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国の名前はふたりから  作者: 小林晴幸
帰ってきた危険人物達
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34.帰ってきた仲間達。(そのぐったりしたのは何ですか?)




 龍に乗ってド派手に「ただいま」をかましてくれた、羽根の人以下数十名。

 彼等が帰ってきた光景に魂を奪われ、一瞬だけ意識を手放してしまいました。

 ですが今はもう、大丈夫。

 最早何が帰ってこようと、どんな衝撃映像を目にすることになろうとも。

 所詮彼等を私の常識に当てはめてはいけなかったのです。

 ええ、覚悟はきまりました。バッチリです。

 さあ、どんと来い。問題多き大人達。


 …と、思っていたら。

 またもや予想外すぎる帰還を目の当たりにすることになる。



「な、なに、それー!!?」


 心の声の代弁、有難う。

 仰天して叫ぶアイツの驚き振りを傍観することで、心が落ち着いていく。

「おかえりなさい」

 何とか平静を装って声を絞り出すが、私も内心では「なにそれ」を連発している。

 帰ってきたのは、地底へ赴いていた方々。

 剣殺鬼さん、ちっちゃい人、貴方方のことはまだしも信じていたのに…

 何となく、お兄さんが混じった時点で、あまり期待もしていなかったが。

 それでも、なんだか裏切られた様な気がする。

 彼等だけは、私の常識を裏切らないと信じていたのに。

 否、それとも、いつの間にかこっちでも把握しない内に混ざっていた妖精が問題なのか?

 どうやら向こうで合流したらしい妖精の少年が、嬉々としてこちらに手を振る。

 謎の植物を、手に握ったまま。


 見慣れぬ銀の植物は、自然界のモノだと言うには、あまりに異質すぎた。

 先ず、己の意志を持つかの様にうにょんうにょんと蠢いている。

 そして激しすぎる力が窺える強さで、何やら青年と思しき誰かをぐるぐる巻にしている。

 俗に簀巻きと呼ばれる、謎の物体がそこにいた。

 わっさわっさと茂った植物の簀巻き。

 それを遠慮容赦なく引きずる妖精の少年は…あまりにも、輝いた笑顔をしていた。

 それが私達の新しい仲間…

 『人間』の中で苦労して育ち、貴重な情報の数々を有していた青年。

 影さんとの、第一種接近遭遇だった。


 だがその姿と扱いは、この時点の私達にはあまりにも謎すぎた。

 特に、謎の物体よろしく蠢く、妖しすぎる植物が。

 (後で妖精の少年の眷属だと聞いて、何故か納得してしまった。)



 コイツのことを紹介するぜ、というお兄さんの言葉が、何故か「溶解するぜ」と聞こえた。

 溶かすの!? と思いつつ、戦々恐々としながら私達はついていく。

 ぐったりした青年は、何故か引きずられて運ばれつつも抵抗しない。

 気を失ったのかと思って顔を覗き込むと、ばっちり目が合った。

「あ。起きてた」 

 私の隣で、同じように覗き込んでいたアイツが言う。

 私達の前でずるずる引きずられていく、簀巻きの青年。

 その瞳はなんだか、とても慣れた様な…諦めきった目をしていた。

「あの、彼が何者かは知りませんが、この待遇はあんまりでは…?」

「大丈夫だ。本当に酷いことになれば、メイラが黙っていない。メイラは彼の保護者だから」

「保護者? 彼は敢えて保護者を必要とする歳には見えませんが…」

「保護者というか、身元引受人というか。拾ったのはラティなのだが、面倒を一手に担うのはメイラの方だ。メイラは彼に庇護欲を感じているらしい。参謀殿も、彼の扱いにはメイラの顔色を気にした方が良い。目に余ると感じた時には、俺やアシュルーにも噛みついてくるぞ」

「あの、メイラさんが…」

「ああ」

 剣殺鬼さんの言葉の端々に滲むのは、苦笑。

 そしてちっちゃい人を見ると、呆れた様な顔をしつつも、注意深くお兄さんを見ている。

 その顔と、青年の体の力を抜いて預けきった様子に、納得してしまう。

 --ああ、この扱いは、いつものことなのかと。

 なんだかとても、謎の簀巻きは酷い扱いになれていそうだ。

 特に、お兄さんからの粗雑な扱いに。


 青年が何者なのか、私達は未だ聞いていない。

 だが、この『砦』に到達できた時点で、彼は『人間』ではない。

 …少なくとも、純血の『人間』では。

 彼の顔立ちは妖精や竜人には似てもにつかないが、魔族の血を感じさせる。

 つまりは、彼は『仲間』…魔族だ。

 少なくとも、彼を連れてきたお兄さん達の認識上では。

 本人がどう思っているかは、まだ聞いてみないことには分からないけれど。

 青年の容姿は魔族とも『人間』とも言い難く、その中間を連想させる。

 苦労してきたのか、その物腰はあまりにも鋭く洗練されていつつ…

 何故か、苦労人オーラが漂う。


 彼が何者かはこれから知ることになるだろうが…

 その様子に、アイツが「未来に幸あれ」と呟いた。

 私も、全くの同感だった。



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