。

各々の場所に座り、私が淹れたお茶を一口飲んでアル兄様の話がはじまる。


「さぁ。まずはなぜ私と母上がここに来たのかをもう一度しっかり説明しようと思う」


私たちが頷いたのを確認し、アル兄様が話を続ける。



「オークションの知らせが来てから、父上とサイラスおじ様がグロリアの裏の事情の詳細を把握した。

そして恩を売りつけようとしたことから始まったんだ。

グロリアの王家は歴代長男が国王に就くことになっていたんだが、現国王も王太子にも問題があった。

そして王弟の優秀さをかっていたサイラスおじ様が、王弟に手を貸すことを決めたんだ。

それから王弟との交渉のために今回、私と母上がこちらに来ることになったんだ」



アル兄様の話を聞きながら納得しつつも、少し不思議に思うことがあった。

それをミハエルお兄様が直球でアル兄様に聞く。


「あれ? 交渉だけなら次期公爵のアルだけでもよかったよな?

なんでアイラおば様も来たの?

確かに、ものすごく助かったけど」


ミハエルお兄様の言葉にアル兄さまは片手を額に置いてうなだれた。

それとは反対にアイラおば様は嬉しそうに微笑みながら、その答えを言った。



「あなたたちの成長を見たかったのも、もちろんだけれど……。

まぁ運動不足解消かしら?」



私たちは思わず目を瞠り、お互い顔を合わせる。




「まぁ……お母様だから……」


「そうなんだよアリア……。

母上だから仕方なかったんだ」


兄妹で通じ合った二人にアイラおば様は楽しそうに笑っていた。



「まぁリユーもわかっていると思うけど、リユーを落札しようと値を跳ね上げさせていたのは母上だ。

そして、リユーとベルがアジトを突き止める任務に入った頃、会場を制圧したのは母上だ」


「アイラおば様!

すっごくかっこよかったです!」


ミハエルお兄様がキラキラとした目で、アイラおば様を称賛する。


「ちょっと手ごたえ無かったけれど、現場の空気を久々に味わえてよかったわ」


なんともなかった風に言うアイラおば様だけれど……。

あの会場には50人ほどの客と20人近くの関係者がいたはずだ。




「まぁその話はまたゆっくりしよう」


アルお兄様の言葉に状況を聞きたいのを我慢する。


「まぁ後は、第二王子近衛騎士が参加客も関係者もすべて確保したよ。

あとはリユーの方だな」


私はこちらであった事を説明する。


「王弟が任務に参加していることまでは連絡できたが、詳細を連絡できなくてすまなかった。

リユーなら大丈夫だと信じていたが、さすがに心配した」


私はアル兄様に微笑んで「大丈夫」の意味を込めて微笑む。



「それで明日、公に発表されることになる。

今回、国王は退位し田舎の王族領地に蟄居する。

王妃も共に向かうことになっている。

表向きには今回、王太子が起こしたことにより精神を病んだということにされる。

そして王太子は北方の鉱山に犯罪奴隷として今日の段階で出発した。

国王は現在5歳の第二王子が即位。

但し成人までは王弟が国王代理として公務をおこなうことになる。

あぁ後、捉えた主犯の貴族が吐いた。

ボールック男爵令嬢の元に居た占い師はその主犯の差し金だった。

販路をクォーツにも広げようとしたらしい」



アル兄様の言葉で今回の事が大事だったことを実感して背筋が寒くなった。


「結果的にこのようなことになったけれどね。

カラスの任務はこのような大きなことに発展することが多いわ。

今回はいい経験ができたと思って今後の糧にしなさいな」


アイラおば様の言葉に全員が膝をつき

「御意に」

と答えた。



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