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104 無差別攻撃

「今のは…雷系の魔法か!?」

 油断無く辺りを見回すユージ。フィオレは何があったかまだよくわかっていないようだが、侍女のドナはフィオレを守るように立ち、身体強化魔法を己に掛けた。

「な…何なの、いったい!?」

 ようやくどこからか魔法が打ち込まれた気が付いたフィオレにユージは、

「そこを動くな」

 そう声を掛ける。その時、2発目の魔法が炸裂した。

 炸裂したのは海の上。今度は巨大な火球、海の水が熱せられて水蒸気になる。

 それを目の当たりにした海水浴客は大騒ぎ。

 火球に巻き込まれた者はいなかったようだが、熱せられた水で火傷した者は何人かいるようだ。

「何が目的だ!?」

 今一つ、犯人の目的が見えない。そして3発目の魔法が浜に突き刺さる。今度は炎の槍であった。

「無差別に魔法を乱発しているのか?」

 流石に3発、魔法が放たれればその発射地点すなわち魔導士がどこにいるか見当が付いた。いくつか建っているコテージとコテージの間である。

 ユージが駆け出そうとすると、

「ユージ様、ここは私が」

 そう声を残してドナが風のように掛けていく。そのドナ目掛けて炎の矢が幾つも放たれるが、只の一発も当たることなく、ドナは犯人の元へ。

 そのドナ目掛けて突き出されたナイフを軽くかわし、ドナは犯人の男を放り投げたのである。

「すげえ」

 素直に感心するユージにフィオレは、

「すごいでしょ、ドナはあたしの侍女兼護衛なのよ」

 強化した腕力で放り投げ荒れた男は数メートルも飛ばされるが、落下したのが浜であるため、さほどのダメージは受けなかったようだ。

「げひゃひゃひゃひゃひゃ!」

 立ち上がった男は突如甲高い声をあげたかと思うと、ドナ目掛けて駆け出した。ナイフは放していない。

「何!? 速い!」

 明らかに身体強化をしている速度で走る男。が、ドナも負けてはいない。

 先ほどとは明らかに違う動きでナイフを振るう男。対するドナは水着、動きやすいものの防御には向いていなかった。

「ひゃひゃひゃひゃひゃ!」

「くっ」

 ドナの右肩がわずかに切られる。

「危ない! 加勢するぞ!」

 ユージが飛び出そうとした瞬間、魔法が飛んできた。

「ふんっ!」

 左手一閃、それを掻き消すユージ。

「また雷系…?」

 飛んできた方向を見ると、別の男がコテージの陰に隠れるのが見えた。

「二人いたのか!」

 ドナには悪いが何とか防いでいるのを見、ユージは新たな敵へと向かった。

 先ほどのドナよりも更に速い速度で駆けるユージ。そして大きくジャンプ。コテージの屋根に飛び乗った。

 上からならコテージの裏まで丸見えである。コテージの裏に回った男を見つけ、もう一度ジャンプ。

「おっと、逃がさねえぜ」

 逃げにかかった男の真正面に着地、同時に鳩尾へと右ストレートを喰らわした。

「うぐ…」

 くずおれる男、だがその膝は完全に折れることなく、途中で止まる。

「ぐ…」

「?」

「ぐががががががががああああ!」

 一度は倒れるかと思われた男が、咆吼を上げたかと思うと、ユージに殴りかかってきた。

「何なんだよお前は」

 余裕を持ってそれを捌くユージ、だが男の動きは明らかに常人のものではない。

「まさかとは思うが…」

 思い当たることのあったユージは、飛び下がって一度男と距離を取り、

「俺の推測通りなら死なねえだろ」

 右手に力を溜める。

「がががががあああああ!」

 真っ直ぐ跳びかかって来た男の顔面目掛け、その拳を振り抜いた。

「ぎゃあ!」

 男は回転しながら吹っ飛び、コテージの壁にぶつかって止まる。ぴくりとも動かない所を見ると気絶したようだ。

 ユージはドナが心配だったのでその男は一旦放置して浜辺へ。ちょうど決着が付くところであった。

「麻痺掌!」

「ぎゃひ!?」

 掌から神経を麻痺させる雷撃を放つ魔法をドナが放った。それを喰らった男は流石に気絶する。が、ドナも浅いとはいえ、何箇所か切られていた。

「大丈夫か?」

「はい、このくらい、すぐに治ります」

 そう言ってドナは身体に魔力を巡らせる。それにより細胞が活性化され、傷の治りが早まるのだ。みるみる血が止まり、傷が塞がった。

「ふう」

 流石につかれたか、深く息を吐いたドナに、

「ごくろうさま、ドナ」

 やってきたフィオレがねぎらいの言葉を掛けた。

「いったい何があった!?」

 そこへ、ようやく自警団が到着した。彼等に説明したのはドナ。ユージはその間に先ほど気絶させた男をコテージの影から引き摺ってくる。

「こいつもか、これはお前が捕まえたのか?」

 そう聞かれたユージは肯き、

「ああそうだ。俺はどうでもいいがバルーダ伯爵にも報告しておいた方がいいぞ。こいつは伯爵の姪でしかもギンガム侯の孫だかんな」

 フィオレの頭に手を置きながら言った。こいつよばわりされたフィオレは軽くユージを睨むが、自警団の方は大慌て。

「これは失礼しました、お怪我はありませんでしたか?」

 などと急に下手に出始めた。それを手を振って問題ない、と意思表示したフィオレは、

「ドナ、ユージ、伯父様のとこへ帰りましょ。なんだか遊ぶ気分じゃなくなっちゃったわ」

「はい、お嬢様」

 それでドナは借りたコテージへ服を取りに行く。

「このままでいいわ。伯父様のところでシャワー浴びて着替えればいいし」

 浜にいるより急いで帰った方が安全だろうと、ユージも何も言わずにそれに従ったのである。

 ドナはかなりの腕利きでした。身体強化系が得意な魔導士は同時に、他者を麻痺させたり、傷を治癒したりするといったことも出来る事が多いようです。

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