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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第五章:王都が襲われたようです
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緋級魔物のお話。

シルフ……西洋伝説に登場する精霊であり四大精霊の一つ。

 「いやあの……何がどうなったらそうなるんですか」


 「……なんとなく?」


 「なんとなくで上級魔物が木っ端微塵になってたまりますかっ!? あれ絶対壊級魔法以上ですよね!?」


 「そうなんですか?」


 「そうなんですかじゃなくて!」


 そんなに責められても実際のところなんとなくやったら出来ただけなのでそれ以上の答えを響は出せないでいた、そのため終着点のない押し問答が繰り返され結果的にラフィーリアが割り切って場は収まった。


 仲間の冒険者たちは二人のやり取りに混ざることなくただただ唖然としていた、やがてハッと我に返ったのか冒険者たちはいそいそとスレイプニルの残骸を麻袋へと閉まってきつく縛った。


 討伐目標のスレイプニル種は一体以上なのでもうこれ以上狩る必要はないのだが、折角なので響がシルフと戦うまで手伝ってもらうことにした。

 それから小一時間ほど経った時には計十数体のスレイプニル種を狩り終えていた、後半は流石に響に頼りっ放しはダメだろうと最低限のバックアップを響にお願いしてラフィーリア達は自分たちで戦っていた。ラフィーリア達の戦い方は魔法を中心としたヒットアンドアウェイ戦法を用いた戦い方をしており、ラフィーリア本人は天才を自称するだけあってそれなりに強かった。


 「結構狩りましたね、この辺りで私たちは打ち止めです。ヒビキさんには頼りっぱなしでしたね」


 「いえいえ、力になれたのなら良かったです」


 「そう言えばそっちのお目当ては見かけませんでしたね」


 「まぁこっちはもう少し散策してみます」


 「そうですか、頑張ってください」


 「ありがとうございます。では」


 そう言って響はラフィーリア達と別れシルフの探索に行くため再び森の中へと入っていった。

 しばらく歩いているとまたどこからともなく椿が現れ響の隣を高下駄を鳴らしながら歩いていた、その姿はお兄ちゃんに付いていく妹のような感じだった。


 「いやはやあんな簡単にあの魔法を使うとは、妾も少し驚いたぞ?」


 「あの黒い塊のことか?」


 「そうじゃ。あれは壊級の空間魔法『ブラックホール』と言って対象を空間ごと消し飛ばす魔法じゃ」


 「ブラックホール……ね」


 あの見た目にその名前なら随分と安直な名前だな、と響は口に出さずに思う。

 にしてもラフィーリアの言っていたとおり壊級魔法だったとは、どうやら俺の使える魔法のインフレ化が激しくなってきたみたいだ。響はそう自分の力を実感する。




 しばらく森を二人で散策していると、辺りがざわつき、空気が変わった。


 その変化は手に取るように分かり、響は強力な何かが来るのだろうと直感で悟った。

 だが何の変化も見られない。それでも確実に雰囲気は仰々しいものに変わっているはずである。


 「ヒビキ。一つだけ言っておこう」


 「なんだ」


 「すでにシルフはいるぞ?」


 その椿の言葉に響はすぐさま辺りを見渡すが相変わらず響の目には森の木々や椿くらいしか見えていない、でも確かに言われてみれば気配を感じる。


 


 ガサ……




 響は音のした方へと勢いよく振り返る、だがそこには何もいない。


 しかしよく見てみると僅かながら生い茂っている葉が何かに擦れるように揺れている。

 


 まさか……



 響はある仮説を立てそこに初級魔法の「マジックバレット」を打ち込む。

 するとマジックバレットは何かに当たり、当たったところは波紋を広げた。

 これが意味すること、それは即ち。



 視認できない何かがいるということ、そして先ほどの椿の「シルフはもういる」という発言を踏まえて考えれば答えは一つ。





 マジックバレットが当たった相手はシルフだったということである。





 やがて響の仮説を証明するかのようにその虚空は次第に形を成していき、ついにその正体を現した。


 それは大きなフレアのドレスを身に纏った貴婦人のような姿の魔物だった、二~三mはあるであろうその巨躯からには似つかわしくない優雅な動きで森を我が物顔で闊歩している。


 「これがシルフか……」


 「そうじゃ」


 椿が響の言葉を肯定する。


 そう、今目の前を遮る巨躯こそが今回の討伐目標である緋級魔物『シルフ』である。



 シルフは響たちの方を見ると先ほど自分に攻撃した者たちだと認識したのか甲高い咆哮を上げる。


 『クゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』


 その咆哮で辺りの木々はミシミシと音を立てる、風圧が響と椿を襲い思わず顔を覆って防ぐ。砂礫がパチパチと音を立てて体に当たる感覚を感じながら響は以前フランがマーナガルム種との戦闘で使っていた黒い鎧を身に纏う。

 王城戦で使った純白の鎧でも良かったのだが魔力量が増えているとはいえ長期戦になった場合に備えてある程度は魔力を温存しておきたいのでここでは控える。だがそう考えている時に何故だかあの純白の鎧は今は使えない、そんな気がしていた。


 響は念には念を入れアロンダイトを複製して一振り作り出した。


 「さて、お手並み拝見といこうかの」


 そう言って椿は消え去り、シルフと響の一騎打ちの状態となった。


 シルフは背後に八つの光の玉のようなものを背に並べて宙に浮かぶ、足がないのか隠れているのかは分からないが元々シルフはドレス部分が地面から十数cm浮いているためさらに威圧感が増した。


 シルフの背の光玉の一つが光り、火球が放たれた。


 響はその魔法に見覚えがあったため一種の賭けでその場を動くことも防御魔法を使うこともしなかった。


 火球は響に当たることなく見えない膜のようなものに遮られて霧散した。


 「やっぱりか……」


 今の火球は何もしなくても防げたことからアロンダイトの能力によるものだと確定された。


 つまるところ今の火球はアロンダイトで防げるレベルの魔法、上級魔法ということだ。


 その後も数発シルフは火球を放つが全てアロンダイトの能力で防がれる。ここまで魔法しか使わず肉弾戦などの物理攻撃は一切していない。


 「メイン攻撃は魔法ってことか、だったら――――」


 響はアロンダイトをもう一本複製して構える。


 「――――どっちの魔力が多いか、勝負だ」


 『クゥオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアア!!』





 今、響とシルフのタイマン勝負が始まった。

次回タイマン勝負

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