決意 (side : 黄泉)
不死の王率いる大軍から街を防衛する戦い。
個々の敵の強さ自体は、魔神たる僕が苦戦を強いるものではない。
しかし、圧倒的な数の力。
それは確実に、焦りと疲労を僕に蓄積させている。
最初は疎らだった敵も、数百規模の軍勢が一斉に押し寄せ始めている。
何れかの防衛線が突破され、街に被害が及ぶのも時間の問題になりつつある。
リタお姉様との約束。
彼らを、そしてこの街を守り抜く。
僕はひたすらと大剣を振るい怪物達を屠り続けていた。
しかし、間に合わない!
そんな、絶望が見え始めた時…
僕は見た。
いや、街に居る者達全てが目撃していた。
それは、天にも届かんばかりの超巨大な姿。
風神。
風を司る、究極の存在が出現したのを…!
その後は、全てが一瞬であった。
全ての怪物達が、瞬時に切り刻まれて風の中に消えてゆく。
遠くから迫って来ていた大軍も、目の前で僕と戦っていた怪物達にも、全てに等しく裁きが下った。
リタお姉様の仲間、弓術士が呼び出したのであろう。
僕が倒した敵の死骸までもが、突風に運び攫われ消えてゆく。
そして、夕暮れの中に風神が消えると共に静寂が訪れた。
終わった…?
今までの戦いが、まるで幻の様に思えてしまう。
跡形も無く、何も残っていないのだから…
これが…風神の力…!
その圧倒的なまでの大いなる神の力に、僕は恐怖を感じていた。
もしも不死の王の軍勢に配置されていれば…と思うと戦慄を覚える。
防衛線を張っていた人間達の元に戻る。
皆が僕の無事を喜び、握手を求め、嬉しさのあまりに泣き出す者も居た。
魔王軍には、そんな習慣は無い。
与えられた任務を遂行するのは当たり前である。
誰に感謝される事もなく、ただ己の力を使うだけ。
三巨頭に昇格すれば魔王の寵愛を受けられる。
女の魔神にとって、それだけが全てだった。
顔も名前も知らない魔王のために。
リタお姉様との出会いと交わりは、僕を変えた。
彼らが無事に生き延びてくれて嬉しい。
僕は今、心からそう思っている。
それは、昨日までの僕には無かった感情。
これからも人間達を守ってみたい。
リタお姉様と一緒に…
もっと、人間の事を知りたい。
そして、仲良くなりたい。
新たなる決意。
今日から、僕は人間と共に生きてゆく。
「よーし、黄泉さん! 今日は祝賀会を開くぜ! 街を守り抜いてくれたアンタが主役だ!」
僕が…主役…?
「女神様の歓迎会だ〜!」
め、女神…?
こうして、強引に街の中に連れて行かれたのだった。




