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異世界二重奏は高らかに  作者: 羽良糸ユウリ
第五章:王都が襲われたようです
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始動のお話。

シルフとアリア

 シルフは次々と魔法を放つがそれは全てアロンダイトの能力によって響に届くことはない、それが分かったのかシルフは違う光玉を光らせ別の魔法を放つ。


 響は直感でそれが上級魔法以下ではないことを悟り防御魔法を展開する。案の定アロンダイトの能力は発動せず防御魔法に当たりヒビを入れた。


 「少なくとも緋級魔法以上ってか。厄介だな」


 そう呟きつつ響は常に防御魔法を張りながらシルフへとアロンダイトを携えて突撃していき魔法を切り伏せながら懐に潜りこみ下から一閃薙ぐ。



 だがアロンダイトはシルフの体をすり抜けて空気を切り裂く音だけが響の耳を通り抜けた、シルフはその状況に少しだけ困惑する響の隙を見逃さず魔法を連続で浴びせる。


 響は防御魔法を張っていたものの連続攻撃と想定外の事象が起こったことの焦りで防御魔法を張り続けられずに突破され魔法に直撃してしまった。


 「ぐぁっ……」


 その衝撃で受け身も取れずにゴロゴロと転がり勢いよく木にぶつかった。


 久しぶりに味わう魔法の直撃に吐血する響。喉から込み上げる血液の味が頭を埋め尽くす。


 その間にもシルフは攻撃の手を緩めようとはしない、響は今の状態ではまともに回避できないだろうと考えて少々魔力量が勿体ないが転移魔法で緊急回避をする。


 シルフの数m先に転移した響は回復魔法で外傷を治療し自分の体を癒し少しでも動けるようにしたのだがまだ若干体が重い。


 「物理攻撃は聞かないってことか、なら魔法で攻めるしかないな」


 そう響が呟くと、その考えを嘲笑うかのようにシルフの姿が消えた。


 先ほどと同様に森に静寂が訪れる。響はシルフがまた視認できなくなった状態になったのだろうと推測して辺りをよく見ると風も吹いていないはずなのに地面の小石がコロコロと動いていた。そしてその軌道は響を探しているかのように辺りをウロウロと不規則だった。


 響は広い範囲を攻撃できる緋級魔法を発動させる、響の手から放たれた魔法は地面に着弾するなり爆音を鳴らして爆発した。


 『クァァァッァァァァァァァッッ!!!』


 「いよっし!」


 攻めるならここしかない。


 響はシルフが視認できる状態になりさらによろめいて怯んでいる隙を逃さまいとここぞとばかりに魔法を打ち込む、「聖釘《エレナ》」を魔法対策で打ち込んだが魔力量も考えて一本しか打てなかった。流石にまだ壊級魔法の連発はキツい。




 その後シルフの反撃を許す前に魔法を畳みかけ連撃を行った結果、シルフを倒すことに成功した。

 だがシルフも流石は緋級魔物といったところで魔法を抑制されているにもかかわらずとてつもない耐久性で初級魔法をどうにかして絞り出すように放っていた。


 再び森には静寂が訪れ、響はシルフの死体を眺めた。するとシルフの背中に一つだけ光る光玉があった。最初はもしやまだ生きているのかと疑ったがどうやらそういう訳でもないらしい、意を決してその光玉に触れてみるとどうやら取り外せそうなので思い切って取り出してみた。


 「ほぉ? 中々良いものを手に入れたではないか。結構貴重なものじゃぞ」


 「この玉がか?」


 響の後ろにいつの間にか立っていた椿が物珍しそうにその光玉の周りをいろんな角度から見ている、それほど珍しいものなのかと響はこれがどういったものなのか椿に聞いた。



 聞くところによると魔物からは超低確率で魔力の蓄積ともいえる光玉が手に入るらしいのだが一体どういった経緯でそれが魔物から生成されるのかは分かっていないらしい。


 ひとまずその光玉と綺麗な残骸を空間魔法で作った空間に一時的に保存しておき、転移魔法で妖王大陸の森から人王大陸の冒険者ギルドまで転移した。


 転移すると急に疲れがどっとやって来て思わずギルドの壁にもたれかかり座り込んでしまった。


 「魔力の使い過ぎじゃな。魔力量が増えているとはいえ壊級魔法を一日で二回も使ってさらには魔法の連発じゃ、その様子だと今までそういう状態になったこともないのじゃろう」


 「あー……気持ちわりぃ……」


 「少し休んでから報告にでも行けばいい、腐りはせん」


 「そうするか……」


 そよ風がグロッキーな響きの体を撫でる、外の涼しい風が段々と気持ち悪さを解消させてくれる。体力も戻ってきてそろそろ任務の報告でも済まそうかと思った矢先、響に声をかける者がいた。


 「おや、奇遇だね」


 「アリア先輩」


 「おぉアリアか、久しいのぅ」


 「椿か、久しぶり」


 座り込んでいる響の元へ制服姿のアリアが現れた、アリアは制服のボタンを一つはずしネクタイを緩めて袖を折ってまくっていた。


 「任務帰りかい?」


 「ええ、ちょっと魔力を使い過ぎたみたいで……」


 「ははっ! 珍しいね、君がそうなるなんて。まぁ僕もなったことあるからね、誰もが通る道さ」


 「アリア先輩はこれから任務ですか?」


 「ううん。僕も任務終わりだよ」


 そんなやり取りを交えつつアリアと響と椿は三人で冒険者ギルドでそれぞれの任務の報告を済ませた。響は少し休憩してから帰ろうと思いテーブルの一席に腰かける。

 アリアも報告が終わったようで、響の前の席に腰を下ろす。


 二人とも今日はもう任務に行くつもりではないので軽く話して解散という流れになった。小一時間ほど話したところでギルドを出て別れようとしたところでアリアが響を呼び止めた。


 「あ、そうだヒビキ君。明日の放課後って何か予定あるかい?」


 「明日ですか? ……いえ特にないですけど」


 「ん、ならいい。ちょっと開けておいてくれ、場所は後日伝えるよ」


 「分かりました」


 「じゃあまた明日な」


 そう言ってアリアはひらひらと手を振りながら人混みの中へと消えていった。










 そして翌日、全ての授業が終わった放課後。


 アリアには「屋上に来い」というヤンキーじみたことを言われ、言われるがままに言ってみるとアリアが屋上の飛び出し禁止用の手すりにもたれかかって空を眺めている生徒がいた。


 「よぅ。来たね」


 アリアの長い髪が風に吹かれ左に流れる。

 何故だかその時、響にはアリアの雰囲気がいつもと違う気がした。

おや…?アリアの様子が…?

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