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202 酒場にて

 久々にひっそり更新です

 アムリタの町は活気に溢れていた。広い通りには露店が並び、商店には人が集まり、そして町外れには建築中の家が。

「やっとここまで復興したんじゃよ」

 ユージと並んで歩くローグがぽつりと言った。

「この一帯は王弟派の拠点じゃったからな、当時は徹底的に破壊され、一面焼け野原じゃった」

 そう言ったローグの目に一瞬灯ったのは悲しみか、はたまた怒りか。

「王孫でも王弟でも、儂ら庶民には関わりない。勝手にやってくれと皆思ったよ。なぜ儂らを巻き込むのか、とな」

 広い通りから側道に入り、更に路地へ入っていく。

「儂も息子を兵に取られ、その息子も戦死したのじゃよ」

 路地の突き当たりに酒場『ジャロ・ジャロ』はあった。

「入るがいい」

 鍵は掛かっていなかったのか、ローグは酒場の扉を開け、ユージをいざなった。

「さて、何か飲むかね」

 カウンターの中に入り、ユージに尋ねるローグ。ユージは、

「それじゃあ、この地方の特産、『ジャロ』を」

 『ジャロ』は特産のシャイテンの実を搾り、発酵させた酒だ。ワインの強い物と言えばいいだろうか。

「あいよ」

 ローグは中くらいのグラスに注いだジャロをユージの前に置いた。それを一息に飲み干すユージ。

「うまいな」

「ほう、いい飲みっぷりだ」

 2杯目を注ぎながらローグは、

「……で? 儂に何を聞きたい?」

「統一魔導士団」

「……やはりな」

 ユージは2杯目のジャロを半分ほど呑んでから、

「どうすれば教えてもらえる?」

 ローグはにやっ、と笑い、

「そうじゃな。情報料の基本は金じゃが、統一魔導士団となると金では済まんな」

「だろうな。で?」

「ふむ、それでは、君が目的を達したら、儂の言うことを1つ、聞いてくれるか?」

「ん? そんなことでいいのか?」

「ああ、いいとも。何、別に違法行為を強要するつもりはない。安心するがいい」

「わかった。約束しよう」

「契約成立じゃな。それでは、統一魔導士団じゃったな」

「ああ。クランケンドルフ=アウフシュテッツェンという奴が団長だというのは知っているが、あとはさっぱりだ」

「ほほ、それを知っているとは驚きじゃ。それでは儂の知っている限りを話そう」

「頼む」


「統一魔導士団の目的はアルデンシア大陸の統一、といっておるがな、それは表向き、本当の目的は復讐、じゃ」

「復讐?」

「そうじゃ。クランケンドルフ=アウフシュテッツェンの正体はわからんが、副団長はゲーリック=ザルツボーグ。聞いたことはないか?」

「ザルツボーグといえば、王弟派の将軍にそんな家名の奴がいたな。戦争終了後処刑された筈だが」

「そのとおり。ゲーリックはゲルトベルト=ザルツボーグ将軍の孫なんじゃよ」

「何だって……」

「他には、魔導士団第2席にサミュエル=デトガイアという魔導士がおるな」

「まさか、そいつは……」

「王弟派筆頭魔導士、アリバリン=デトガイアの息子さ」

「だが、あいつの一家は連座で処刑されたはずじゃあ……」

「身代わりを立て、逃れたようじゃな。さて、この面子を見てもわかるじゃろう。統一魔導士団、その目的は復讐。さしあたっての目標は王家転覆じゃよ」

「だが、そう簡単にできるとは思えないんだが」

「ふん、次は奴らの秘密を話そう。魔導士団参謀にヘルメルという奴がおる、そやつは『印呪』の研究をずっと続けておった」

「そいつは聞いたことがないな」

「じゃろうな。民間に埋もれていた奴じゃから。じゃが、腕はかなりのものじゃ。独学で『印呪』の原理に辿り着いたほどじゃ。今はサミュエルを初めとする魔導士達の協力を得、危険な実験をくりかえしておるな」

「知っているのか?」

「知っとるよ。『印呪』の実験で狂戦士(バーサーカー)を生み出し続けている事もな」

「どうしてそこまでわかるんだ」

「それは企業秘密じゃよ。それで、その統一魔導士団の下部組織じゃが、この町にある」

「何だって!?」

「馬車で一緒だったジェシカという小娘がおったろう。彼女が行くと言っていた魔導士優遇の家というのがそれじゃよ」

「……」

「一般人から魔導士を募り、優秀な者は別の所で再教育し、更に優秀な者を選りすぐって幹部にする。落ち零れは実験体行きじゃ」

「なんでそれを彼女に教えてやらなかった?」

「教えても意味がないからのう」

「どういう意味だ?」

「彼女は統一魔導士団を探りに来た密偵だからじゃよ。行くなと言っても行くじゃろうさ」

「本気であんたが何者なのか知りたくなったよ。だがまあいい、その下部組織、だったか? その場所を教えてくれ」

「ここと真逆の町外れにある古い館じゃ。元々は王弟派だった領主の館だが、今は表向き、『ジェイコブ』という商人の物ということになっておる」

「わかった。さすがに本部の場所はわからないよな?」

「すまんな、儂とてそこまではわからん。だが、代わりというわけではないが、こんな物をやろう」

「これは……ああ、ありがたくもらっておこう」


 その日の夜、ユージは町外れにある古い館を目指していた。

 そのユージの腰ベルトには、1本の鋼の棒が刺さっている。ローグから貰った物だ。

 50センチ足らずの長さで、太さ3センチほど、端近くには直角に少し細い棒が飛び出しており、握りとなっていた。

 外観的にはトンファと呼ばれる武器である。普通は左右一対で使われるのだが、ユージが持っているのは1本のみ。だがユージはそれで十分と思っていた。

「さて、行くとするか」

 館を見上げるユージの目の前には高さ3メートルほどの塀がそびえていた。

 名前が多くて済みません、過去の人の名前は読み飛ばして下さって結構です。

 お読みいただきありがとうございます。

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