分解
魔王軍…三巨頭!?
私の脳裏を過ぎる、忌まわしい記憶。
ローランが命を賭して倒した相手と同じ…!
「綺麗なお顔が引きつってるぜ、戦乙女さんよぉ? やっぱ魔神を前にしちゃ、ビビっちまうってか?」
私の動揺を感じてか、慟哭と名乗る魔神は嗤いながら挑発する。
デューレとリタが居ないのに、まさかの魔神が襲来。
かと言って、自分の不幸を呪っている暇は無い。
私一人でコイツを倒すしかないのだから!
倒す…倒せるのか?
近付く事すら出来ない相手を?
近寄ったが最後、消されてしまう。
消される…消える…?
神隠しでもあるまいし、何処かに転移した…?
いったい何処に行ってしまったのだろう?
「消された人達は何処に行ったのッ! 教えなさいッ!」
慟哭との距離を保ちながら、私はそう質問をぶつけた。
「何処に行ったって?…フッ!ハハハッ!」
私の質問に笑い出す慟哭。
「なぁ、原子って知ってるか? 全ての物質の中でも、一番小さい存在らしいんだがよ」
何を言っているのだろう…?
元の世界に居た頃、学校の物理で原子とか分子とか習ったアレの事…なのだろうか?
「俺の半径2メートルに入ったが最後、全ての物質は原子レベルにまで分解されちまうのさ。 何処に行ったかって答えるなら、その辺の塵の中にでも居るんじゃねぇか?」
嗤いながら、驚愕の事実を述べた慟哭。
最強最悪の敵に対峙しつつ、私は神剣ジュワユーズを引き抜いた。
私が持つ水の力、果たして通用するのか?
と、その時だった。
入り口から2人が颯爽と広間へと入って来た。
ローブを纏った高齢の男性と若い女の子。
それぞれ、長い杖を携えている。
「我ら、宮廷魔術師にお任せ下さいッ!行くぞッ!」
「はいッ!お師匠様ッ!」
王城お抱えの宮廷魔術師だ。
年配の師匠と若き弟子の様である。
2人はそう言うや、呪文の詠唱を始めた。
そして、慟哭に向けて渾身の魔法が発動する。
「火球ッ!」
「電撃ッ!」
同時に発射された魔法攻撃!
迸る火炎の球! 唸りを上げる稲妻!
だが、それらは到達する事なく…掻き消された。
「な、何じゃと!?」
「お師匠様…!?」
茫然とする2人に歩み寄って行く慟哭。
「駄目ッ!逃げてッ!」
私の叫びも、恐怖に駆られ立ち尽くす2人には届かない。
「や、止めろッ…」
「い、嫌!助けて…」
2人の魔術師も消えた。
いや、原子に分解された…
「魔法も同じ事だ。 魔力の源である魔素レベルまで分解するのさ! 勿論、属性の力だって同じ事だぜ?」
私に振り返りながら、そう言い放つ慟哭。
属性の力も分解されてしまう…!?
いったいどうすれば…?
出鱈目な強さの魔神を相手に、私は…!




