失望
ギルドが持つ情報網は広く、第1王子レイワイゼンが居る場所は直ぐに判明した。
ギルドから15分程度歩いた場所が、彼が居る研究室。
元の世界で言えば、内燃機関の様なモノを発明しようとしているらしい。
詳しくは判らないけど、凄いと思う。
騎士団長サーテインみたく、クールな研究者さんなのかな…?
ここだ。
ちょっとした町工場みたいな建物。
入り口の扉をノックする。
「誰?空いてるよー」
中から聞こえる、ぶっきらぼうな声。
「失礼…します」
少し緊張しつつ、私はドアを開けると中にお邪魔した。
中には色々な鉄の棒、板や木材が至る所に転がっている。
沢山の資材の奥に、誰かが居るのが見えた。
こちらには背を向けたまま、デッサン用紙の様な大きな紙に図面みたいなものを描いている。
中に入って来た私には目もくれず、黙々と作業を続けている作業着の男性。
「あ、あの…?」
「ん、誰?…何か用?」
私の声に気付くと、彼が面倒くさそうに振り向いた。
(…………………!!!)
彼の顔を見た私は絶句した。
(…………ローラン!?)
まさしく、それはローランそのものだった。
彼の顔を見た瞬間、全身は硬直した。
勝手に涙も浮かび始めてしまう。
「あー、アンタが戦乙女になった人ね。王国からこっちに来てるって、朝から噂になってたな…。で、何?」
あ、そうか…。
この人が…ローランのお兄さん…!
髪型こそ違えど、一卵性の双子かと思うくらいに瓜二つであったのだ。
王国の第1王子だとは思えない、砕けたラフな口調。
頭を掻きながら、興味なさそうに私を見る目。
「あ、わ…私、セーラと申します。初めまして、レイワイゼン殿下…」
「別にいいよ、そんな堅っ苦しいのは。レイで良いぜ?」
別の人だとは解っていても、私の心臓はバクバクしていた。
「私…ロヘラングリン殿下の許嫁で、亡き殿下と旅をしてまして…それで…」
緊張して上手く話す事が出来ない。
そんな私に近付いた彼は、こう言い放った。
「何だよ?同じ顔してる俺に抱かれたいのか?」
私の身体を覆っていたマントをいきなり捲り、肌が露わな戦乙女の恰好を舐める様に眺めながら。
『パシンッッ!!!』
彼に平手打ちしていた。
「何故…!どうして!ローランと同じ顔で…そんな事を言うのッ!!」
叫んでいた。
両頬に涙が伝っているのが判った。
それ以上は何も言えず、私は踵を返して研究室を出たのだった。
悔しさなのか、怒りなのか…私の涙は止まらなかった。
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「これで良かったんだよな…ローラン?」
研究室に残るレイは、そう呟いていた。




