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水の戦乙女(アクア・ヴァルキリー)   作者: らいとふっと
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別離


『ドサッ!』


私のすぐ近くにローランの右腕が落下した。


握られていた神剣だけがカラカラと音を立てながら私の足元まで滑ってきた。


魔法陣が光りを放つ足元から躊躇せずに拾い上げる。



これをローランに届けなくちゃいけない!

ローランはまだ負けてない…



「セーラ…その剣も…一緒に持って行って…下さい…」


ローランが必死に声を上げてくれている。


だが、その姿は既に満身創痍だった。

額と口からは血が流れ、右腕は肘から下が失われていた。


端正な顔が苦痛に歪んでいる…


こんなローランは見たくない…

早く看護しないと、早く止血しないと…!



「英雄チャン、ゴチャゴチャと煩いよぉ〜〜!」


紅蓮の冷酷な台詞と共に…




『ザクッッ!!』


ローランの背中に鎌が突き刺さる。



「グハッ…」


大量の血を吐き出してローランが倒れる。




「嫌……嘘だ……こんなの……こんな結末……!」


無意識に私は声を出していた。



ローランが、負けた…

ローランが、死んじゃう…



「英雄チャンもよく頑張ったねぇ〜! さて次は、巫女チャンの番だねぇ〜?」


紅蓮は私の方を見ると、こちらへと歩み始めた。




もう、恐怖は無かった。


ローランが死んじゃったこの世界。

私だけ生きていても仕方がない。

私も一緒に、ローランと消えてしまおう。


魔法陣から出ようとした、その瞬間だった。



「だ、駄目ですよ…セーラ!」


大量の血を流しうつ伏せの状態のまま、ローランが消えそうな声を出している。


「ローラン……もう無理しないで……私も貴方と一緒に…」


涙が溢れて止まらない。

大切な人の命の灯火が消えかかっている。

大好きなローランの命が消えそうになっている。



「ぐ…紅蓮ッ…セーラには手を出させたりはしない…!」


息も絶え絶えにローランは紅蓮にそう言い放つ。



「はぃ〜?英雄チャン、何言ってるのぉ〜?」


紅蓮はローランに目もくれずに私に近寄ろうとしたが…





「がッッッ!? て、テメエッッ…!? 何をしやがったッ!?」


突如、紅蓮が苦しみ出している。

その顔が苦悶に歪み始めている。



「パ、聖戦士(パラディン)の最終…奥義…、最終聖戦(ファイナルジハード)…既に発動…している…」



紅蓮は身悶えながらローランに歩み返す。


「テメェェェーーーッ! 究極の自己犠牲聖呪だとッ……いつの間にッッ!?」



ローランに向かい、紅蓮が繰り出す幾多もの火球が飛ぶ。

だが、苦痛で正確にコントロール出来ないのかローランには命中しない。



薄暗かった広間は爆炎で照らされてゆく。


はっきりと私の目に映るのは、爆炎の中で倒れ伏せた大切な人の姿。



紅蓮は狂った様に苦しみ暴れている。



私は震えながら涙を流す事だけしか出来ない。



(ローラン…なんで…こんな…こんな…)



燃え盛る炎の中、最期の力を振り絞ってローランが私の方を向いた。



「セーラ……幸せに……!」


その言葉を聞いた刹那、転移魔法が発動した。


瞬間、広間は爆炎に包まれ凄まじい爆発を起こすのが見えた。





そして、私の大切な人はもういない。



世界観うんちく



最終聖戦(ファイナルジハード)


神託を受けた聖戦士(パラディン)のみが使う事が出来ると言われている究極の禁呪。

詠唱した聖戦士(パラディン)の命を触媒とし、敵の体内から巻き起こる聖爆(ホーリーバースト)を生み出す。

その爆発力は半径1キロ程を完全に跡形無く破壊し、巨大なクレーターが残る凄まじい威力である。

過去に起こった魔王軍との戦いに於いても、聖戦士(パラディン)の犠牲によって使用された事が幾度も有ると伝えられている。

そして、詠唱者は使用後には必ず力尽きて死亡する。

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