刺客 (side : デューレ)
アタシの可愛いレイきゅんが攫われた。
リタ婆がまさかの敗北を喫する魔神、いったいどんな敵であるのか…?
リタ婆から託された光る石のお陰で、レイきゅんが居る方角だけが判明している。
学問都市からひたすら北に向かっているが、果たしてそこに何があるのだろう。
魔王軍の砦で、魔神がウジャウジャと待ち構えていたりするのだろうか?
追い続けてから、早くも1週間が経過している。
あと少しでデュノー皇国の首都に到着してしまうのだが…
ふと、メアリ皇女の顔が浮かぶ。
上手く恋は成就したのかな…?
セーラっちはどうしてるんだろ…?
日も暮れ始めていたので、アタシは近くに見えた村で休む事にした。
この辺りはデュノー皇帝のお膝元でもあり、魔王軍の被害は全く無い。
学問都市を出て数日は、尽く付近の町や村は全滅していた。
不死の王による行軍によるものだ。
居た堪れない気持ちになりながら、アタシはその場を後にした。
数年前、この付近で魔獣退治をした事がある。
その記憶も新しいのか、村人達はアタシを温かく歓迎してくれた。
四聖人は手厚く迎え入れるのが世界共通のルールになっており、極端な話をすれば無一文でも旅が出来る。
ま、アタシはそういうのは嫌だから宿代も食事代も払ってるけど。
2日間も野宿だったので、お風呂が気持ち良かった。
何よりベッドの上で眠れるのは堪らなく嬉しい。
そして、それは就寝中に訪れた。
エルフであるアタシの耳。
それは人間よりも遥かに高い聴力を持っている。
熟睡を邪魔する何者かが…部屋に侵入して来ている!
枕元に置いていた短剣、デスペラードを掴む。
「あの…寝てるところをすいません」
申し訳無さそうに喋った若い女の声。
殺気は放たれていない。
だが、油断はしない。
いきなりシーツを捲り上げる。
その瞬間で声の主の背後に周り、デスペラードを首元に突き付けた…筈であった。
声の主は振り向いて大剣をかざし、デスペラードと交差させていた。
「アンタ…何者? アタシの根首を取りに来たの?」
かなりの腕前だ。
究極の暗殺術を身につけているアタシの動きに反応出来ている…!
「あ、あの! 僕、味方です!」
「アンタ、魔神ね? 騙眩かすつもりなの…?」
バックにステップを取り、距離を置く。
間違い無い。
アタシの動きについて来られる女は、魔神である。
刺客を差し向けたと考えて間違い無いだろう。
「は、話を聞いて下さい、デューレさん!」
魔神の女は手にしていた大剣を床に落とした。
床が抜けそうなほどの重みが、軋む音から想像出来る。
「それなら、何も隠し持っていないのを証明して貰うわ。 着ている物を全て脱ぎなさい?」
「え…? 脱ぐんですか…?」
一瞬、驚いた顔を見せた魔神の女。
しかしアタシの要求通り、装備を外して服を脱ぎ始めている。
本当に味方なのだろうか…?
いや、未だ油断は禁物だ。
敵はリタ婆ですら手玉に取った魔神である。
デスペラードを構えたまま、アタシは彼女が裸になってゆくのを見つめていた。




